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2度目の誘拐

いつも読んでくれてありがとうございます。

 猫の女獣人は獣人特性の聴覚に加えて、シーフとして修練を積んだ聞き耳を立てながら、兎の女獣人の会話を一言一句聞き逃さないように静かに耳をすませていたわ。


 内容を聞いてマクシミリアンに報告に戻るべきか、知らんぷりしてこのままブリーズ=アルジャントリーのコンサートを聞くか迷っていた……って、どういう事よそれ!



「う〜、どうしよう……」


 迷っている場合じゃないでしょう! っと知らないはずの私がここまで興奮したらだめだね。


 猫の女獣人は溜息を一つついてから、忍び足で私たちの元に向かい始めたわ。






「早く来すぎちゃったみたいね、少しは落ち着いた?」


 握っている手を目配せしてみせると慌てたように手を離したわ。


「あ、ああ、はい、だいぶ落ち着きました……」


 ちょっとがっかりしたような顔を見せたフィンなんだけど、すぐに何かに気がついたみたいで、私からは見えにくい位置に誰か来て何かを手渡されたみたい。



「どうしたのフィン?」


 フィンが羊皮紙を見ると目を見開いて私の方を向いてきたわ。



「ねぇ、どうしたの?」


 フィンが口に手を当てて黙るように合図をして、私の手を掴んでゆっくり移動しだすの。



「せっかくコンサートに来たのにどうして出口に向かってるのよ」


「今は俺に従ってくれ!」


 コンサートがぁぁ……


 フィンが向かう先にこっちこっちとでも言うように手招きしている愛嬌のある可愛らしい猫の女獣人がいて、フィンはそっちに向かっているようだわ。

 その耳がピクピク動いていて、急にビクンとさせて目を見開くの。



「見つかったニャ! 走るニャ!!」


 突然、猫の女獣人が叫んで、それを合図にフィンも私の手を引いて走り出したわ。


 え? え! なになに、なんなの!?



 次の瞬間、私の空いた手の方を引っ張ってくる人物がいて、突然の力にフィンと手が離れたかと思うと、脇に抱えあげらてフィンとは反対方向に離れるように移動し出したの。



「ゲットっす!」


「ちょっと降ろして、離してぇぇぇぇ!!」


 とまぁ人生2度目の誘拐事件に巻き込まれちゃった……





 私が攫われてフィンが追いかけようとしたのだけど、猫の女獣人に止められたわ。



「何故止める! お前も仲間だったのか!」


「違うニャ! 僕は将軍の部下ニャ!」


 え? っとフィンが立ち止まってどういう事か手短に話すように問いただしたわ。



「つまるとこ、お2人を監視していたのニャア」


「監視だぁ!?」


「詳しい事は後だニャン! 今は早く将軍に報告するニャ!」


「ならそれは君がやってくれ。 俺はサーラさんに伝えに行く」


「わかったニャ!」


 猫の女獣人とフィンがそれぞれ行動に移ったみたいよ。




 フィンはコンサート会場を出ると一目散に冒険者ギルドに走って、受付をしている女性スタッフにサーラを急いで呼ぶように言ったのだけれど……



「サーラ様ですか!? サーラ様なら今日はいらしていませんけど……」


 どういう事? サーラは確かに冒険者ギルドに行くと言っていたはずよね。

 サーラがいない事がわかったフィンは、礼を言うと冒険者ギルドを出て今度はアルバロを探しだしたわ。



「アルバロー!」


「フィン? どうしてここに? プリンセスはどうしたんですか?」


「済まない……俺がついていながら」


 手短にアルバロに状況を説明したフィンはどうすべきか相談するのだけど、2人とも良いアイデアは浮かばないまま私が連れ去られた方へ走り出したわ。




 脇に抱えられたまま攫われた私は、王都を囲う壁の近くにある、ある建物に連れて行かれて、そこから王都の外に出る掘って作られた地下を抜けて外に連れ出されたわ。


 ある程度離れた場所までくると降ろされるのだけど、周りには20人近い冒険者というよりはならず者が囲っていたわ。



「あねさん、ティアラ付けてないし、ドレスローブに剣なんか吊るしているけど本当にこいつがララノアですかい? どう見てもただの冒険者ですぜ?」


「あたいを信じないのかい? まぁ別人だったら……バラしゃ良いだけだよ」


 バラすってなんだろう? 逃すとか言いふらすっていう意味じゃないよね。



「随分と落ちついてるねぇ? それとも怖くて声も出ないってところかい」


 実は誘拐は2度目ですなんて言えないしねぇ。 それにログェヘプレーベが以前誘拐されたあとで、誘拐はすぐに傷つけられたり殺されたりはしないって言っていたし、サーラは何かあった時は慌てるよりも冷静に考えて、まず情報を得る事が大事だって言ってたよね。


 ということでまず情報を集めなくちゃ。

 この中で一番偉そうなのが、あねさんって呼ばれている兎の女獣人みたいね。 アルナイル先生の勉強で獣人族はその動物を象った特性を持っているって言っていたから、きっと耳と目がいいはず。

 それと私を攫った男の人はマッチョなのかと思ったけど意外とスリムな人だったわ。


 あとは聞きだせる事を聞かないと……



「確かに私はララノアよ。 あなたたちの目的は何よ!」


「生きのいいお姫様だねぇ。 いいかい? お前の親父とこの国はあたいらの仲間を殺した仇なんだよ」


 それってやっぱり幼少期の野盗の事よね。



「あれはあなた達が侵略してきたからじゃない!」


「そうであっても、捕らえた仲間全てを殺していい理由があるかい?

だから復讐するために今度はこうして時間をかけて準備したんだ。 だからこの国の王には責任もってあたいらの手によって殺されてもらうのさ」


 兎の女獣人は高笑いをひとしきりすると、私の髪の毛をつかんで変わったナイフで乱暴にひとふさ切ったの。



「おい、コイツと手紙をちょっと王宮まで届けてきな。

こいつは大事な取引の商品だからね、シッカリ見張っておくんだよ」


 屋外のため、檻などないけど20人近い野盗に見張られることになったわ。




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