アルバロの気持ち
書き溜めに少し余裕があったので……
地上を走ると馬と同じぐらいだけど、翼で羽ばたけばもっと早く移動できるグリフィンは、あっという間に神殿の上空まで辿り着いちゃったわ。
神殿の入り口に降りたってグリフィンから飛び降りた私は、グリフィンにここで大人しく待っているように言ってから神殿に駆け込んだの。
「プリンセスララノア!? どうしてこちらに!?」
「話は後でするわ」
今は王宮を飛び出ちゃった以上急がなきゃ。
一番奥に当たる祭壇の間に向かっていったら、そこには延々ブツブツ懺悔の言葉を口にしているアルバロの姿があったの。
「アルバロ」
私の声が聞こえないのか、延々ブツブツと懺悔の言葉を続けているわ。
強制的に両手で私の方に振り向かせたアルバロの顔はたった1日だというのにげっそりとしていて、なんていうか目には生気を感じられない状態になっていたわ。
「あ……ゴメン、ゴメンなさい。 俺だけ生き残ってしまって。 助けられなくてゴメンなさい」
「何を言っているの! 私はララノアよ。 しっかりして!」
「あ……プリンセス。 僕は、僕は仲間を見捨てて1人だけ生き残ってしまいました」
「違うわ! アルバロは友達を助けるために必死に私たちに助けを呼びに来たんじゃない! 見捨てたわけじゃないわ!」
「でも結果的に仲間は死んでしまいました。 僕もあそこで一緒に死ぬべきだったんです」
私にはアルバロみたいな経験なんてないから、こんな時に掛ける言葉なんて見つからないよ、ひいお祖母様。
こんな時ってどうしたらいいんだろう……
気がついたら私はアルバロの頭を抱えて撫でていたの。 言葉が見つからなくて自分でできることをしていたみたい。
「……プリンセス、僕はこれからどうしたらいいんでしょうか?」
顔を上げたアルバロが困り果てた顔をしながら見つめてくるわ。
そんな目で見つめられても……うううん、ここで私はアルバロに何か言葉をかけてあげなきゃいけないわ。 でもなんて……
目を閉じて掛けるべき言葉を考えて纏めてみる。 アルバロは友達を救えず見捨てたと思い込んでいるのよね? そうよ、それなら……
「アルバロがあの時見捨てたんじゃないって証明して見せればいいのよ!」
「はい? 意味がわかりません。それにどうやってですか?」
「私と友達になりましょうアルバロ。 そして私を守ってみせるの」
「すみません、僕にはプリンセスが言いたい事がさっぱり意味がわからないんですが……」
「そうよ、それで証明するの。 アルバロは逃げたんじゃない、友達をちゃんと救おうとしたんだって」
アルバロが黙り込んで何かを考えているみたい。 きっとわかってもらえたに違いないわ。となれば、ひとまずこれで解決よね? あとは……
「決心がついたら王宮に来て。 私待っているから」
急いで王宮に戻らなきゃぁぁぁぁぁ。 こんな事がサーラの耳に入ったら大変だわ。
引き返そうとする私に神殿の神官たちが、今の一件を見てわかってくれたのか、後は我々にお任せくださいって言ってくれていたから大丈夫よね。
急いで神殿を出た私は、待っているはずのグリフィンの場所に戻ったんだけど、そこにはグリフィンの姿が見当たらなかったわ。
「あれ、グリフィーン? どこー?」
叫ぶとピーって鳴き声が頭上から聞こえたから見上げると、神殿の建物の上で待っていたみたい。
急降下してきたグリフィンに飛び乗った私は、早々と王宮に戻って行ったわ。
馬を必死に走らせてやっと神殿が見え出したところまでたどり着いたフィンは、ちょうど私が神殿から出てきて、グリフィンに飛び乗って大空を舞いながら王宮に戻っていく姿を見つけてポカーンと眺めていたわ。
「姫様が……戻って行った……」
私が無事に王宮に戻っていく姿を見てホッとしつつも、必死に馬を走らせてやっと来たフィンはドッと疲れが出たみたいで肩の力を抜けたみたいだわ。
「ここまで来ちまったし、一応アルバロの様子でも見てから戻るか……」
独り言を呟きながら神殿の前で馬を止めて中に入って行くの。
一番奥に当たる祭壇のある場所まで向かったフィンは神官たちに囲まれているアルバロを見つけるわ。
「神官様たちどうかしたんですか?」
すると1人の神官がフィンに振り返ってこう言ったの。
「コイツ……このアルバロという奴は、プリンセスララノアの抱擁を受けたのだ! なんと羨ましい!」
「抱擁って、姫様はまだ12歳だろうよ……」
「馬鹿者! 年齢ではない! プリンセスララノアの抱擁、つまりは【愛と美の神レイチェル】様の血を引かれる方の抱擁という事が重要なのだ!」
フィンはやれやれといった顔をしながらも、そう言う意味かと納得したみたい。
そして一度神官たちを追い払ったフィンはアルバロに成り行きを聞くの。
「成る程、つまりアルバロが自責の念にかられていたところを姫様に救われたってところか」
「はい……」
「と言ったはいいが、アルバロの言った通りならちょっと強引すぎだな……
でもな、そこが姫様の優しくて良いところだ。 困った人を放っておけないんだろうな」
「そうですね、素敵なプリンセスだと思います」
「で、どうするんだ?」
アルバロがフィンの目ををジッと見つめて、声に出さなくてもわかるぐらいの意思表示をして見せたわ。
「そんじゃまぁ王宮に行きますか?」
「はい!」
こうしてフィンがアルバロを連れて王宮に連れて行くのだけど、私ってばアルバロの事をお父様とお母様に話しておくのを忘れていたのよね……
その様子を遠巻きに見ていた2人はやれやれといった顔を浮かべているの。
もちろんサーラとひいお祖母様なんだけれどね。
「まるで昔のレイチェルみたいだな」
「えー! どこがよ、ん?」
「思い立ったら後先を考えずに突っ走るところだよ」
あははって、ひいお祖母様は笑うけれどまったくひどい言われようだわ。
サーラはそれじゃあと王宮に戻ろうとするのだけれど……
「もう戻るの?」
「ララの後始末をしなきゃダメだろ?」
「アルバロの事ね。 それじゃあサハラに任せちゃうかな」
「あのなぁ、俺だってララが転生者じゃないって時点で側にいる必要はもうないんだぞ?」
「ごめんねぇ、でもせめて戴冠式まででいいからついていてあげて」
「……わかったよ」
ひいお祖母様がお礼を言って抱きつこうとするのを、サーラが素早く避けるとムスッとした顔を見せて消えていったわ。
「やれやれだ……」
こっちもよ。
私が今日は一日王宮にいる事になっていたから、同じように自由になった猫の女獣人がノンビリ王都を歩いていたわ。
「ブリーズ=アルジャントリーのコンサート行きたかったニャア……」
そんな彼女の耳にある噂が入ってくるの。 なんでも頰被りしたいかにも怪しい男が、今朝方からチケットを売ってくれる人物がいないか必死に探し回っていたっていうものだったの。
その怪しい男はなんとか大金を払う事で買えたらしいわ。
「どうやら必死な人は僕だけじゃなかったみたいなのニャ」
その噂のおかげで猫の女獣人はほんの少しだけ元気が戻ったみたい。
よかったね。




