王都の外周へ
幼少期振りののちょっと不穏な空気?
王宮でのコンサートの翌朝、私はブリーズの歌を口ずさみながら王宮を歩いている時だったわ。
「そんなに気に入ってもらえんしたかぇ?」
「うん、想いを伝える歌なのに明るくてテンポがいいんだもの」
声をかけてきた人に答えながらそちらに顔を向けると、なんと歌姫ブリーズ=アルジャントリーその人だったよ。
「って、わぁぁぁぁぁブリーズ!!」
話を聞くと昨日はお城で一晩泊まったみたい。 それでお父様と話をしていたのね。
せっかくだからサーラとの関係を聞いてみたんだけど、「とても大切な人」だなんて少し照れながら満面の笑顔で言われちゃったらそれ以上聞けなくなっちゃうよ。
午後サーラとフィンの3人、御忍びの格好で、今日はなんと初の王都の外周に出かけることになったんだよ!
「昨日のコンサートはどうでしたか?」
「想像していたものと全然違って、また見に行きたいなぁ」
「それは良かったです」
ブリーズの歌を口ずさみながら歩いていると、フィンがコッソリ話しかけてきたの。
「親父がチケットを2枚手に入れたらしいんですがいりますか?」
「え! 本当に? 行きたいわ!」
「ならチケット貰って明日お持ちしますね」
「ありがとう、フィン」
今日は朝から良いことだらけだわ。
そして王都への出入りを守る衛兵たちの前を通って出ようとしたところで止められちゃった。
「身分証明書を提示してもらおう」
身分証明書? 何それ?
「お勤めご苦労様、こちらはプリンセスララノアと私は付き人のサーラ、そして護衛のフィンです。
これは御忍びのため内密にお願いします」
「こ、これは失礼致しました! どうぞお通り下さい!」
こんな感じで王都の外周に簡単に出れちゃった。
「でもサーラ、王都の外周なんかに出てどうするの?」
「そろそろ王都の周りがどうなっているかなども学んでおくべきと思ったんです」
「それならグリフィンと一緒に空から見てるからわかるわよ?」
「空からと地上からではまた違うものですよ」
そんなものなのかなぁ?
当然他の町に行くわけではないから、街道からは逸れて進むのだけど、サーラの言った通り空からでは気がつかないこともたくさんあって、その都度サーラに聞いていったの。
王都の玄関口からだいぶ離れたところでサーラのホールディングバッグだったっかな? からティーセットを取り出して一休みをしていると、突然サーラとフィンが同時に同じ方向を見つめ出したの。
「2人ともどうしたの?」
2人が答えるより先に私の目にもその姿が見えてきたわ。
「た、助けてぇぇぇ! 仲間が仲間が危ないんだぁぁぁぁぁ」
血まみれになりながら私たちのところへ走りこんできた男の人は、必死に涙を流しながら懇願してきたわ。
「済まないが自分たちは冒険者では……」
「大丈夫!? 今助けてあげるわ。 友達はどこにいるのか教えて?」
「ちょっ、姫様!……あ」
フィンが慌てて手で口を塞いだのだけど、その冒険者は改めて私の顔を見て驚いた表情を見せてきたの。
「これは大変失礼……」
「そんなことは良いから友達が危ないんでしょう? 早く助けに行きましょう!」
「は、はい! それではついてきていただけますか?」
「ええ、急ぎましょう」
「サーラさん、どうしますか?」
「どうもこうも、ララは行くみたいなのでついていくしかないでしょうね」
そう言うなり、バサッとティーセット一式ごとピクニックシートで包んで鞄にしまいこんで、あっという間に片付いちゃった。
冒険者が気遣ってくれているのか、怪我をしていてかはわからないけれど、小柄な私でもついていける速さで走っていきながら、相手が何者なのか尋ねてみたの。
「名前はわかりませんが、最近冒険者の間で噂になっている『冒険者殺し』かもしれません」
「冒険者殺し?」
「自分はその話聞いたことがあります。 冒険者を狙って殺してその財産を奪う卑劣なやつです!」
「許せないわね。 少し懲らしめてあげないと!」
たどり着いた場所は遺跡だったわ。 その少し先に行った場所で、1人きりで立っている冒険者の姿が見えて、そのまま走って近づくとその冒険者の足元には倒れている4人の姿があったの。
「き、きさまぁぁぁ! よくも仲間を!」
「うはっ、作戦成功しちゃった? わざと逃がしたことに気がつかなかったなんてね。
しかも都合の良いことに少人数の獲物を連れてきてくれるなんてラッキーだね。 もっと大勢だったら逃げるしかなかったよ。
ま、君たちの運勢は最悪だけどね」
男は軽装備の革鎧で口調はまるで道化、というよりも……凄く頭にくるぅ!
私たちに助けを求めてきた冒険者はハッとした顔をしながら私たちの顔を見てきて、自分が大変なことをしちゃったとでもいう顔を向けてきたの。
「下がってください! ここは自分が引き受けます!」
「1人じゃダメよ! 私も戦う!」
「自分は姫様を守るのが仕事です!」
「馬鹿……」
「あ……」
サーラは手をおでこに当てて呆れた顔をしてる。
「っぷ! あはは、あははははは! 今日の俺の運勢最高じゃん!
ねぇお姫様ぁ、お姫様は殺さないであげるね。
だ、い、じ、な、ひ、と、じ、ち、になるからさぁ。
あ、でもあまりお痛するとぉ腕と脚はなくなっちゃうかもしれないよ?」
ちょ、ちょっと私、マズったことしちゃったかなぁ……




