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(二)-9
「はい」
神先生がそう応答すると、神には聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「あー、もしもし、招来軒さん。出前頼みたいんだけど」
「うちは招来軒じゃないよ、源さん」
「源さん?」
「源さん……とは」
美幸と高井戸が疑問を口にした。
そのとき、ちょうど幸恵がグラスを四つ持って部屋に入ってきた。そして床にしゃがんでそれらをテーブルの上に置きながら「源さんっていうのは、いつも間違い電話をしてくる近所の人なんですよ」と解説した。そしてすぐに立ち上がって再びキッチンに戻っていった。
(続く)




