#5<サラディン2/2>
エジプト軍は敵十字軍と結託して、援軍だったシリア軍を攻撃した。
シールクーフ将軍「なんだ、なぜだ、なにがいったい!」
サラディン「見抜かれとる……」
最初、エジプト軍はシリア軍に救援を要請した。
それに答えてシリアは24000人の大軍団をエジプトに送った。
だが、その救援の規模にエジプト宰相シャワールは怖じ気づいた。
シャワール「侵略だ!」
救援ではない、これは侵略だ。
誰でも考える事は同じだったのだ。
最初に助けを求めたシリア軍は侵略軍なのだ。
ならどうすればいいか?
エルサレムから来た敵十字軍なら近くにいる。
一時休戦して、奸計を謀り、連合を組めばいい。
エジプト宰相シャワールはずる賢く立ち回った。
十字軍にこっそり耳打ちする。
「エルサレムも危ないですぞ」
「一緒にシリア軍を退けましょう」
あろうことか十字軍に助けを求めたのだ。
さすがのシールクーフ将軍も連合軍相手に攻めあぐねた。
第1回、第2回の遠征とも失敗する。
ようやく第3回の遠征で、エジプト・十字軍は敗北する。
エジプトはシールクーフ率いる遠征軍のものとなった。
エジプト陥落の結果、やはりエルサレムもヤバくなった。
遠征軍の十字軍は、やむなくパレスチナに撤退した。
総指揮官シールクーフはエジプトを治めた。
シールクーフはファーティマ朝の宰相となった。
彼はサラディンの叔父だ。
サラディンは補佐役として実際の政務を預かった。
サラディン「さて、これからどうするか……」
4ヶ月後。
シールクーフ急死。
サラディンが宰相に選ばれた。
名目上はファーティマ朝の宰相である。
ファーティマ朝のカリフ、アーディドは病弱で部屋に籠もりきりだった。
ほったらかしの政務は無理難題が山積みであった。
奴隷兵反乱の鎮圧、裁判官の交代劇、宗派の対立。
サラディンは次と無理難題を解決していく。
2年後。
ファーティマ朝最後のカリフ、アーディド急死。
この都合の良すぎる急展開を誰もが気に掛けていない。
皆が皆、そういう事は良くある事と認識していた。
庶民は知っていた。
「こういうことさ」
首に手を当てて、シュッと横に動かす仕草をした。
ファーティマ朝の残党を次々に掃討、粛正していくサラディン。
そうこうしていくうちにヌール・アッディーンがダマスクスで急死。
エルサレム十字軍「好機だ!」
北の強国アレッポ「好機だ!」
暗殺教団アサシン「好機だ!」
この好機をイスラム圏の各王朝も十字軍も見過ごすワケがなかった。
跡継ぎは11歳の幼君イスマーイールなのだ。
幼君の奪い合いが始まった。
幼君の擁護者こそ、新しいダマスクスの支配者である。
ダマスクスはシリアの首都であるから自動的にシリアの支配者となる。
宿敵十字軍では、業病のボードゥアン4世が即位したばかりであった。
13歳の彼は、幼君略奪戦に名乗りを上げていない。
これで十字軍は略奪戦から脱落した。
北の強国アレッポが妖しい動きを見せていた。
この時、幼君の後見人はたまらずサラディンに救援を求めた。
エジプトでの辣腕宰相としての腕を買ったのだろう。
サラディンはダマスクスに無血入城した。
サラディン「北方のアレッポにも手を打っておくか……」
後見人となったサラディンは、治世安定の為、外交交渉の接点を探った。
北方のアレッポは幼君略奪戦に名乗りを上げた強国だ。
サラディン暗殺の為に、暗殺教団を焚きつけたりしている。
サラディンはアレッポとも暗殺教団とも和議を提言した。
「ダマスクスはもはや私のもの」
「無駄な争い事は、双方に流血を強いるだけだ」
アレッポは沈黙し、暗殺教団とは講和した。
こうしてシリアの安定、エジプトの領地を手にしたサラディン。
ついに自分の国アイユーブ朝をエジプトに勃興した。
サラディン「次はエルサレム王国だ」
いよいよ宿敵ボードゥアン4世と対決する時がやって来る。
エルサレムは中東の喉元に刺さった棘のような存在だった。
第1次十字軍が起こり、エルサレムはキリスト教徒のモノとなっていた。
いわゆるエルサレム王国である。




