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悪魔の妹

「・・・え?」

 朔が目を覚ますと、至近距離にパチュリーの顔がある。他には誰もおらず部屋には朔が寝てる大きなベットと壁に刀が立て掛けてあるだけだ。

「・・・うん、落ち着こう、な?」

「起きたと思ったら何よいきなり」

「・・・ほんのついさっき俺はお前らに殺されかけたわけだが?」

「別に殺そうとしたわけじゃないわ。少し試しただけよ」

「ナイフを全身に刺すことで一体何がわかるんだよ!」

 と朔は叫ぶとパチュリーは少しだけ申し訳なさそうな顔をしてくる。そんな顔をされると朔も何も言えなくなる。

「・・・もういいよとにかく俺は帰る」

「無理よ」

「・・・おい、これから調理されますってオチじゃあるまいな?」

「そうじゃなくて、貴方動けるの?」

「は?何を言って・・・あれ? ふんぬ!」

 朔は身体を動かそうと踏ん張るのだが、少し頭が動いたたけで手足はピクリともしない。

「・・・麻痺毒、か」

「いや違うから、痛み止めの副作用とか言ってたわ」

 朔は踏ん張るのをやめる、というよりかは諦めだ。

「これから俺をどうするつもり?」

「なにもしないわよ、怪我が治ったら家に帰す」

(・・・不安要素しかないな、さっさと抜け出した方がいいかもしれん)

「じゃ、もう一眠りさせてもらいますよっと」

「そう、おやすみ」

 朔は目を閉じて寝ようとする、のだが何やら視線を感じるので目を開けるとなぜかパチュリーが朔をじーと見ている。

「パチュリー?」

「気にしないで、観察してるだけだから」

「そ、そうか」

(近くなってきてる! だんだん顔が近づいてるから! いや寝ろ! とにかく寝て身体を休ませろ!)

 頭の中で羊を数えて必死に寝ようとする。眠れたころには羊は数百匹を超えていた。



「ったた、痛み止めとやらの効果切れたか」

 一眠りして目が覚めると身体の至る所が痛むが動くことは出来ると判断する。パチュリーは流石にいなくなっていた。

「さっさとこんなところはおさらばだ、命がいくつあっても足りない」

 壁の刀を手に取り部屋を出る。先にはまたもや長い廊下がある。

「・・・・」

 静かに、あまり足音をたてないように廊下を歩いていく。

その時後ろから真紅の瞳が見ていることに、朔は気づけなかった。



「やっと外に出れたと思ったら・・・」

「もう動いていいのですか?」

 かなり歩いてようやく外に出た朔だが、出た先には来た時に寝ていた門番がいた。今日は寝ていない。

 空に太陽はなく、半分欠けた月と星々が夜の世界を照らしている。夜は、妖怪の世界だ。

(・・・今回は無理だな)

「動けるようになったから少し散歩してるだけだよ」

「そうですか、あまり無茶はしないでくださいね」

「・・・善処する」

 その後少し適当に話をして、朔は中に戻る。

 真紅の瞳は、その時も見ていた。



「どこだここー」

 どこまで歩いても同じ物しかない、元々どこの部屋だったかなんてわかるはずもないのだ。

「やばい、抜け出したのがバレたら・・」

「お兄ちゃ何してるの?」

「ごめんなさいたべないで!」

「咲夜がいないから食べないよ?」

「・・・だれ?」

 朔が後ろに振り返ると、レミリアと同じくらいの女の子がいた。

 濃い黄色の髪をサイドテールにまとめ、その上からナイトキャップを被っている。瞳の色は真紅。服装も真紅を基調としており、半袖とミニスカートを着ている。

 そして何より特徴的なのは、背中から一対の枝に七色の結晶がぶら下ったような特殊な翼が生えていることだ。

 ぱっと見可愛らしい容姿、ただしその翼が朔にレミリアを連想させた。

「私はフランドール・スカーレット。お兄ちゃんの名前は?」

「津後森朔だよ、フランドールちゃん」

「長いからフランでいいよ。それよりお兄ちゃん、一緒に遊ぼう!」

 途端に、朔の中の生存本能が悲鳴を上げた。紫やレミリアのように企みに対してではなく、純粋な死に対する恐怖だ。

「な、にをして遊ぶのかな? フランちゃん」

 年相応の、子供の笑顔で、フランは言う。

「弾幕ごっこしよう! 人間のお兄ちゃん!」

 気づいた時には、足は痛みを完全に無視した全力疾走を開始していた。

「あはははは!まてまてー!」

 悪魔の館で、無力な人間は走る。



 遊んでる、と朔は走りながら思った。

「あははは、逃げてばっかりじゃ勝てないよお兄ちゃん!」

 フランが腕を振るうと、大量の綺麗な球が飛んでくる。見る分にはまるで問題ないその弾幕は、無力な少年を噛みつきかかる、

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 対して朔がやっていることは、ただ全力で走るだけだ。普段の何倍も速く走れているので火事場の馬鹿力が出ているのかもしれない。

「そーれ!」

 朔が走る先にレーザーが飛び、爆発音と共に煙に包まれた。

「だああぁぁぁぁ!!」

 朔は止まらず、爆発したところを大きく飛ぶ。だが距離が足りなかったのか床に空いた穴に落ちていく。

 落ちた先は図書館だったが朔にとってそんなのは関係ない。着地する時に前転してすぐに立ち上がり走り出す。

「フランは後ろにまだいるんだろーなくそ!」

「ここだよお兄ちゃーん」

 走った先にフランが二人いた。

「っな!?」

「「お兄ちゃーん!」」

 慌てて後ろを見るとそちらにもフランが二人いた。前と後ろにいた片方のフランは本棚を背にするように右と左に移動する。退路は、ない。

「レーヴァテイン」

 右のフランが呟き、その手に一本のレーザーを出現させる。他のフランも同様にレーザーを剣か何かのように持っている。

「さようなら、お兄ちゃん」

「でも何もしないのは残念だったなー」

「腰の刀は飾りなんだね」

「くそったれ・・・」

 刀を抜き、構える。ただその構え方は素人丸出しで、何よりもその手は震えていた。

「それじゃお兄ちゃん」

 右のフランが構えると他の三人のフランもレーザーを構える。

「ばいばい」

 四人同時に、振り下ろす。朔は、動かない。

「・・・お前だな」

 当たる直前に、何か呟いた。そして、

 右のフランに、突撃する。

「え?」

 レーザーは朔の身体をすぐ横を通り過ぎ、朔の後ろで床に当たり爆発を起こす。

「っせい!」

 近づいた朔は、やけくそ気味に刀を横に振るった。

「っと! おしいよお兄ちゃん!」

 フランはその刀を背を曲げて避けた。刀は空を切る。

「いーや、当たりだ」

 ニヤッと朔は笑った。疑問に思ったフランが声を出す前に、結果は出た。

 突如本棚は上と下に別れるように真っ二つになった。大量の本がフランと朔の上へ落ちてくる。

「えええぇぇぇ!?」

「っしゃああ人間なめんなぁぁぁぁ!!」

 それらの叫びを打ち消すように、大量に物が落ちる音がした。

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