責任
結局持久戦で負けた。
というか勝負にもなってなかった。速度では同じくらいなのだがスタミナが違いすぎた。朔は五分も持たずにリタイアした。
若干ふらふらとしながら一時間か二時間ほどかけてなんとか家に辿り着く。帰るまでに少しはスタミナも回復していた。
「・・・もういい、昼寝してやる」
写真のことを考えると憂鬱になるが、もう諦めるしかない。どうせ紫にしばらく弄るネタにされるのだ。
布団で寝ようと思い部屋に向かう。何も考えずに部屋に入る。
「うあぁ〜、あぁぁぅ〜」
なんか布団お化けがいた。
正確には誰かが布団に包まっていた。まあ声からして確実に妖夢なのだが。朔はもう何か考えるのも面倒だったので何も考えず話しかける。
「何してんだ妖夢」
「にゅぅわ!?」
「何その妙な叫び」
奇怪な声を出しながら妖夢が布団から顔を出してきた。顔がまだ赤い。
「あ、さ、朔さんどうも」
「はいどうも。なんで布団に包まってんだお前は」
「な、なんでって、そりゃ、その、あれです」
「あれって何?」
「恥ずかしいんですよ言わせてるんですか!?」
言いながら何かを思い出したのかまた布団に包まってあうあう言い始めた。
朔はなんかあったっけ?と記憶を探る。
(・・・・・・ああ、そういえば)
宴会の時にハプニングでキスしてしまった記憶があった。が、朔はあの写真を新聞に載せられたら大変だと思うことしかしてなかった。よくよく考えなくてもやらかしてる気がした。
しばらく考え、呟く。
「いや、どうせ紫さんあたりが絡んでるだろ」
「え?」
「あのな、抜け出すために暴れた結果キスしちゃったってどこのラノベ? てか普通絶対ない。確実に紫さんとかが何かしたに決まってる」
「そ、そうですよね・・・」
布団の中から妖夢はちらりと顔を出しながら言う。ただ聞こえるか聞こえないか程度の声でぽつりと呟く。
「そういう問題じゃないんですよ・・・」
「え?」
「・・・・・ああもう!」
ガバッ!と布団を払いのけて妖夢は立ち上がる。まだ顔がリンゴか何かのように赤いが。
「は、初めてだったんですからね!? 持っていったからには責任取ってもらいますからね!!」
「えぇ・・・なにその理論」
朔は面倒そうにため息を吐きながらなんてこともないことのように言う。
「俺は別に構わないが、お前はもう少し選んだ方がいいんじゃないのか?」
「何を言ってるんですか! そもそも・・・・え?今なんて言いました?」
妖夢がどんな感情が篭ってるのか分からない表情を浮かべる。朔も特に考えずもう一度言う。
「だから相手選んだ方がいいって」
「その前です!」
「別にに構わないって言ったんだが・・・」
「・・・・・・・・・・・・・ほえ?」
赤い顔が更に赤くなっていく。もはや頭部で赤くないところの方が少なかった。
その反応を見て朔は首を傾げる。
「あれ?責任問題を言ってたからてっきり嫁婿とか恋人とかの方かと思ったんだが・・・もしかして腹切りの方か?」
「ち、違います違います‼︎ え、あの、その・・・いいんですか?」
「いいも何も、こっちからすれば大歓迎なんだがな。可愛い嫁さんもらうのを拒否する男はそういないと思うが」
「・・・・・」
へなへなと妖夢はその場に座り込んでしまう。朔としては首を傾げるだけだ。
妖夢は下を向いたまま確認をとる。
「あの、本当にいいんですか・・・?」
「いいよ別に。・・・まあ恋人とかになって何がどうなるんだっていう疑問はあるが、そんなもん後から分かればいい」
答えに迷いはなく、即答だった。
妖夢は顔を上げない。というより上げられなかった。
「あの、朔さん」
「ん?」
何故なら、鏡を見るまでもなく、酷い顔になってるのは分かったからだ。
「不束者ですがよろしくお願いします」
「・・・こっちこそよろしくな、妖夢」
しばらくしてようやく顔を上げた妖夢。
その表情は。




