狂いし存在
朝だ。自分の家で寝ていた。
「…………」
隣を見てみる。わざわざ一つの布団に朔と一緒に妖夢を寝かせていた。
「紫さんも好きだなあ」
溜息を吐きながらとっとと布団から出て部屋から出る。なんか妙に慣れていた。
玄関から外に出て辺りを見渡す。探し人を知っている人が畑仕事をやっていた。
「藍さん」
呼びかけると、藍は手を休めずにこちらを見る。
「やあ朔。もう元気になったようだな」
「紫さんはどこですか」
「単刀直入だなお前は。紫様なら後始末だ。あと博麗の巫女にお説教とかしているみたいだな」
「藍さん、話があるんですが。割と真面目に」
「心配するな、キチンと説明はしてくれるさ。紫様は、まあ普段かなり適当なことして遊んでいるが……やるべきことはしっかりとやってくださる」
「いえ、そうじゃなくて」
「ん? 紫様と話すのではないのか」
「―――。」
朔は無言で自分の後ろの方を指指す。
猫の集団が畑を荒らしていた。真ん中には橙らしき人影がある。
「あれはどうすべきですかね?」
「す、すまん! 今すぐ止めてくる!」
「……はあ」
どんな大妖怪だろうとシリアスな時は真面目だろうと、駄目な時は駄目だった。
「……諦めないぞ……」
ズルズルと身体を引きずるようにして歩く人間の形をした生物がいた。その後ろには穴のような物があった。
「殺す。どいつもこいつもみんなころしてやる。……だれからころしてやろうか……」
サタンと名乗った男は、ブツブツと呟きながら動いていた。
遠くには沢山の人間が住んでいる、マンションという建物が大量に並んでいた。
「……食べてやる。全部食べて力をつけて、あいつらを殺してやる。ふひ、ふひひひhihihi」
「薄汚いゴミね」
「あ……?」
ジュルジュルと音を立てながら振り向く。そこに立っていた八雲紫は感情の篭っていない目でサタンを見ていた。
「―――いいところにいた。お前を食べれば少しはマシになるというものだ」
「あら? そんな状態で渡しに勝てるつもりなの?」
「……お前程度なら、な」
「……、」
「ふひひゃひゃ。た、べる、食べる!」
グチャグチャと近づいてくる生ゴミを見て、紫は困ったように呟く。
「ほんとよねぇ。貴方はそんな状態でも本気の渡しに勝てるくらい強い。本当に困ったわねぇ……」
「け、く、食えるひの」
「だから」
そこで一息おいて、一言。
「一瞬の一瞬、全力でいくわ」
その時、一瞬、本当に一瞬の時間、数マイクロ秒。
幻想郷の結界が完全に消え去った
「ごふぁぉこぎこごぉまねaaaaaaaavsjs!!!!????」
言葉にならない騒音を撒き散らしながら生ゴミは悶え苦しむ。
「ば、きゃな。ちか、らのねもとかrhkすな」
紫はもう生ゴミなどみてなかった。その中に埋もれた人間に対して一言呟く。
「後は貴方次第よ。人間」
その言葉を最後に、紫はいなくなり、静寂が訪れるのには、五分ほどかかった。




