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やるべきことは

 目が覚めた時には、それは完成していた。

 ただ言われた通りに力を振るう。

 ただ命令通りに、失敗作を燃やした。

「やっぱり駄目だな。一人の魂に一つが限界か」

 そんな声が聞こえてきた。その言葉の意味を理解する思考能力は残されていなかったが。

「やあ××。今日は新しい物を持ってきたよ」

 そう言った彼女の後ろには、少年少女の身体が転がっていた。

「さあ、この身体を喰らえ。そして魂を取り込むんだ」

 拒否権はなく、拒否をしようと思えることすらなかった。

 ただただ言われた通りに、六人の人間を食べた。

ぽんっと、目の前に炎が現れた。一つではなく、それぞれ色が違う七つの炎が

「さあ実験といこう。××」

 そう言って映し出されたのは、何処かの里。皆楽しそうに生活している、平和な所だ。

「ここに行って人々を焼き、潰し、串刺しにして、狂気に満ちさせ、炎と鬼ごっこをしてこい。あぁ貴重なサンプルがあったら回収を忘れずに」

 拒否権はない。拒否する気もない。

 ただただ命令に従う。



「俺たちはさ、基本は一つなんだよ」

「何が」

「魂が」

 荒れ果てた大地で、サタンは語る。

 朔の方はあまり聞いていない。この状況を突破する方法を必死に考えているところだ。

「性格がバラバラな魂を一つに収めるとさ、どうしてもメインとサブが決まってくるんだよ。ただしサブの行動がメインに大きく影響を与える。その結果あっちこっちで暴れるわ寝るわわけのわからんことを言うわで散々だ」

(さーて、本当にどうするか。こんな時の対処法なんて知らないよ俺は)

 一応教えられたことを色々思い出しているのだがこんな状況については一つもない。というかあったらスペルカードルールを無視して暴れる奴は紫がぶちのめす気もした。

(そうじゃなくても何かするはずだよな紫さんなら。どうせこうなるのもわかってたんだろうし、博麗の巫女が駄目で俺ならいいってことだよな?)

 その間もベラベラとサタンは喋り続ける。肺活量どうなってるのかと問いたいくらい喋り続けていた。

(何がある、俺は何が出来る? それとも実は単なる時間稼ぎ? 何のための?)

「まったく、俺が食べたんだから俺の栄養源的な感じで言うこと聞いてくれればいいのにな・・・おい待てお前らやめろ刃をこっちに向けんな!」

(心がどうとかのこの刀は多分俺が特別だから使えるとかじゃない。強い思いが世界に影響した結果なら紫さん自身が出して戦えばいいし・・・ん?)

「食べた? 何を?」

「やめろ痛い痛いお前らの身体でもあるんだぞ! そして何!?」

 気がつけばサタンは何故か六つの剣と格闘をしていた。仲間割れだと楽なのにと内心思う。

「食べたって何を食った?」

「ああ、こいつらの身体。言っとくが味なんて覚えてねえからな」

「・・・・・」

(えーと、なんでだろう。嫌な想像をしちゃった。いや、違うよな! きっと違ってくれる!)

「仲間になるってことは、お前に喰われることに?」

「その方が楽だしいだぁ!? どれだ本当に刺した奴!」

 本格的に暴れ出したサタンと剣を見ながら朔はなんだか嫌になってきていた。

(ゆ、紫さん。まさかあの中に混じって心を壊せと?)

 それはないと思いたいのだが、それ以外に自分がやれそうなこともなかった。それならわざわざ一年かけて自身の手で育てた理由も分からなくもない。

(一年かけて育てられたのは食べさせて毒の役割を果たさせるため⁉︎ 流石に予想外ですよ紫さーん!!)

「・・・やってやるよこんちくしょう」

「あ、なんて?」

 サタンの問いに朔はヤケクソ気味に叫び返す。

「なるよ! 仲間になってやるよ‼︎ それ以外手がないし!」

「お、おう。そんなヤケクソ気味に言われても・・・」

 サタンは暫くジーと朔を見ていたが、嘘じゃないと判断したのかぽんっと手を叩く。

「よし、新しいお仲間だ。ちょっと待て今から食べるから」

 あっさりとしたその調子は、例え嘘でも何とかなると思ってるからなのかもしれない。

 やれやれと思いながら朔はサタンが近づいてくるのを見て、今さらながら思った。

(・・・待て、待て! 喰われるって、頭からパクリといかれたら死ぬんじゃ!?)

 そう思った時には遅かった。

 突然の痛みと共に朔の意識は闇へと落ちて行った。



 目を覚ませば暗い空間がそこにはあった。

「・・・・・・」

 黒一色、自分の姿さえ確認出来ない空間に朔はいた。

 ボウッ、と炎が現れた。一つではなく、色が違う炎が七つ。

「なんだ。やっぱり嘘だったか」

 そんな声が、頭に直接響いた。

「わかっ、てた」「やれやれだね」「何をしようとしてるかは予想はつきますが」「少し無謀じゃない?」「数にしても、質にしても我々が勝っています」

 次々と声が聞こえてきた。それに合わせるように、炎が次々と形を変えた。

 ゆらゆらと揺れる炎から、人の形へと。

 気づけば朔も身体があった。その手には桜色の刀が二本。

「・・・本当にこれがやるべきことなのかなぁ? 間違ってたらどうするかね」

 その問いに答える者はいない。朔は溜息と共に構える。

「ま、とりあえず頑張るか!」

 六つの炎の人が朔に襲いかかり、朔はそれを迎え撃った。



「残念だな」

 朔の腕を喰べたサタンは一人呟いた。その側から六つの剣は消えていた。

「ま、それもしょうがないか」

 手元に残った一振りの剣を振り上げる。狙いはもう魂が消えた抜け殻の身体。

「先に肉体を消して、俺も加勢に行くかな」

 ゴッ!という音がサタンの耳に届いた。

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