紅魔館の主
「あら、ここに魔理沙以外にお客なんて珍しいわね」
朔が声のする方を向くとそこにはパチュリーよりも更に一つ分小さい女の子がいた。
頭にナイトキャップを被り、ピンク色の衣服を着ている。服の所々を赤いリボンで結んでいる。水色の混じった青色に真紅の瞳。
そして他の人には無い一番の特徴として、背中に悪魔を連想させる大きな翼がある。
「・・・・・」
「なんだ私に何か付いてるの」
「・・・ええ、と、吸血鬼?」
「吸血鬼だけどそれが?」
(助けて紫さーん!)
吸血鬼というのは、鬼の力と天狗の速さを兼ね備え強大な魔力も持つ幻想郷でもトップクラスの力の持ち主なのだ。朔みたいな一般人、いやそこらへんにいる妖怪も吸血鬼のご機嫌を損ねたら待つのは『死』だけだ。
パチュリーがいたらもしかしたらフォローもあるかもしれないがパチュリーは刀を持ってどこかへ行ってしまった。
そのため朔は、相手を注意深く観察しながら話をする。
「ええとだな、俺の名前は」
「津後森朔だったかしら」
「・・・なんで知ってるんですか?」
「貴方だってそこそこ有名人よ、外来人が一年も幻想郷に住み着いてるってことで。普通は長くても一ヶ月そこらで帰っちゃうからね」
「いや、俺の場合は記憶がないからそのまま幻想郷に住み着いただけなんだけど・・・」
話しやすい、と朔は思う。話しやすいのは見た目もあるかもしれないが。
「記憶がない、ねぇ」
「一年前に幻想郷に来る以前の記憶がさっぱり」
「・・・ふーん」
にやり、と小さな少女は笑う。それを見た朔は嫌な感覚を覚える。
(まずい、何かされる! 紫さんと同じ目をしてた!)
「自己紹介がまだだったわね。私はレミリア・スカーレット、この紅魔館の主よ」
「・・・何と呼べば?」
「別にレミリアでいいわよ、朔」
笑顔で少女、レミリアは言う。ただ朔はその笑顔を見て頭に警報しか鳴っていない。
(何が来る、まさか血を吸い取るつもりか!? それともこっちは避けるしかできない弾幕ごっこでもするのか!?)
「ところで貴方に質問なのだけど」
「な、なんだ?」
「貴方の血液型は何?」
(血を吸い取られるパターンだー!!)
「B型です!」
「B型なの!?」
「目を輝かせないでー!」
ここまでくると頭を抱えるしかない、人生の終わりが確実に近づいている。しかもレミリアはじりじりと朔に近づいている。
「あ、あのー?」
「大丈夫、ちょっとだから、私少食だから」
「妖怪のちょっとはまったく当てにならねーんだよ!」
朔は少しづつ後ろへと下がる、しかしレミリアも少しづつ近づいてくるので距離は変わらない。
そしてレミリアは肉眼では追えない速度で朔に近づき
「いただきます!」
「いやー!!」
首にかぶりつこうとするので朔は必死に抵抗するのだが吸血鬼に力勝負できるわけもなく抑えこまれる。そこに、
「朔、ちょっと聞きたいことがあ・・・」
パチュリーが刀を持って戻ってきた。パチュリーからすれば小学生くらいの女の子が高校生を押し倒しているという風に見えている。
「・・・レミィにもそういう時期があるわよね」
そしてまたどこかへいこうとするのを朔が呼び止める
「待って!ほんと待ってお願いしますパチュリー様!!」
「大丈夫よ、死にはしないわ」
「死ななきゃいいってことじゃな、やめて、ちょっ! ぎゃー!!」
首を噛みつかれ、そのまま気絶した。
「まだ途中じゃないの」
「あー、美味しかった」
「レミィのせいで本の通訳終わってないじゃない」
「・・・まあB型の血でテンションが上がっちゃったのは否めないけど」
血を吸われ気絶した朔は床に放り出されている、気絶したのは単に極度の緊張だろう。
「ところでパチェ、さっきから気になってたんだけどその刀どうしたの?」
「そこの人間が持って来たのよ。調べてほしいって」
「何があるの?」
「・・・それが何もないのよ、何も」
パチュリーは刀を持ち上げる。
「刀は鉄だから私の魔法に何らかの反応があってもいいはず、なのに何もないのよ」
「何もないのが異常?」
「そうよ。何をしても形は変わらないし何に使っても普通の刀として機能する。・・・普通ではないのは確かなのに何が違うのかもわからない」
「・・・そうだわ、パチェ」
「なに?」
レミリアは楽しそうな、本当に楽しそうな顔をする。
「少し試してあげましょう」




