世界を喰らう者
「はああぁぁ!」
妖夢の斬撃が火の鳥を捉えた。鋭い一撃によって、火の鳥は真っ二つになる。
別の所ではレミリアの紅き槍が火の鳥を数十匹も屠った。八雲藍や何処かへ見たことある気がする狸の妖怪も火の鳥を撃墜した。
永遠亭の面子も次々と火の鳥を消し去っていく。が、それでも数が減った気がしない。
「んの!」
もはや大した力のない朔は、地上で飛んできた火の鳥を叩き斬ることしかできない。火の鳥は頑丈で、数も多くてかなり面倒だ。
「・・・くそ、さっきより増えてないか?」
もはや空には炎が広がるだけだった。こんな状態でも巫女や魔法使いが来ないあたり、永遠亭が何かしてる程度にしか思われていないのかもしれない。
「っと!」
考え事をしてるといつの間にか火の鳥が目の前に迫っていた。ギリギリで避けて後ろから叩き斬る。
「くそ、この刀に都合よく便利な力ないのかよ・・・」
「悪いが、使い方を知らないとただの刀だぞそれ」
朔の後ろに、いつの間にか元が立っていた。突然湧いて出るのには慣れてるから大して驚かない。
「じゃあ使い方教えてくれよ! このままだとやられちまうぞ!」
「・・・・悪いが教えられん。代わりと言ってはなんだが・・・」
元は朔から刀を奪い取り、にかっと笑って言う。
「俺の力を見せてやるよ」
そう言った後、朔の首根っこを掴んで空を飛ぶ。ぐえっと言う声がしたが元はまるで気にしてない。
火の鳥の大群が元に気づいて突撃してくる。
「・・・術式解放」
その言葉と共に、莫大な霊力が放たれた。それだけで火の鳥がごっそり消える。・・・霊力を間近でくらった朔は完全に意識がなくなったが。
「おいおいおい⁉︎ せっかく見せてやろうと言うのに落ちてんじゃねーよ!」
片手で朔をグルングルン回すと意識を取り戻す。顔が若干青くなってるが。
「そりゃちと乱暴すぎんか?」
「じゃあ丁寧に扱ってろ」
湧いたように後ろに現れた狸の妖怪に向かって適当に朔を放り投げる。朔は狸に受け止められた時、一瞬何かを感じ取ったが、それが何かわからない。
「やれやれ、人間というのは脆い存在なのだからもう少し丁寧に扱ってもいいじゃろうに」
そういう狸の妖怪も朔の腕を掴んで宙吊りにしてるだけだが、それについて何か言う元気は朔にない。
「さてさて、それじゃちょっとばかし見せてやりますよっと」
男から放たれていた霊力が形を作る。始めに男の周りを包み込み、次にそこから巨大な頭と尻尾が伸びた。かと思うと頭と尻尾が八つに裂けた。
「我が名は八岐大蛇」
霊力が、翠色に染められた。八つの頭と尻尾を持つ、巨大な蛇。八つの頭にはそれぞれ違う色の眼があった。
「世界を喰らう者なり」
ゴバッ‼︎‼︎ と八つの頭から色のない見えない力が放たれた。
力に当たった火の鳥は、まるで空気に溶けるかのように消え去った。レミリアや藍にも直撃しているのだが、まるで苦しくなさそうだ。
あっという間に火の鳥の大群が減っていき、数秒で火の鳥全てが消え去った。
「・・・ま、この程度の干渉なら許容範囲かな」
そう呟く元からは莫大な霊力を感じ取ることができなかった。元は朔の頭を叩いて言う。
「お疲れ様だ津後森朔。できればもうちょっと早く進んで欲しかったんだがな」
「進む?」
朔の疑問に元が答えることはない。元は黙って何処かへ消えた。
そこで朔の意識は、完全に途切れた。




