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月人より作られし物

「うおおおおぉぉぉぉっっ!!?」

 襲いかかって来た火柱を大きく横に飛んで避ける。

ゴウッ! と火柱が朔の目の前でうねり動く。

「な、んだってんだよ!?」

 遠くでさらに数本火柱が立ち、こちらへ飛んでくる。

 その火柱は、突然成長した竹によって防がれた。

「何してんのよ!? 早くこっちに来なさい!」

振り向くと鈴仙が指を奇妙な形にして立っていた。

「くそっ!いったいなんだってん・・・」

「おーおー、兎に兄弟までいやがる」

 ドゴンッ! と音がしたと思ったら鈴仙が勢い良く宙を吹き飛んでいた。

「鈴仙!!」

「そんなに心配しなくてと玉兎は皆頑丈だから平気だっつーの」

 いつの間にか隣に男がいた。ボロボロのマントを見に包んだ夜の色を持つ男はニヤニヤと笑いながら朔を見ている。

「誰だてめぇは」

「そんなに怖い顔をするなよ兄弟。腹違いとも言える物ではあるが同じ感覚で生まれた仲間だろ?」

 兄弟、という言葉か引っかかった。そして腹違い。

「・・・まさか、いや送られてきた情報にはお前の情報はなかったぞ」

「当たり前だ。俺みたいな試作品の試作品みたいな奴の情報があるわけねぇだろうが」

「つーことは、やっぱお前は・・・」

 男は手をひらひらとさせながら朔にこう言ってきた。


「気づいたか。俺はお前ら改良型と違う、八意の作った理論をそのままぶち込まれた失敗作だ」


 朔達は、八意の作った理論を組み込み、改良して作られた物だ。

 その理論がどんな物かは朔は知らない。

 ただ、その理論自体は手を加えなくても十分完成していたのだけは知っていた。

 理論が完成しているなら、実験を、試作品を作っていてもおかしくない。

「いやーさ、苦労したぞ?あいつら人を勝手に攫っておいてコントロールが出来ないとかの理由で地上にぶち落としたんだからな」

 ヘラヘラと乾いた笑みを浮かべながら男は語る。

「ほんと、大変だった。この力をコントロールするのに大陸一つ壊しちまったよ」

 何の悪気もなく、男は語る。

「なんでこんなことをするんだ。俺が何をした?その疑問にあいつら月人はなんて答えたと思う」

 男は空を、その先にあるであろう月を見上げて言う。

「『地上にいること自体が罪』だとよ」

 ぼっ、と男の手のひらに白炎が生まれた。

「その言葉を聞いた時にさ、俺は決めたんだよ」

 ズズズッと炎は形を変え、一振りの剣となった。

「復讐をな!」

 ダンッ! と突然男は地面を足で叩く。

 それを合図に男と朔の周りを爆炎が吹き飛ばした。

「ちぃ!」

 炎の向こう側で誰かが何か言ったが、朔の耳には届かない。

「なあ、お前も一緒に来ないか?」

 男は手を朔に伸ばして言う。

「月人に復讐をするんだ。お前も憎んでるはずだ。一緒に奴らを殺してやろう」

 復讐、それもいいかもしれない。と朔は思った。

「・・・悪くはないな」

「おおそうか!」

 男は本当に嬉しそうな声を出した。ぐいっと手を伸ばしてくる。

 朔はその手に手を伸ばす。


「だが無意味だ」


 その手を、はたき落とした。

「・・・えっ?」

 男は信じられない物を見たという顔をしていた。

 朔は男に向かって、ハッキリと言ってやる。

「お前が復讐の先に幸せが待っていると言うつもりなら、俺はお前に手を貸すよ。だが違うだろ?お前はあいつらを痛めつけることしか考えてないな」

 腰の刀に手を当てる。

「俺はさ、復讐を駄目だと言うつもりはない。復讐して進むこともあるだろうな」

 刀を引き抜き、男に向ける。

「だがお前は違う。お前が復讐しても進むことなんてない。あるのはただの、停滞だ」

 男の顔はいつの間にか、何の感情も篭って無かった。朔は気にせず話続ける。

「お前は悪くないよ。だが正義というわけでもない。ならば止める、止めてやる。そんな意味のない行動は、俺が止めてやる」

「・・・そうか、お前もつまらん奴だな」

 男は白炎の剣を朔に向ける。お互いの武器は、少しでも動けば当たる位置にある。

「・・・とまあ、ここまでが適当。ここからが本音だ」

「あ?」

「本音はな、嫌なんだよ。復讐だのなんだの言って誰かを傷つけるのが。この刀を振るう時の俺の気持ち、お前には理解出来ないだろうよ」

 男は、何かが朔の中で動いてるのを感じた。

「俺はただ、毎日平和に、毎日働いて、少しばかり遊んでいたいだけだ。刀を振るうなんてまっぴらごめんだ」

 その何かを、男は知っていた。その力は、誰かに植え付けられた物ではない。人が持つ力。

「そしてそれ以上に、知り合いが傷ついてるのを見るのがごめんだ」

 危険だと思った。その力は、男を殺せることがわかっていたから。

「だから・・・っ!」

 朔が言い切る前に男は白炎の剣を振るう。

 朔が剣を避けると同時に動いていた力が消え去った。

「・・・もういいだろ。お前は敵だ、それだけで充分だ」

 男は右手を高く振り上げ、叫ぶ。

「我が心の形は全てがひれ伏す剛の剣!」

 右手を中心に黒い霧のような物か集まっていく。

「次元と事象を超えて我が前に現れよ!」

 霧は巨大な剣のような形を作り出していく。

「心意具現!!」

 黒い霧は巨大な剣となり、男は剣を軽々と持ち上げ朔に向ける。

「さあ行くぞ『人間』!人を超えし力を見せてやる!」

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