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塔内部にて

「これ入り口どこ?」

 黒い塔の近くまで来た二人は周りをくるくる回っていた。

「どこにも入り口がないですよ・・・」

 親切設計ではないようだった。

「仕方がありません。こじ開けますので下がってください」

「妙にアクティブだな妖夢」

「それではいかせてもらい・・」

 ゴワッ! と黒い塔から突然巨大な手が現れ、二人を引きずりこもうとする。

「せいっ!」

 妖夢は楼観剣を引き抜き自分を掴んだ手に思いっきり斬撃を与える。しかし斬撃は水でも斬ったかのような感触があるだけで手応えがまるでない。

「んのっ!」

 朔は刀を突き立て、手を思いっきり切り裂く。

 切り裂かれた手は爆散し、朔は解放された。

「妖夢!」

 妖夢は抵抗虚しく塔へと引きずりこまれた。朔は妖夢を追いかけて塔へと突っ込んで行こうとする。

 そこに巨大な炎が飛んでくる。

「っと!」

 巨大な炎の塊は旋回して朔に向かって突撃してくる。

朔は刀を構え、横一線に叩き斬った

 炎が二つに分かれたが、すぐにくっつき再度朔に突撃する。

「だぁもう面倒な!」

 相手にしてられんと刀を納め、朔は塔へ突っ込んでいく。

 炎は朔が塔へと入るのを見ると、動きを止め、そのまま消えていった。



 黒、黒だ。黒しかないと妖夢は思う。

 光源も何もなく、自分が立ってるのか飛んでるのか、真っ直ぐ動いているのか逆走してるのかも分からない。

 自分でもある半霊が妙に目立っていた。

「早く朔さんの所に行かないと・・・」

 そう呟いたのが合図だったのか、目の前に突然男が現れた。

「何者!」

 楼観剣と白楼剣を抜き構える。男は妖夢を見てニヤリと口を歪ませ、ポツリと呟く。

「天界炎、修羅炎」

 ゴウッ! と男の手に白炎の剣が現れ、青紫の炎が男を包んだ。

「さあ、死合といこうか?半人半・・・」

「っせい!」

 妖夢は男が喋り終える前に斬撃を叩き込む。

 ガンッ! と白楼剣は白炎の剣に受け止められ、ガラ空きとなった男の腹に楼観剣を振るう。

 鮮血が舞う。しかし男は気に留めず妖夢の顔を鷲掴みにする。

「おいおい、人の話は最後まで聞けと教わらなかったか? 地獄炎」

 男と妖夢の身体を橙色の炎が包み込む。男の腹部の傷が消えていく。

「っあ!」

 突然腹部に切られたような痛みを感じた妖夢は必死に目を動かして見ると、腹から血が出ていた。

「な、なんで・・・」

「地獄炎は俺の痛みを吸収し、対象にダメージを返すことが出来る炎だ」

 ニヤリと笑った男は続けて言う。

「更に、こんなのもあるぞ?餓鬼炎」

 男から空色の炎が出て、妖夢へ吸い込まれるように消えていく。

「あっ・・・」



 遠い記憶、まだ祖父である魂魄妖忌がいた頃の記憶。

 幼い妖夢は大きな桜の木、西行妖へ向かっていた。妖忌に呼ばれたのだ。

「いったい、なんだろう・・・」

 桜の木の下に、人影と魂が見えた。

 駆け足気味に妖夢は駆け寄る。

 近づき話しかけようとした途端、変化が訪れた。

 全てが、燃えた。

「・・・え?」

 燃える、というよりは崩れるように景色が黒く染まっていく。

「な、なんです・・・」

疑問を口に出そうとして、『何が疑問なのか』がわからなくなった。

 そもそも、何をしに来た?それより、自分はなんだ?

「・・・あ」

 虚無感、喪失感、自身の存在への疑問、わからなかった。

「わ、たしは、なに?」

 怖い。

 自身か何かわからないことが、さっきまで知っていたことも、何も思い出せないことが、とてつもなく怖かった。

「いやっ」

 頭の中の欠片のような記憶をかき集める。しかしまるで意味などなかった。

「逃げたいか?」

 頭の中に、直接声が響いた。

「だ、れ?」

「恐怖から逃げたいか?」

 恐怖から逃げる。

 その言葉は甘美な響きを持っていて、唯一の救いのように思えた。

「逃げたいです! 怖いのは嫌!」

「ッククク。ならば言え、叫べ! この世の理を超えし、魂の力を呼び起こす言葉を!」

 言葉、何故かは知らないが、何と言えばいいのかが分かった。

「・・・心意具現」

 白色が、黒く染まった。



「妖夢やーい。どこだー?」

 石造りの大きな廊下を朔は一人歩いていた。

 塔へ入ったらいつの間にか廊下に一人立っていたのだ。妖夢は周りにいなくて一人歩き回っていた。

「お?」

 目の前に大きな扉が現れ、その扉の前に一振りの刀が落ちていた。妖夢が持っていた二本の内短い方だ。

「妖夢のか? 中にいるのかね」

 刀を拾い上げてから五メートルはありそうな扉を勢い良く開ける。

 扉の先は大きな広間になっていて、壁には星空が映し出されている。

 その中心に、妖夢がいた。妖夢は右手に自身の刀を、左手に朔の持っている刀と似た物を持っている。半霊がいなかった。

「あ、おい妖夢大丈夫か?」

 妖夢は棒立ちして俯いているため表情がわからない。

 朔は妖夢に近づいて妖夢の顔を覗き込む。

 その眼は、狂気に満ち紅く染まっていた。

「っ!?」

 とっさに後ろに肉体を加速させながら移動する。さっきまで朔の頭があった所を高速で黒い何かが通り過ぎた。

「おい妖夢!?」

「・・・・・」

 妖夢は無言で二本の刀を構える。

「・・・まずい、これは本気でまずい」

 朔は自身の刀とさっき拾った刀を構える。

「さて、本当にどうしよう・・・」



「さあて、見させてもらおうか。No.1『アクセル』」

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