ある種のお約束
起きて最初にやったことは、やっぱり手元にあった刀をいい感じにあった箱の中に入れ、小屋の奥に押し込んだ。『殺す』とか物騒な物を持つ必要はないからだ。
「しっかし身体が痛い」
硬い床で寝たから疲れもとれてない。今日は里に行って布団なんかを買いに行ったほうがいいかもしれない。
そんなことを考えながら朔は小屋を出る。
すると出た瞬間聞きなれない音が聞こえる、カメラだ。
「どうも、射命丸文です」
「・・・・最近妙に強力な妖怪ばかりと会う気がする」
黒いフリルの付いたミニスカートと白いフォーマルな半袖シャツを着た少女が小屋の前にいた。見た目は普通だが天狗だ。
「ちょっと聞きたいことがあるのですが。最近里で人が襲われてるのは知っていますか?」
手帖を片手に文と言った少女は朔にペンを向ける。
「知らん、里には用がある時だけ行くし」
「そして同時に不審人物の情報もありまして、どうもこっちの方へ飛んで行ったようで」
「・・・飛んだってことはそれ人じゃないだろ、博麗の巫女にでも任せればいいだろ」
「それがですねー」
そこで文は一息つき、
「・・・どうも巫女は八雲紫に止められているようです。何でも『こちらで対処する』と言われたらしいですが」
「・・・結局、俺に何の関係が?」
「不審人物とは貴方ではないのか? ということですよ」
「・・・前提条件として俺飛べねぇよ、人間でほいほい飛ぶ奴は限られてるし」
「・・・人間、ねぇ」
何かを言おうとした文はそこで止まった。しかしそれは一瞬ですぐに喋り出す。
「そうですかー、お手数かけました。それでは夜はお気をつけください、『人間』?」
突風が吹き、思わず顔を背ける。風が止んだ時には少女の姿が消えていた。
「・・・何故に疑問形」
疑問を感じつつも家に戻る。
「おーい、妖夢」
朔が家に入り部屋を見る。そこに妖夢はいなかった。
「妖夢?」
他の所を見ていくがどこにも妖夢がいない。朔は不思議に思いつつも「紫さんかな」と考えていた。
そこで、気づいた。
『〜〜♪』
風呂場の方から、鼻歌が聞こえてくる。
「・・・あー」
確認しに風呂場へ向かうと、脱衣所の籠に女性用の服、その隣に替えらしき服と二本の刀が置いてある。
「・・妖夢さんやーい」
『わわっ!? 朔さん!? すいません、お風呂勝手に使わせて頂きました!』
「いや、それはいいんだが」
『いえ! 今あがりますので!』
「ちょちょちょ、ちょっと待て!!」
このままだとまずいと思い、脱衣所から出ようとして。
バギィィッッッ!! と何かが割れる音が頭に直接響く。
「ッッ!?」
バゴンッ! と風呂場から音が響き、扉が開き中から『何か』が飛び出す。
「敵襲!?」
「ったたた・・・勢いをつけすぎたぜ」
「・・・・妖夢、さん?」
『何か』は妖夢だった。ただし『生まれたままの姿』、俗に言う裸で。
「はい? ・・・・あ」
そこで妖夢は自分の格好に気づいたようだ。
「きゃぁぁぁぁ!!」
「俺のせいじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」
ドゴンッ! と破壊音が辺りに響き渡った。
「いやー、悪いな朝飯まで食べさせてもらって」
「・・・なんかもう、不幸というかなんというか」
「いいじゃないか、若き乙女の裸体を見れて」
「よくねえよ見ても面白くもなんともねえよ」
そうなのか?と言いたげな顔をした魔理沙を朔は無視して食器を戻す。この部屋にはテーブルと椅子が四つ、食器棚があるだけになっている。
朔が魔理沙に聞いたところ、魔理沙は不審人物を追いかけてきたらしい。
「そしたら結界が張ってあるもんだから何かあると思って強行突破を仕掛けた結果」
「勢い余って家の壁を盛大に破壊してくれたというわけか」
「片方は私のせいじゃないぜ」
「お前が原因だろうが!」
あの後妖夢が暴れた結果家に大きな穴が二つ空き、風通しが良くなっていた。現在その妖夢は空いた穴に板を張り付けている。
「しかしここに来てないとなるとどこにいるんだ不審人物?」
「少なくとも俺は見てない」
「ふーん・・・ところで話が変わるが」
ちらりと魔理沙は風呂場の方を見て言う。
「なんだって妖夢がいるんだ?」
「紫さん伝いからの頼みだよ。なーんか悩みを聞いてあげてとかあったけど」
「むしろ私たち人間がお悩み相談したい所たがな」
「例えば?」
「最近本を借りることができなくて困ってる、とか」
「まず返すところから始めろ」
魔理沙は椅子から立ち上がり、風呂場の方へ向かいながら言う。
「それじゃあ飯のお礼として妖夢のお悩み相談でもしといてやるから、お前は里にでも行ってろ」




