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悪魔の微笑み 完

「真也ー!」

「うわぁぁぁ!」


 尻の手を外すため、片手を顔から外すとやっぱりあいつの顔が迫ってきた。

 嫌だー! こいつこんなにキモかったっけ。

 俺は迫りくるあいつの顔を見たくなくてギュッと目を瞑った。


「………あれ?」


 意を決して覚悟したのに、いつまでもキスはやってこない。なに、どうしたの。

 パチ、と目を開けるとそこには…


「せ、先生!?」

「まぁくん大丈夫でしたか!?」


 床にはあいつが倒れて……わ、先生スタンガン持ってる。


*******



 伸びたあいつをそのままにするわけにもいかず、とりあえず縛り上げて家の物置に隔離した。

 助けてくれた先生も家に入れて、とりあえずリビングで二人きり。


「先生、あの、どうして…」


 ずっと黙ってる訳にもいかないし俺は先生にそう尋ねた。実際不思議だった。


「うん。それはね…色々理由があるんですけど、まずはごめんなさい。酷い態度取って傷ついたよね」

「え……」

「僕、まぁくんの事嫌いになんかなってないし、ゲイも平気です。」


 あの先生がぺこりと頭を下げて謝った。そのことにも驚きだけど、俺嫌われたわけじゃないってことにさらに仰天。あんな顔されたから嫌われたと思ってた。


「ただね、ちょっとショックだったの。僕……僕ね、まぁくんの事が好きだから、その、恋愛的な意味で」


好き? 好きってソッチの好き?

 え、そりゃ先生に気に入られてるとは思っていたけど、好きってそういう好き?

 俺は思わず目を丸くする。


「あのね、だから僕、まぁくんから話を聞いた時あの人に嫉妬して、すごいムカついて、まぁくんに八つ当たりしちゃったんです。ごめんね」

「………そ、そうだったんですか」

「家に帰って、やっとあれはまずかったなって気付いて、謝りにまぁくんの家まで来たんだ」


 あぁなるほど。家に来たのはそういうわけだったんだ。

 先生に嫌われていなかったって分かると俺は凄いほっとした。凄い嬉しい。これで明日からの仕事もあんし………いやまて、先生俺の事が好きって言ったよね。これじゃあ別の意味で安心できないじゃないか! 仕事も気まずい。


「そしたらあの男がまぁくんに迫ってたから、慌てて護身用のスタンガンで……」

「助かりました。本当に」


 あのままじゃ俺はあいつにキスされていた。

 まぁでも声かけてくれるだけでも動きは止まってキスは免れたと思うから、スタンガンまで過激にやんなくても助かったけどね。

 気分的にはスタンガンのほうがすっきり。


「………あー、まぁくんそれでさ……返事して欲しいな?」

「はい?」

「いや、だから、その、僕はまぁくんの事が好きだから…きゃっ」


 顔を赤く染め、手で顔を覆いながら先生は言う。うわぁ、その動作はないわ。きゃっ、もないわ。


「あー、その…」:


 言葉を苦しつつも、俺は先生の告白を断ろうと考えた……ところでちょっと待てよ?

 よく考えれば俺、先生の事そんなに嫌いじゃないし、良いかもしれない。むしろ嫌われたと思ったら凄いショックだったし、泣いちゃった。今回助けてくれてちょっとカッコいいかもと思った。性格は面倒臭いけど、趣味は結構合うっぽい。美術展は楽しかったし絵の趣味良かった。

 しかも先生は売れっ子で、金もってるから俺のプレモルを飲んだりしない。自分のプレモルを飲むだろう。家事能力はないけど、俺ができるから特に問題はない。それによーく見たら先生綺麗な顔してる。タイプじゃないけど良いかも。

 金があって、顔も良くて、趣味も合う。そんな先生が俺を好きだと言ってる。断っちゃだめでしょ、これは。

 先生の事嫌いじゃないし、きっと付き合ってくうちに好きになれる。てか今大分好きになった。付き合えば仕事は気まずくなることないし、むしろいいことづくし。


「まぁくん?」


 黙りこんだ俺を先生は不安そうな顔で見てくる。なんだか泣きそうにも見えてちょっと可哀想。


「先生」

「な、なぁに?」


 先生の頭に垂れた犬耳が見えた。今まさに先生は俺というご主人様の言葉を待っている犬だ。

 俺はにっこりと微笑みを浮かべた。


「───俺も先生が好きです」

「本当っ!?」


 とたんにピン、と元気になるやつの耳。はっはっは!


「じゃ、じゃあ僕たち恋人だね!」

「えぇ」


 先生はやった、と飛び上がって喜ぶ。

 しまいには激しく振られる尻尾まで見え始めた。


 ───凄く楽しみだ。


 俺は美味しいプレモルと、これから何回でも先生が連れて行ってくれるであろう高級レストランを思い浮かべ、ニヤリと笑った。



end

最後までお付き合いありがとうございました。

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