北高祭を終えて
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現在、九月四日・日曜日。
北高祭三日目の、午後五時前。
三時半の全体解散から時間が経ち、北高祭の片付けも収集がついた頃だ。
夕香と共にお疲れ様でしたを言いに行こうと生徒会室を訪れると、
「あぁ、いいとこに来たな」
「え」「わ」
失礼します、を口にする前に手首を掴まれて中に引き入れられた。
北高祭中スペースをとっていた備品もほぼ元の場所に片付けられ、生徒会室内は、私が初めて足を踏み入れたのと大体同じ広さへと戻っていた。
畳まれて仕舞われていたパイプ椅子も立て直されて、今は、私と夕香を引き入れた滝長副会長以外の生徒会会員の四人――、……いや三人が疲れたように体を背もたれに預けて座っている。
「一本ずつ貰ってくれないか」
生徒会室の扉をきっちりと閉めた滝長副会長が、三本のいちご飴を取り出す。
りんご飴のりんごをいちごに変えたその飴は、北高祭で中谷会長と滝長副会長のクラスが売っていたものだ。差し出された三本は、赤・青・黄色とそれぞれ色が違う。
「あ、いちご飴! 結局買えなかったんだよね」
「どうしたんですか、これ」
礼を言いながら、夕香が黄色を、私が赤を取る。
滝長副会長は困ったように眉を寄せて、
「俺が今日最後の店番役で、『余ったらでいいから、一本買っておいて』って雨里に頼まれてたんだ。雨里は体育館の片付けにかかりっきりで、教室には戻れなかったからな。そしたら思ったよりも余って、結局欲しいやつが持って帰ることになったんだ。けど、ほとんどのクラスメイトは一昨日と昨日もタダで貰ってたから、欲しがるやつがあまり居なくて。店番だった俺が五本貰ったんだ」
「で、その中の二本を、私と芽唯が貰ったの」
矢面さんが自分の黄色のいちご飴を左右に振ってみせた。
その隣の水内さんも、青いそれを小さく持ち上げる。
「残りの二本は、俺も昨日貰ったし、西脇もいらないっていうから、どうしようかと思ってたところだったんだ。丁度良かった。押し付けるようで悪いが、貰ってくれ」
「このミクちゃんが、いちご飴なんて可愛いモノは恥ずかしいからって貰わないから」
「誰がそんなこと言った、俺も昨日貰ったつっただろうが。あとその腹立つ呼び方を止めろってんだ、漢字も読めねぇのかお前は」
「やっだーぁ。読めるからこそからかってるんじゃないのよぅ、ヨシヒサくん?」
始まったいつものやりとりに苦笑しながら、私と夕香は再び礼を言った。
「生徒会長さんは、寝ちゃったんですか?」
机に突っ伏して動かない中谷会長に、夕香が首を傾げる。
滝長副会長が答えようとして口を開き、それより先に、のそのそと動き出した本人が答えた。
「ん、起きてるよ。っていうか、今、起きた」
くわぁーっと大きく欠伸をした後、中谷会長が笑った。
三日間の大行事に疲れているのか、それともただ単に起きぬけだからなのか。
それはいつものニッとした笑顔ではなく、へにゃっとしたような笑みだった。




