「ただの」
今回いつにもまして短いです。
定価の七割の代金を中谷会長に手渡しながら、私は尋ねる。
「バイトしてるんですね、中谷会長。『BLACK D●T』で」
「休日だけ。部活動には入ってないしね」
「生徒会って忙しいんじゃないですか? ましてや、会長なのに」
「周りが優秀だから、俺はそれほどでもないかなー。中でも特に副会長は真面目によく働いてくれてるからね、大助かりだよ」
というか。
「禁止されてはないけど、アルバイトって認証状が要りますよね」
――持ってるんですか?
言葉に出さない私の追求に、中谷会長は指を一本たて、それを左右に振ってみせた。
「……笠見さん。俺のやってることはね、」
その答えは、ズルいけど、これもいい手だった。
「親戚のお兄さんのお手伝いです。だから、アルバイトじゃないんだよ」
「………。生徒会長なのに」
やられた感が少し悔しくて、聞こえよがしに呟いてやる。
中谷会長があっさり返してくるだろうというのは、薄々と分かっていたんだけど。
「生徒会は、生徒の模範じゃない。ただの代表だよ」
嘯く中谷会長は、笑顔だった。
次回で一部終わりです。