Ep05跳ねるしっぽ ─到着─
続きます
「さあ、行きましょうこいぬ。」
手を差し出し、私の契約モンスターに乗りなさいと一言。
「は、はいっ!!」
そそくさとドラドラになる準備をするこいぬ。
「───……さて、飛んで!! ドラドラ」
───グギャアァア!!!
そうアーテルが声をかけると、咆哮を上げ、その翼でビュンと空へ飛び出した。
2人の目指す所は勿論、アーテルがギルド長を務めるギルド『銀龍騎兵』
アーテルの契約モンスター『ドラドラ』が大きな両翼を羽ばたかせ、飛行の体勢に入る。
サンドタウンの粉塵を巻き上げ、一気に加速。
「ちょちょちょ!! ひゃああああ!! なんて速さ!!!」
「ひひひ。ドラドラの速度爆上げしてるからねー」
こいぬの方へ振り返り少しドヤ顔めいた表情を浮かべる。
「流石……レベ完勢……、パートナーモンスまでレベ完しててスピードステもこんなに速いなんて……。」
「……。」
「あれ? アーテルさん? アーーテルさーん?」
─── カアアァッ。
平気でこんな事を言うくせに、アーテルは照れ屋なのである。
顔を火照らせ、少ない言葉数が更に減り2人の空中散歩に静寂の空気が流れる。
「……おーい、おーい。あれぇ。。アーテルさーん?」
「おほん。話を変えよう。こいぬくん1つ私が気になっている事の質問をいいかね?」
取り乱した態度を咳払いで一掃するアーテル。話を仕切り直し、質問をこいぬへと投げかける。
「は、はい……。へ、大丈夫ですけど」
一瞬の態度の変容に惑わされながらこいぬはきょとんとした顔でそう答える。
「君、戦闘面に注力していると言っていたがもしかして『PVP』好きなタチ?」
ピコン。ピコン。
モフモフなこいぬの獣人耳、いわゆる所の犬耳が『PVP』と言う言葉に激しく反応しピコピコと動き出した。そしてしっぽもフリフリ。
「はいはい、はぁい!!! しますします!! 大好きです!!」
めちゃくちゃ素直な意見。
そしてこの目を煌めかせ、素直に即答する感じ本当に子犬の様だ。
「……やっぱり? それなら良かった。ウチにも1人居るのよ。『PVP』狂いの戦闘狂が──……ね?」
『PVP』『戦闘狂』と言ったふたつのワードを聞くとこいぬの眉がぴくぴくと動く。
「正直ギルドなんて堅苦しい所ぜーんぜんっ、乗り気じゃなかったんですけど、そう言う人が居るならお話は変わります」
「うぉー!! やる気出てきたっ!!」
「あんたねぇ……。そんな正直に。──はは。やっぱり面白い子だね。」
あまりのストレートさにくすくすと優しく笑うアーテル。
そんなこんな、他愛も無い話を続けていると、2人の目的の地である«真理の森グリン・獄林層»
見渡す限りマップに拡がっている鬱蒼とした森、ある一定を進んだ所から黒雲が立ちこめ、邪悪な雰囲気が周りを包む。
そう、ここは高レベルダンジョンへと続くゲート・ポータルが出現している初心者立ち入り禁止レベルの危険地域。
ここに出現する野良モンスターでさえ現レベル最大50付近の39〜45のハイレベルモンスターが現れるそんな地域である。
「ひっ……ひぃ……アーテルさんここってぇ〜……」
「ん?……あぁ、そう言えばこいぬは40レベにはいってないんだっけ。まあでも安心して。『上香封魔水』の瓶ならアイテムボックスに4〜5本持ってるから全部あげるよ。私は必要ないからね」
──……ピコン。
ひゅん。
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◻︎『上香封魔水の小瓶』/×05
・「受け取る」
・「受け取らない」
送り主『アーテル』(フレンドプレイヤー)
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「わ! こんなに!! 良いんですか!!」
「うん。要らないそれ。あげる」
「やった!! これで私の不安もすっきりです! へへ〜」
こいぬはアーテルからアイテムを貰いそれを収納する。
「さ、着いたわ。こいぬここが──私たちのギルド」
「『銀龍騎兵』よ──……。」