第97話 最初からやっている
『良いか今から言うことをよく聞くがよい』
いつにも増して白虎の声が真剣に聞こえる。
『今この神器には神もいなければ道も繋がっておらぬ、そんなものにいくら祈ったところで届くわけもなかろう』
確かにこの剣に宿っている存在は今上の階で戦っている。
それでもこういう神器って呼ばれるものはそういう状態でも繋がりがあるものじゃないのか。
「白虎はなんて?」
「何か今これに祈りを捧げても意味が無いらしい、道が繋がってないとかなんとかで」
「その道ってのはどうすれば繋がるの?」
そうか、漆原さんの言う通り、繋がっていないなら繋げればいいのか。
『繋げ方は知らんのであろう』
そうだ、道の事も知らなかったのに繋げ方など知るわけもない。
そもそも知っていたら最初からやっている。
『正確に言えば今回の場合は、元々あった道が閉ざされているのが原因ゆえ、我が道を通る事でこじ開ければ良い。道が繋がっていさえすれば、あの方があのような暴挙を許すはずも無い』
あの方?
誰の事だろう。
「どうやら道は白虎が繋げられるらしい。早速やって貰えるよう頼んでみる」
漆原さんが少しホッとしたような表情を見せる。
ここまで来て無駄骨になるところだったかもしれないのだから、そうなるのも仕方ないか。
『そう慌てるでない。この道を繋げるのはそう難しくはないが、戻ることは叶わんだろう。だからその前に、しばし話をさせよ』
道を繋げられるのは白虎しかいないのだから、そう言われると話を聞くしかない。
『上の者たちが心配なのはわかる、だがそ奴らの為にも今ここで話を聞く方が間違いなくためになる。一旦座って落ち着くんじゃな』
心の内を見透かされるというか、実際見ているのだろう。
言われるがまま畳の上に腰をおろす。
「どうかしたの源志くん」
急に座った俺を見て、漆原さんが首を傾げる。
俺だってこの状況で目の前にいるやつが急に座ったらそうなるだろう。
「ごめん漆原さん少しだけ時間が必要みたい何だ、申し訳ないけど座って待ってて欲しい」
俺の言葉に頷くとさすがお嬢様というべきか、美しい所作で漆原さんがその場に座る。
あまりに似合いすぎてる、本当に綺麗だな。
『たわけ者めが……』
白虎の呆れた声が聞こえてくる。
いや本当にすいません。
『まぁよい、さて、何から話すべきか』
白虎が何かを思い出すかのように語り始める。
『一応これでもお前には感謝しておる』
何か感謝されるようなことをしただろうか。
『お前が名付けた空のことよ。例えどのように授かった存在であったとしても我が子は我が子、お前が救ってくれたお陰であの子は今も元気にしておる。気には食わぬがお前を母のように慕いじゃれる姿を見れるのもの、お前のお陰とも言えるだろう』
素直にこの感謝を受け取って良いものか。
白虎であれば空を自力で見つけ出して保護することもできただろう。
俺が倒した事で、白虎に向けられるはずだった空の気持ちを俺が受けているのだから。
『あのダンジョンの中では、いつかあ奴らに連れ去られておっただろう。お前だから助けられたのだ、そこは誇るが良い。それにあのクズ共への復讐の機会まで貰えたのだ。感謝することさえあれどもう恨んではおらん』
もうって事は最初は恨んでたのか。
いやそりゃ自分を倒した相手ならば当然か。
『それは違うぞ。ダンジョン内では弱肉強食、己の弱さを恨むことはあれど、正々堂々と戦ったものを恨みはせぬ。とはいえ人の醜さを見た後だったゆえ、お前のことも一括りにしていたのは事実だがな』
なるほど、俺としばらく過ごしたことで、誤解が溶けたってことか。
『そろそろこの夢のような時間を終わらせる時が来たと言うだけのこと、お前になら安心して空を預けられる。と!言いたいところだが、お前は弱い。それこそ我が居なくなれば奥の手である魂纏も使えなくなる。それでは到底あの子を守ることは出来ぬだろう』
白虎がいなくなるということはそういうことになるのかな。
だけどそれならそれで少し前までと同じ様に対策を立てて戦えばいい。
『唐突に現れる敵にはそうは言っていられまい、確かにお前は貪欲に知識を蓄え、機転もそれなりに利くが、根本的に力が足りぬ』
それを言われると確かに。
千國のように強力なスキルも無ければ、漆原さんのようなステータスも無い。
ましてや師匠のように圧倒的な力も無い。
天明流も中途半端なまま。
基礎の修行は続けているが全く進歩している気がしない。
『確かに天明流とやらは強力だ。人がモンスターと戦う上で、あれほど有効な戦闘方法も中々無いだろう。だが、お前には向いておらぬ』
天明流が向いてないか。
師匠に言われて、致命的にセンスが無いのはよく分かっている。
だけどそれは努力で何とかできるはずだ。
それに天明流だけが武器じゃない。
光亮さんに学んだ知識や師範に学んだKOZAKURAだってある。
他にもきっとまだ学べることはある。
『いやそういう話ではない、そもそもお前の身体に呼吸があっておらんのだ。お前は@#uf'?……ふむどうやら我から伝える事は出来ぬようだな。であれば、自分のルーツを探るが良い、それでその先に進むことができるだろう』
何だ?白虎は今俺に何を伝えようとしたんだ?
俺の身体に呼吸があってないってどういうことだ?
『それでは暫しの別れだ。何、お前次第だがそう遠くない日にまた会えるであろうよ。あの子を頼む』
「ちょっ!」
引き止めようとした瞬間、掌の魔石から明らかに何かが抜けるような感覚がする。
そして、白虎の声も聞こえなくなった。
『まだ生きておったのか、これは中々愉快な事になっておるなぁ』
「っ!!この声は!?」
読んで頂きありがとうございます!
お待たせしてしまっており本当に申し訳ありません。
何とか続きを書く時間を取ることが出来ましたので、
また、週一更新が出来るように頑張らせてもらいます!




