09.道楽と死は紙一重
こちらの話は、旧09『スーパーハイスペックなお嬢様によるスーパースタイリッシュなグリーンスライム狩り』の内容を改変して投稿させて頂いています。
詳しい内容は活動報告の、『ご報告(絶対に見てください!)』にて記載してありますので、気になる方は読みに行ってください。
『ご報告(絶対に見てください!)』のURL↓
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1908768/blogkey/2679456/
グリーンスライムに顔面陥没をさせられてから数分後。
私はゴブリンを求めて、ただ只管に草原を突き進んでいた。
「クエスト詳細によれば、もうそろそろ出現してもおかしくはないはずだが……」
そう思い、私がギルドで受けたクエストの内容を表示させる。
『初心者向け:フィード草原のゴブリン討伐』の詳細は以下の通りだ。
《クエスト名『初心者向け:フィード草原のゴブリン討伐』 種類:通常クエスト。報酬:2000G。名声度+2。
差出人:始まりの街【イリングフィール】の冒険者ギルド支部。
内容:フィード草原に出現するゴブリンを十匹討伐せよ。
モンスターの出現場所:【イリングフィール】から少し離れた草原。
現在の討伐数:『0/10』。
制限時間:なし。
クエスト達成度:0%、条件未達成。
ゴブリンがドロップしたアイテムは、ギルドの換金所で売却することが出来る。追加報酬なし》
このような初心者向けクエストはギルドで常備されており、制限時間という概念が存在しない。
その為、わざわざパーティを組んで一気にクリアしなくても、ソロで時間を掛けてクリアするという事ができるのだ。
「見かけるプレイヤーの数も多くなってきたな…………おっ、薬草発見」
草原を見渡すと、前方に特徴のある植物を発見した。
周囲に乱雑に生えた雑草とは一線を画す風貌で、何処となくグラフィックも良く見える。
そのまま向かって行き、根元から薬草を引っこ抜いた。
「これで四本目だな。このペースで行けば、帰る頃にはクエストを達成することが出来るだろう」
薬草をインベントリに仕舞い込んで、再び歩みを進める。
実は、ゴブリンのクエスト以外にも薬草の採取クエストを請け負っているのだ。
《クエスト名『薬草を取ってきてくれ!』 種類:通常クエスト。報酬:2500G。信頼度+2。
差出人:道具屋の店主 ベンゼル。
内容:最近、回復ポーション(小)の調合素材が不足していてな……良ければ取ってきてくれないか?
報酬は相場より少し上乗せして出そう、あるだけ取ってきてくれ。
アイテムの出現場所:フィール草原全域でまばらに生えている。
現在の採取数:『4/10』。
制限時間:クエストを受けてから三日以内。
クエスト達成度:40%、条件未達成。
最低採取数は10。それ以上持って行くと、採取数に応じて追加報酬が貰える》
このクエストはギルドで受けたものではなく、フィール草原に出る前に、【イリングフィール】で寄った道具屋で受けたクエストだ。
道具屋で沢山お金を消費したら、店主のベンゼルさんに気に入られてクエストが発生した。
報酬欄にある信頼度というのは、対象であるNPCの好感度みたいなものだろう。詳細はわからないが、上げておいて損はないはずだ。
もしかしたら……アイテムを安く譲ってくれたり、報酬の良いクエストを発行してくれるかもしれない。
「所持金もスカスカだし、丁度良かった……沢山集めてベンゼルさんを喜ばせてやろう」
顔に微かな笑みを浮かべながら、広大な草原を踏みしめて行く。
それから少しして……集めた薬草が七本目に突入した時だった。
私が、グリーンスライムの群れに遭遇したのは。
「おっ、おおおおおおっ!! なんだ、あのグリーンスライムの群れは!? ――いや、多くないかっ!?」
遠目から数えてみると、総数十五匹にも上る巨大な群れであった。
グリーンスライムが群れで行動する処はよく見かけたが、精々三匹ぐらいなものだった。
最大で五匹の群れを見たことがあったが……この群れはその三倍。
まるで、この大草原そのものが意思を持って脈動しているかのように感じる。
「凄まじい迫力だな……ここは動かずにやり過ごすのが賢明な判断だろう」
一匹一匹は弱くとも、初心者にこの数は厳しいだろう。
圧倒的な物量差でフルボッコにされて終わりだ。
「『ヘイトストーチ』ッ!!」
まあ、私は喧嘩を売るが。
「ふ、ふぉぉぉぉおおおおおおおお!? いいぞいいぞ! 凄くプレッシャーを感じるっ!!」
前方でポヨンポヨンと跳ねていた十五匹のグリーンスライムが急停止し、私の方へギュルンと体を向けてきた。
血走った目のグリーンスライムたちから、私に向かって伸びるように赤い光のラインが十五本出現する。
『ヘイトストーチ』は騎士が初期から持っている職業スキルで、「敵のヘイトを上書きし、攻撃の対象をスキル使用者に向けさせる」という効果を持っている。
捕捉人数に制限はなく、リキャストタイムが三十秒という中々に優秀なスキルだ。
しかし、使用者と敵にレベル差があり過ぎたり、味方が敵のヘイトを買いすぎていたりすると失敗する可能性が高いというデメリットを持つ。
この私に向かって伸びている赤い光のラインには、“敵がこの対象にヘイトを向けている”という意味合いが存在している。
つまり私は、グリーンスライムたちの攻撃目標に設定されたのだ。
「ウェェェェルカァァァァァァァァム、フルボッコォォォォォォォォ――――――――ッッッッ!!!!!!」
向かってくるグリーンスライムたちを受け入れるように、両手を大きく開いて見せる。
直後、物凄い土煙を上げてやってきたグリーンスライムたちとかち合った。
「んほぉ!?」
まずは、挨拶代わりの顔面に一発。
グリーンスライムに少量付着した土と、青い草の香りが鼻腔に広がる。
その一撃を機に、大量のグリーンスライムたちからの熱烈なラブコール(物理)が開始された。
バケツを引っ繰り返したような凄まじい勢いで、体中至る箇所に鈍い衝撃が連続して走る。
両足でしっかりと大地を踏みしめているというのに、これでは立っていられるのがやっとだ。
例えるなら、全方向からバスケットボールを全力でぶん投げられる感覚に近いだろうか。
「ごぶっ!? がひゅ、あがっ!? ぐほおっ!?」
ああああああああああああああああああああっ!?!? ンギモチィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!!
視界に表示されているHPバーがゴリゴリと減って行き、遂には赤ゲージまで到達した。
ああっ……なんて、なんて幸せな気分なのだろう。
一生この感覚を味わっていたいとすら思ってしまう……まるで、夢見心地だ。
「――ぼへぇぇぇぇええええええええ!?!?」
止めとばかりに土手っ腹へと全力衝突され、クリティカルが発生する。
私の体は軽々と吹き飛ばされ、大草原の中を凄まじい勢いで転げ回った。
「はあっ……はあっ…………今の、は……最高の、一撃だった……ぞ。――ふっ、ふふふふふふっ。ふふふふふふふふふふふ」
人前では見せられない程に歪み切った笑顔を浮かべながら、母なる大地を背に、澄み切った空を見上げた。
その複雑奇怪な顔を見れば、天から人を見下ろす神ですらドン引きして顔を背けてしまうであろう。
クリティカルによって発生した硬直時間が終了し、地面の上を這いずりながら立ち上がる。
インベントリから回復ポーションを取り出しかけて――辞めた。
「どうやら、回復ポーションを使う暇すら与えてくれないようだな」
インベントリを消し去り、私の周囲を囲い込むように散開したグリーンスライムたちを見る。
じりじりとにじり寄ってきて、少しずつ逃げ道が失われてゆく。
どうやら、私を逃がして返すつもりはないらしい。
「だが、されるがままもここまでだ。……本当はもっと楽しんでいたいが、ゲームのシステム上そういう訳にもいかないのでな」
鞘から剣を抜刀し、グリーンスライムたちに剣の切っ先を向けた。
現在のHPは6。私がグリーンスライムの攻撃によって受けるダメージは2。クリティカルで4。
最高で三回、最低で二回までなら攻撃を耐えられる計算か。
グリーンスライムの数は、依然変わりなく十五。
圧倒的に不利な戦況で、誰がどう見ても勝ち目はない。
ここは諦めて、逃げに徹した方が懸命だろう。
レベル上げなら、もっと少ない数の集団と万全を期して戦った方が良い。
死んでしまっては本末転倒だ。
「…………くくくっ」
だが……何故だろう。
この危機状況を――喜んでしまっている自分が居る。
今までの人生、一度たりとも追い詰められたことがなかったから知り得なかったが……どうやら私は、追い詰められると非常に燃えてくるタチらしい。
「いいな……いいなあ……っ!! この状況、凄く充実していると感じるッ!! ――ハハッ、ハハハハハハハハ!!」
無地のキャンパスに、沢山のペンキをぶちまけられたような気分だった。
いつも感じていた、あの退屈感や虚無感……。
それを全て吹き飛ばしてしまうような、この充実感と期待感……ッ!!
頭の先から足の爪先までの全細胞が、狂おしいほどに悦んでいるのがわかる。
体全身に広がる、この凄まじいまでの高揚感……胸が高鳴って仕方がない。
「掛かって来いよ、ゼラチン共」
求めている。
肉体が、精神が、本能が――
「私は、簡単にやられてやるような――安い獲物ではないぞッ!!」
――闘争を、求めている。
やっぱり、こっちの方がアーネストさんっぽくて良いね。
満足。
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