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08.変 態 襲 来

本日のおまけ話は超豪華三段構えです。

楽しんでいってください!

「えっと……アーネスト、様?」

「どうした?」

「その、本当にこちらの商品をお売りになさるつもりですか?」

「そのつもりだが……やはり、これ(・・)は買い取ってもらえないのだろうか」

「いっ、いえ! そういう訳ではないのですが…………本当に、売ってしまって大丈夫(・・・)ですか?」

「ああ、全く問題ない」

「わっ、わかりました。それでは、しばらくその場でお待ちください」


 そう言って受付嬢は、そそくさと奥へ引っ込んでいった。

 ここは、ギルド内の受付カウンター前だ。

 受付カウンターには換金所の役割もあり、モンスターがドロップした素材や、不要になったアイテムなどを売ってお金に換えることが出来る。

 私もその例に漏れず、“とある物”を売却しに来たわけだが――


「まさかこんな状況で放置プレイを強要するとは……あの受付嬢、中々のやり手だな」


 羞恥心に身を震わせながら、受付嬢の帰りを待つ。

 ……何故かって? そんなの、現在進行形でギルド中の視線を一身に集めているからに決まってるじゃないか。

 欲求不満な雄共はチラチラと私のことを窃視し、同性である雌共は私へと軽蔑の眼差しを浴びせてくる。


「くっ、ふぅ…………へっ、平常心を、平常心を保たねば……っ!」


 至る所から、信じられないようなモノを見る目を向けられているこの状況。

 新たにギルドにやってきた者は、必ず私のことを二度見し……見なかったフリして通り過ぎていく。

 その度にゾクゾクとした感覚が体中を這いずり回って、気が狂いそうなほどに喜びの感情が湧き上がってくるのだ。


「たっ、たまらん……こんなことなら、もっと早くからやっておくべきだった……ッ!」


 全く理に適っていないような、理不尽な目に遭わされているわけではない。

 というか、こんな人前で――全裸(インナー)姿であることの方がおかしいのだ。

 むしろ、彼ら彼女らが最大の被害者と言っても良いだろう。

 アーネストという名の、変態プレイヤー(最も理不尽な存在)がこんな処で突っ立っているのだから。


「お待たせしました! こちら、防具一式の売却金額となります!」

「無理を言って買い取ってもらってすまないな。助かった」

「いっ、いえいえ! 滅相もございませんっ! 単純に前例が無かっただけですから……」


 ハハハと愛想笑いを浮かべて、私から若干視線を逸らす受付嬢。

 ぐっ、良いボディーブロー(精神攻撃)だ! とても受け止めがいがあるッ!!


「あっ、ありがとうございました~」


 受付嬢の声を背中に浴びながら、ギルド内に併設された酒場の方へと歩いていく。

 本当はもっと快感を与えて欲しいところだったが、先に受付嬢の方が参ってしまうだろう。

 若干の名残惜しさを抱えながら、近くにあった酒場の椅子に腰かけるのだった。


「装備一つで1,500ゴールドだから、剣を除いた五部位で計7,500ゴールドか。特典分を合わせれば一万ゴールドは超えたな」


 装備を売っぱらったのは、インベントリにあっても邪魔なだけだからという単純な理由だ。

 これだけあれば、戦闘に役立つアイテムが沢山購入できることだろう。


「しかし、まあ――防具があったら受けるダメージが減る、というのは完全に盲点だった」


 未だに感じる視線に小さく身を震わせながら、どうしてこうなったのかを一人ごちる。

 あの後、悩んでも答えが出なかった為、近くにいた訓練官に相談したのだが……。

 

『馬鹿野郎ッ! 防具を脱ぐ奴があるか!! 身を守るものが無ければ、すぐに死んでしまうぞ!?』

『身を、守る……? ――ハッ、そうだ! 考えてみれば、防具があったら受ける痛みが減るじゃないか!?』

『ああ、その通りだ。防具が無けりゃ、受けるダメージ量が増える。だから、防具を脱ぐなんて馬鹿な考えは――』

『ええい、忌々しいっ!! こんなものがあっては、本末転倒ではないかッ!!』

『――は? あっ、ちょっ!? 嬢ちゃん、一体何を』

《…………全装備を、一斉解除します。よろしいですか? YES/NO》

『こんなものぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』


 ――パァンッ!!


『――うっ、うわぁぁぁぁああああああああ!? 変態だぁぁぁぁああああああああああ!?!?』


 という事があって訓練所を出禁にされてしまったが、まあ大した問題でもないだろう。

 より大きな発見があったのだから、実質プラスと言っても過言ではない。


「あの訓練官も中々のやり手だったな……」


 公共の場で痴女だの何だのと罵られるのは、とても、こう……クるものがあった。ふふふっ。

 大切なことを思い出させてくれただけでなく、新しい扉も開かせてくれるなんて……あの訓練官には、感謝してもし切れないな。


「さて、ここでやることは全部やったはずだ……となると、次はいよいよ――」


 これから先、起こるであろうことを妄想して口元を大きく歪める。

 そして、胸前に持ってきた右手を強く握り締めた。


「――ゴブリン狩りだっ!」


 ◇


 フィード草原。

 初心者推奨フィールドであり、全てのプレイヤーが必ず最初に踏み入れる戦闘推奨フィールドである。

 ここに出現するモンスターはどれも低レベルであり、行動パターンが単調な為、VRMMORPG初心者でも敵を倒しやすく設定されている。

 障害物も少ないのでモンスターからの奇襲を受ける心配はないし、状態異常攻撃をしてくるような、倒すのにテクニックが必要になってくるモンスターは出現しない。

 フィールドボスも存在していないため、ここでは、初心者は安定した狩りを行うことが出来るのだ。


「城壁に守られた街から一歩外に踏み出れば、そこは限りなく続く大自然の中……なんて、ロマン溢れる世界なんだ」


 爽やかな空気に、青々とした緑。

 風が吹くと、草花が一面ささやくように白波立つ。

 鳥たちは快晴の海を渡り、その下を冒険者たちが漫歩く。

 その幻想的な光景は、私の心を大きく震わせた。


「素晴らしい景色だな」


 始まりの街である【イリングフィール】は、このフィード草原の中に立地している。

 つまり……正門から一歩でも外に踏み出せば、そこには悠久に続くこの大草原が広がっているのだ。

 

「すぅぅぅぅぅぅぅ――――っ」


 澄み切った大自然の空気を、鼻から大量に吸引する。

 取り込んだ空気が肺の表面積を大きく押し広げ、体全身へと新鮮な酸素を供給していくのがわかる。

 私は突如、カッと目を見開いて――


「空気が、うまァ――――――――――――いッッッッ!!!!」


 ――盛大な感想を叫び放った。


「空気が美味いっ! 動きやすいっ! ――心が躍るッ!!」


 全力で大自然の中を駆け抜け、全身全霊を持ってこの森羅万象を受け止める。

 素晴らしい……素晴らしいっ――素晴らしいッ!!


「ハハハハハハッ、ハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」


 この気持ちを全身で表したい。この大自然を全身で感じ取りたい。この世界を全身で――遊び尽くしたいッ!!

 私によそ見してたプレイヤーが死んだが、そんなこと知るか!! 自業自得だ、バァ――――――――――カッ!!!!


「ハハハハハハッ、ハハハハッ……ハハッ、ハハ――ぜえっ、ぜえっ」


 急激なスタミナの減少を感じ、私はその場に勢いよく倒れ込んだ。

 巨乳が良い感じにクッションになってくれたお陰で、対して衝撃は感じなかったのが幸いだ。

 流石の一言である。


「しまったな。ここは訓練所ではないのだから、STM(スタミナ)がちゃんと減少するんだった……」


 数秒その状態で待機していると、STM(スタミナ)の数値が全快した。

 体に付着した土埃を払いながら、ゆっくりと立ち上がる。

 次からはペース配分に気を付けなければな……。


「門が少し小さく見える……全裸(インナー)姿というのもあるだろうが、STM(スタミナ)20でも結構な距離を走れるのだな…………ん?」


 ボヨン、ボヨン


 来た方角へ視線を向けていると、私のすぐ近くで変な効果音が鳴った。

 勿論、私の胸が弾んだ音ではない。


「……なっ、お前は!? ――ミドリくん、ミドリくんじゃないかっ!!」


 音のした方向に視線を向けてみると、そこには――グリーンスライムが居た。

 グリーンスライムとは、この世界に存在する最弱のモンスターであり、このゲームのマスコットキャラクターとしても有名だ。

 公式が出している4コマ漫画「あいでぃーる・おんらいん!」に主要キャラクターとして登場し、愛称は「ミドリくん」という。

 当然その漫画を私も愛読しており、ミドリくんは私の中で一番の推しキャラだった。


「おっ、おおおおお……凄い、本物だ。本物のミドリくんだ」


 しゃがみこんで、ミドリくんに顔を近づける。

 ぷるんと弾力のある感触に、まん丸としたボディ。

 優しい緑色に、保護欲を掻き立てるつぶらな瞳。

 この、ポンポンと跳ねて移動する姿が非常に可愛らしい。


「はあっ、はあっ……かっ、可愛いなあ。可愛いなあ、ミドリく――」


 ミドリくんに手を伸ばしかけた、その時だった。

 私の視界一面が緑一色に染まったのは。


「――そげぶっ!?」


 凄まじい衝撃が顔面に走り、私はその場に倒れ込んだ。

 頭の上で星がぐるぐると回っていて、体が思うように動かせない。

 スタン状態だ。

 発動すると一定時間、体が硬直して動かなくなってしまう。

 思いがけない一撃や、スタン値が一定以上溜まるとこの現象は発動するそうだ。

 今回の場合は、間違いなく前者であろう。

 スタンの継続時間が切れたので、硬い地面から体を起こす。

 ミドリくんの姿はなくなっていた。


 サァァァァァァァァ――。


 揺れる草木の音しか聞こえなくなった草原。

 この拒絶とも取れる反応をされて、彼女は――


「ふっ、ふふふふふふ…………不意打ちとは、わかってるじゃないか……ッ!!」


 ――頬を赤らめ、異常なまでに口元を歪ませていた。

A(アーネストさん)M(マジ)Aアーネストさん


・あいでぃーる・おんらいん!

公式が連載している4コマ漫画のスピンオフ作品。

新米吟遊詩人である「リオン・オーベール」が、グリーンスライムの相棒「ミドリくん」と共に世界中の街を渡り歩く物語。

【アイディール・オンライン】の世界観や、NPCから見たPCの印象などが軽快なコメディタッチで描かれる内容となっている。

明かされなかった裏設定やゲーム内で役に立つ知識がてんこ盛りな為、初心者は必読だぞ!

ちなみに、運が良ければゲーム内でリオンちゃんに出会える可能性がある。


・BGM機能

【アイディール・オンライン】をプレイ中、何処からともなくBGMが聞こえてくる……そんな事って、ありませんか?

実はそれ、BGM設定がONになっているからなんですよ。

各フィールドに専用のBGMが無数に存在しており、プレイヤーからの評価は非常に高い。

デフォルトでONに設定されているが、詳細設定の方からON/OFFの切り替えが可能。

康葉ちゃんも当然ONに設定しており、この機能は、彼女の感情を高揚させる要因の一端を担っている。

……ゑ? その割には描写がないじゃないかって? HAHAHA。それは多分飛ばして読んじゃったんだよ、うん。そうに決まってる。

(後から生えてきた設定だから描写が無くて当然だとか、そんなこと口が裂けても言えない)


・グリーンスライム大解剖


挿絵(By みてみん)


頑張りました。みんな褒めて。


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― 新着の感想 ―
[一言] 性癖ど直球な設定でびっくりです。R-18はどっかにないんですか?
[一言] なんて勢いだ… シャンフロという名の変態の座を脅かす変態が現れるとは… 主人公の変態度で言うならば、カカロット…お前がナンバーワンだ…!
[一言] ノクターンに投稿まだですかね?←
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