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魔女的エクアージュ~失恋した腹いせに世界を破滅させる物語~  作者: ゆいレギナ
四幕 貧乏疾走

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閑話休題③ バトンは入院生活の暇つぶし

平成29年4月にキャラクターバトンがTwitter友達から回って来たため、遊んでみました。


ルキノ入院生活中の小噺です。




 ルキノ入院生活十四日目。

 脱走したことに医師が激怒した結果、面談謝絶になった。

 それ以来、飲食すら禁止されたルキノは、ただただ寝ているしかなかったのだ。

 

 今まで、こんなにも時間の流れを緩慢に感じることはなかった。

 人生初めての、のんびりした時間。

 それを満喫するのは、三日もあれば十分だった。


「ルーキノ君、今日もしっかり怠惰してたかい?」


 面談謝絶にあるにもかかわらず、赤毛のガールフレンドは今日も元気にやってくる。

 窓からの日差しがオレンジになる頃、毎日ルキノの病室にやってくる彼女は、どんなに話の途中だろうと夜の点滴交換の時間になると帰っていく。


 五日目くらいにルキノは聞いてみたことがある。


「話はまだ途中だろう。どうして、点滴交換になると帰るんだい?」

「だって、今は点滴がルキノ君のごはんでしょう? あたし、ルキノ君なんかとごはん食べたくないもん」

「……なんて可愛い彼女だろうね」


 身体が満足に動くのならば、満面の笑みを浮かべる彼女に全力の拳をプレゼントしたいと思うルキノだった。


 それはさておき、今日も彼女は当然とばかりにベッド横の丸椅子に腰をかけては、


「それで、今日のユイはね――」


 とあるクラスメイトについて語り出す。


 ルキノは挨拶もよそに、嘆息した。


「君は相変わらず懲りないね」

「え? だって、ユイに逢えなくて、ルキノ君寂しいでしょ?」


 あたしは親切で話してあげてるのと言わんばかりの表情に、ルキノは項垂れるしかなかった。

 額を手で押さえる動作だけでも、筋が千切れそうに痛む。


「ルキノ君も演技派だねぇ! 本当は嬉しいの我慢して、痛い中ウンザリする演技、しなくてもよくない?」

「……もっと褒めてくれてもいいんだよ?」

「うん、遠慮しておくー」


 嬉しそうにそう言っては、彼女は小型通信機(モバイル)を取り出した。


「今日はねー、暇で退屈で死にそうなルキノ君に、面白いものを持ってきてあげたのー」


 画面を操作するメグを、ルキノは半眼で見やる。

 相手にしたくはないが、彼女の相手をするしかすることはない。


 ――なんて地獄だ。


 二度とこんな大怪我はしないと心に決めていると、メグが画面を向けてきた。


「アナタとアタシの相性診断っ! これでね、お昼休みみんなで遊んでたんだぁ」

「興味ないね」


 ルキノは即答する。

 しかし、メグは笑みを崩さず、


「これには、ユイのデータが入ってます!」


 そう言う。

 

 ルキノは、固唾を呑んだ。

 その喉ぼとけの動きを、メグはニヤリと確認する。


「それじゃあ、ルキノ君の診断始めますっ!」

「僕に拒否権はないの!?」


 胸の痛みを堪えて発したルキノ空しく、メグは喜々と開始ボタンを押したのだ。



【1、自己紹介】



「自己紹介って今更じゃない?」


 ルキノの疑問に、メグは首を傾げる。


「そういえば、ルキノ君の苗字って何なの? あたしはブライアンだけど」

「知ってるよ。エクアで苗字を名乗る学生だなんて、よほどの名のある家系か馬鹿くらいだろう。そんなものに頼るような奴、この資本主義じゃ生きていけないよ」


 嘆息交じりに言いのけるルキノに、メグはくつくつと笑った。


「それでも、せっかくの機会だしさ?」

「それじゃあ――」


 ルキノはコホンと咳払いして、声を張り上げた。


「僕の名前はルキノ=オスカー!  世界で一番のあのオスカー銀行の御曹司さ! 最近興味あることはピタゴラスイッチ。みんなに言いたいことと言えば、この僕の栄光を恥ずかしがらずに讃えていいのだよ! ということだねっ」


 一息に言い切ったルキノを、メグは肩眉をひそめていた。


「そういえば、アンドレと会ったことあるんだっけ?」

「あぁ。一つ学年下の、アンドレ=オスカー君だろ? 噂によれば、幼馴染らしいじゃないか。もしかして、婚約者というのも――」

「ネタバレ禁止っ!」


 ――君こそ禁句を言ってるんじゃないよ!


 そう言い返したくても、口を塞いでくる彼女の手をはがせるわけもないルキノだった。

 先日、暇つぶしに腕相撲してみたところ、怪我しているとはいえ、ルキノは一秒と耐えられなかったのだから。


 

【2、好きなタイプ】



 ルキノが答えるよりも早く、メグが手を上げる。


「一見冷たくて他人に興味なさそうなんだけど、実は誰よりもウブで素直で優しい子!」

「……君が答えてどうするんだい。まぁ、そういうコを嫌いな男も少ないと思うけど」

「じゃあ、ルキノ君ならではのこだわりを述べるなら?」


 訊かれて、ルキノは飾られた花瓶の花を見た。

 ピンクの鮮やかな花は、メグが持ってきたものだ。


「こういった女のコらしいのが、恥ずかしくて選べないようなコかな」

「それ、あたしに対して言ってる?」

「さぁ、どうだろうね」


 ルキノは鼻で笑い返す。



【3、自分の好きなところ】



 ルキノは即答した。


「顔」

「自分で言うんだ?」


 あきれ顔を向けてくるメグに、ルキノは真顔で答える。


「人は見た目が九割とも言うだろう? 見た目がよくて、得をすることはあっても、損をすることはないよ」

「……否定したくても、しにくいのが嫌な世の中だと思うの」


 ――まぁ、彼女も僕の顔が好きみたいだしね。


 実習の夜の彼女との会話を思い出して、ルキノは思わず目を細める。

 メグはそんなルキノを見て、首を傾げた。



【4、直したいところ】



「女を見る目が、我ながらなかったと思う」

「それ、彼女の前で言う?」



【5、何フェチ?】



 ルキノは視線を上げた。


「考えたことがないねぇ……」

「そうなの? 胸とか、おしりとか……そういう譲れないものが男の子にはあるんじゃないの?」

「しいていえば……脚かな。すらっとした白い脚は、綺麗だと思うよ」

「ユイって美脚だよね」

「どうして彼女の名前が出てくるかな?」


 メグはにこにこと笑って、答えない。



【6、マイブーム】



「いかにナナシ先生を貶めるか、常に考えている」

「嫌われてるもんね、ルキノ君」

「あぁ。でも、一向にいい案が思いつかないんだ」

「うん。たまには無駄な努力というものも必要だと思うよ。人生にはさ」


 ルキノは退院後を思い、嘆息するしかなかった。



【7、好きな事】


 

「スイーツの食べ歩き」

「え、意外!?」


 予想外のことを言うルキノに、メグが素直に驚きの声を上げる。


「あぁ。毎年お中元を贈る相手がいてね。隠れた逸品を送って僕の株をあげるのが主な目的なんだけど」

「……どんな大株主なのかな、その相手は」

「それは秘密」


 ――将来、結婚する時のことを見越して今から媚を売っているなんて、口が裂けても言えるわけないだろ。



【8、嫌いな事】



「腹黒い女のコの相手」

「わーい、ルキノ君が可愛すぎて、あたしますますイジメたくなっちゃうー」



9、読者に一言



 ルキノは首を傾げた。


「読者? これは相性診断ではないのか? というか、今までの質問のどこに心理診断的要素があったんだ?」

「あったでしょー、ルキノくんがいかにユイのこと好きかが滲み出すぎて鬱陶しいくらいに!」


 ――僕の心の中、読めてるんじゃないだろうな。


「それは秘密」


 可愛くウインクするメグに、ルキノは今までで一番のため息を吐いた。


 ――僕が幸せになれる日って、ちゃんと来るのかな。


「ルキノ君よりも、ユイが幸せになれるのか心配している人の方が多いと思うよ」

「……僕はもう、何も言わない」



10、次を指名する



「もう、嫌だ! 僕は病人なんだ。今日のところは帰ってくれっ! やりたいやつは勝手にやってろ」


 ベッドに潜ったルキノを、メグがわしゃわしゃと揺らす。


「えー、ちょっとー。ユイとの相性結果聞きたくないのー!?」


 それに、ルキノは少しだけ顔を出した。


「別にいい。相性がどうであれ、僕がやるべきことに変わらないからね」

「あーもう、カッコいいこと言って拗ねないでよぉー」


 ぷくーっと頬を膨らますメグだったが、すぐに口角を上げた。


「……あたしはね、二人とも幸せになって欲しいなって思うよ」

「どの口が言うんだか」

「それも……そうなんだけどさ」


 メグは少しだけ目を伏せる。


「悪者は、あたし一人でいいからさ」


 ルキノは強く嘆息をして、手を伸ばす。

 そして、布団にもぐったまま、小さな彼女の頭をポンポンと叩いた。





これ作成時間があれば、普通に更新できたのになぁと後悔したのも、

いい思い出です。

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