表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜魔玉  作者: 鈴神楽
2/14

エジプトのピラミッドに眠る、王の寝息

エジプトのピラミッド探索。若干、推理物っぽいです

 エジプトの砂漠を進む、四駆のワゴン。

「疲れたら代わりますよ」

 較が、風太に言う。

「免許を持ってるのか?」

「偽造で良かったら」

 較の答えに、風太が大きく溜息を吐いて言う。

「止めてくれ。俺は、これでも犯罪行為の助長は、しないことにしているんだ」

「ヤヤって運転上手だぞ」

 良美の言葉に優子が驚く。

「白風さんが運転した車に乗ったことあるんですか?」

 良美が大きく頷く。

「車だけじゃ無いぞ。飛行機からヘリコプター、潜水艦なんて言うのもあったな」

 智代が感心する。

「ヤヤって何でも運転できるんだ」

 較が頷く。

「一応、一時間もマニュアル見れば、大抵は、操縦する自信があるよ」

 エアーナが嫌そうな顔をする。

「思いっきりのマニュアルだけのパイロットじゃないですか! それでよく落ちませんでしたね?」

 良美は指を折って何かを数え始める。

「何を数えているんだ」

 雷華が尋ねると良美が数え終えて言う。

「墜落等の回数。ざっと八回だな」

 元同級生の視線が較に集まる。

「誤解が無いように言っておくけど、半分は、敵からの攻撃だよ」

 風太が呆れた顔をして言う。

「一回でもある時点で問題なんだよ。助かる自信があるからって無茶をするな!」

 そんな中、小較が言う。

「次の竜魔玉って、ピラミッドにあるって間違い無いよね?」

 較が頬をかきながら言う。

「そこが問題なの。確かに、異常な力を感知して、それが竜魔玉に近い波動を感知したらしいんだけど、ピラミッド自体が魔法儀式装置だから、勘違いの可能性もあるんだよね」

 驚く智代。

「それじゃ、ピラミッドパワーって本当なんだ?」

 以外の事にエアーナが頷く。

「そうですよ。あたしの知り合いにピラミッドを研究している博士が居るんですけど、確かに様々な効果があるみたいです」

 雷華が感心する。

「日本以外にもピラミッドを研究するなんて暇人がいるもんなんだな」

 優子が首を振る。

「どちらかと言うと、日本の方がそういった文化的な研究には、正当な評価がもらえていませんよ」

 そんな一行の目の前で土煙が立ち上る。

「何だ!」

 較が目を閉じて気配を探り答える。

「どうやら、ビンゴみたい。竜魔玉の力でスフィンクスが動き出したみたい」

「何か面白そうな展開だな」

 良美が楽しそうな声を上げている間に、人々を襲うスフィンクスが視界に入る。

 較が素早くワゴンの天井に出て言う。

「取り敢えず、あちきが倒してくる」

 そのまま、ワゴンの天井で助走して、そのまま跳び出す。

 スフィンクスの頭上を取るとそのまま気を籠めた蹴りを放つ。

『バハムートクラッシュホーン』

 一撃で足をもぎ取る。

「大した事無いな」

 良美が呑気に言うが、雷華が訂正する。

「そうでもない。あれは、エネルギー供給がある限り復活する、ゴーレムの類だな」

 その言葉通り、あっさり復活を遂げるスフィンクス。

 較は、困った顔をして言う。

「エネルギーは、間違いなくピラミッドの中から来てるけど、こいつをほっておくことも出来ないから、そっちをお願い。あちきは、こいつの相手をする」

 体を捻り回転させ、竜巻を生み出す較。

『サンドトルネイド』

 砂の竜巻がスフィンクスの視界を塞ぎ、その間に較が接近し、両手からの連撃を放つ。

『ツインテール』

 大穴を空けるとそこに足をつける。

『コカトリステール』

 全身を粉砕されるスフィンクス。

 しかし、即座に再生されていく。

 そんな中、較は、逃げ遅れた一人の男性を見つけて、担ぎ上げると、ワゴンまで戻り、押し込む。

「この人をお願い」

 その男性を見てエアーナが言う。

「ヨシーダ博士!」

 その男性が答える。

『まさか、エアーナちゃんか?』(英語)

『はい。博士は、ここに研究に来て居たのですか?』(英語)

 エアーナの質問にその男性、ヨシーダが答える。

『ようやく、真の王の間が見つけるヒントを手に入れたのだ。しかし、スフィンクスまで復活するとは、予想外だった』(英語)

 その言葉を聞いて頬をかく較。

「ヤヤ、そろそろ、復活するぞ」

 良美の言葉に較は、優子の方を向いて言う。

「答えは、人間。今いえるのは、それだけ。後は、お願いね」

 そのまま較は、再びスフィンクスの破壊に向かう。

「どういう意味?」

 智代の言葉に優子は、少し考えて言う。

「多分、色々あるんだと思うわ。ゆっくり考える。今は、とにかくピラミッドの中に入りましょう」

 その言葉に、ヨシーダが反応する。

『もしかして、ピラミッドに入るのか?』(英語)

 エアーナが答える。

『はい。この中に、あのスフィンクスを動かしている力の源があるみたいなので、それを止めに』(英語)

 ヨシーダは、即答する。

『それは、多分、真の王の間に存在する王の証である、生命の杖だな。私も付いて行こう。ピラミッドの中ならば、私が案内できる』(英語)

 こうして、較がスフィンクスの足止めをしている間にヨシーダを含めて、ピラミッドの中に入っていくことになる一同であった。



『我が心を喰らい、魔を討つ刃を生み出せ、心光刀』

 雷華が心光刀から光の刃を生み出して、ミイラ達を滅ぼしていく。

「こんな化け物が出てくるなんてどうなってるんだ」

 雷華がぼやくと雰囲気を察知したのかヨシーダが答える。

『生命の杖の力が発動しているのだ。その力で、ピラミッドの中の嘗て生がある者達を蘇らせているのだ』(英語)

 それをエアーナが訳して皆に伝えると良美が手を上げる。

「さっきから気になってたんだけど、なんだその生命の杖って?」

 エアーナが代わりに質問するとヨシーダが答える。

『元々、古代エジプトでは、王が復活するものだと考えられていた。その要になるのは、幾つかの神器であるが、その一つが、私の研究で明らかになった、生命の杖だ。世界を現す、生命の樹が具現化された物とも言われるそれは、全ての命を操る力を持つと言われて居る』(英語)

「その手の逸話は、世界中にあって、八刃では、過去情報再生装置の一種と考えてるよ。生きてた時の記録を莫大な力で再現するんだって。効率が物凄く悪いから実用出来る物は、皆無だって聞いたけど」

 小較の解説をエアーナが訳すとヨシーダは、少し驚いた顔をして言う。

『確かに、生命の杖には、膨大な力が必要とされ、その力を長い時間をかけて溜める為の装置がこのピラミッドとも言われて居る』(英語)

「なるほどね。その力でミイラが復活したんだ」

 納得する智代。

 しかし、優子は、不自然さを覚えた。

「何かがおかしい気がするわ」

 単純な良美が言う。

「別に変じゃ無いだろう、竜魔玉がその生命の杖に力を与えて、生命の杖がその力を発揮させ始めたんだから」

 優子が首を横に振る。

「問題は、そこ。誰が何の目的で生命の杖に竜魔玉の力を注いでいるの?」

 智代が少し考えてから言う。

「もしかして、埋葬された王様?」

「それは、無いよ。竜魔玉は、少なくとも今有る欲望の力を吸収する必要があるんだから」

 小較の言葉に、良美が言う。

「取り敢えず、今は、先に進もうよ。考えるのは、実物を見てからでも良いじゃん」

 こうして、再度進み始める一同であった。



 そして、行き詰まった。

『この王の寝室の何処から真の王の間への道があるのは、確かなのだ』(英語)

 ヨシーダの主張の元、調べるが、それらしい手掛かりが無い。

「この先からスフィンクスに力が流れているのは、確かなのに……」

 壁を見ながらの小較の言葉に良美が言う。

「そこまでぶち壊して進め!」

「その方が早いかも……」

 力を溜め始めた小較に慌てて優子が言う。

「小較ちゃん駄目、遺跡には、盗賊避けのトラップがあって、下手をすると生き埋めになっちゃうわよ」

 ヨシーダも小較がやろうとしている事に気付いて言う。

『そうだ、他のピラミッドで機械を使って強引に道を開こうとして生き埋めになった例は、いくつもある』(英語)

「どうしよう?」

 困った顔をする小較。

 そこに智代が笑みを浮かべて言う。

「こんな時の為のあたしでしょうが、導きの指輪よ、その力で、真の王の間への道を示せ!」

 智代が自分の魂を消費して、完璧なる導きを行う指輪の神器を使用する。

 すると、智代の目が虚ろになり、その導きの指輪をした指が、動き、隠し通路を開ける。

「どんなもんだい!」

 胸を張る智代。

『今のは?』(英語)

 ヨシーダが驚いて質問すると、エアーナが説明する。

『彼女の指輪は、神器で、彼女の魂を引き換えに、求める物まで導く力があるんです』(英語)

 その一言に、ヨシーダが智代を見る目の色が変わった。

 しかし、それに気付いたのは、一歩離れた位置に居た優子だった。



 真の王の間につくと生命の杖は、直ぐに見つかった。

 空中に浮かび、常人の目に解る光と言う形で力を放射していたからだ。

 ヨシーダが駆け寄る。

『これこそが、私が長年追い求めていた答えだ!』(英語)

 興奮するヨシーダを尻目に優子達は、竜魔玉を捜す。

「どこにも無いよ」

 首を傾げる小較。

「別件だったんじゃないだろうな?」

 雷華の言葉に小較が首を横に振る。

「ううん。間違いなくあの生命の杖に竜魔玉の力が流れ込んでるよ」

 小較が指差す生命の杖を一同が見る。

 そんな中、風太がヨシーダに声を掛ける。

『すいませんが、このままでは、周りに被害が出るので、どうにかしてあの杖を止めないといけないのですが、力を貸して頂けませんか?』(英語)

 風太は、竜魔玉の探索より、外のスフィンクスを止めることを優先し、そんな質問をした。

 しかし、風太より、大人の筈のヨシーダには、そんな言葉が通じなかった。

『五月蝿い! 私は、今、人生で一番大切な事をしているのだ』(英語)

 頬をかく風太。

 そんな会話を聞いた優子がエアーナに質問する。

「ヨシーダ博士ってどんな人ですか?」

 エアーナが不思議そうな顔をして言う。

「研究に真面目で、人格的にも立派な人ですよ」

 その答えに、優子が呟く。

「答えは、人間ってこの事だったのね」

 優子の意味深な言葉に、視線が集まる。

 そして、優子がヨシーダに近づき言う。

『貴方が手に入れた玉は、危険です。返して下さい』(英語)

 カタコトの英語での言葉にヨシーダが慌てる。

『何の事だ!』(英語)

 優子は、残念そうな顔をしながら言う。

『答えが人間と言う、設問といえば何を連想しますか?』

 周りの人間が首を傾げる中、ヨシーダが答える。

『スフィンクスの問い。しかし、そのスフィンクスは、ギリシャ神話のスフィンクスであって、外にいるスフィンクスとは、関係ない』(英語)

 優子が頷く。

『はい。でも、ここで大切なのは、この設問自体です』(英語)

 二人の会話をエアーナが訳して、皆に伝える。

「なんだ、そのスフィンクスの問いって?」

 良美の質問に小較が答える。

「有名ななぞなぞだよ。確か、朝は、四本、昼は、二本、夜は、三本足の生き物って何?」

「何、その化け物?」

 智代が首を傾げると風太が答える。

「確か、その答えは、人間で、赤ん坊の時は、ハイハイだから四本で、大人になって二本足で歩き、老人になると杖を使うから三本。一日を人の一生に例えた謎々だった。そうか、そういう事か」

 そう呟きながら風太は、優子が何を言いたいのか解った。

「白風さんは、何かで察知していたんですよ、ヨシーダ博士が竜魔玉に欲望を注ぎ込み、生命の杖を活性化させて、この発見を行おうとして居た事を。でも、確信が無かったから、間接的に人が変わる。ヨシーダ博士が、エアーナさんが知っているヨシーダ博士とは、違う可能性があるって言っていたんです」

 雷華が納得する。

「なるほどな。自分で使用する訳でもない生命の杖を無差別に発動させる必要があったのは、その場所を発見するのを目的にした人間だって事だな」

 エアーナが信じられない顔をして言う。

『嘘ですよね? お父さんが、ヨシーダ博士は、立派な人物だって言っていました。研究の為に、スフィンクスを復活させてた上、暴走させたままで平気な顔を出来る人じゃ無い筈です!』(英語)

 ヨシーダは、苦笑した。

『立派だって? そんな私にどれだけの研究費が与えられた。ピラミッドの調査には、莫大な費用がかかる。私は、その費用の調達の為に、馬鹿な連中に必死に頭を下げた。目に見える成果が出ればまだ良い。どれだけ学術的に成果があったとしても奴等が納得出来なければ、散々厭味を言われ、罵倒された。お前みたいな小娘に私の気持ちが解って堪るか! ここの存在を発表すれば、そんな奴等を平伏させられるぞ!』

 悲しそうな顔をするエアーナを抱きしめて風太が言う。

『俺も、大人だ。現実が夢や希望だけじゃ駄目なこと位は、知ってる。だがな、それでも人間として踏み外したらいけない道がある。偶々ヤヤが居たから、スフィンクスによる被害は、少ないがこのままでは、多くの被害が出る。人間としてまともな道を進むつもりが残ってるなら今すぐ竜魔玉を返せ!』(英語)

 ヨシーダは、馬鹿にした顔をして言う。

『何故だ? これさえ有れば、世界中の遺跡の謎を解くことも夢じゃ無い。そうだ、そこの娘の力も中々使えそうじゃないか』(英語)

 智代を便利な道具を見るような目で見るヨシーダ。

 良美が無言で近づき、一瞬の躊躇もせずに正拳を腹に撃ち込む。

 白目を剥いて倒れるヨシーダから竜魔玉をむしりとり言う。

「さっさと戻って、封印しようぜ」

 あからさまにヨシーダを無視する良美。

 他のメンバーもそれに従う。

 ただ、優子だけは、最低限、必要な道具をリュックに詰めて倒れたヨシーダの横に置いてから先に戻っていく良美達の後を追った。



 ピラミッドを出た良美が竜魔玉を掲げて言う。

「ヤヤ、こっちは、回収、終ったぞ!」

 較が頷き、地面を蹴る。

『アントリオン』

 足元の砂が凹み、アリジゴクの巣の様になりスフィンクスを嵌める。

 較も合流して竜魔玉を封印して、小較が持つポシェットに入れる。

「今回も無事に終ったね」

 智代が呑気に背伸びをする中、風太が較に言う。

「ところで、どうしてあの博士が怪しいと思ったんだ?」

 較が肩を竦めながら言う。

「あの人、スフィンクスまで復活するのが予想外って言っていたから。詰り、ここで何か起こっているのが予想通りだったって事になる。そうなると一番考えられるのは、今回の事件に関係しているって事だからね」

「言われてみれば、全部、あいつの思惑通りだったって事だな。結局、あいつの一人勝ちか?」

 雷華が不満気に言うと較が視線を逸らす。

 良美がそれに気付いて言う。

「この後、どうなるんだ? 正直に話すように」

 較は、アリジゴクの巣に挟まるスフィンクスを指差して言う。

「流石に、これは、誤魔化さないといけないから、多分今回の発見って全部揉み消されて、闇から闇。さっきのヨシーダって人の研究もどうがんばっても正式に認められないと思う」

 風太が苦笑いをする。

「手段を選ばなかったつけって奴だな」



 こうして、二つ目の竜魔玉を手に入れた較達であったが、竜魔玉は、欲望を吸収して更に力を増大させていく。

 しかしながら、この一件で竜魔玉の存在がオカルト業界に大きく伝わる事になり、今後の回収を難しくしていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ