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竜魔玉  作者: 鈴神楽
13/14

謎の地下空洞を埋め尽くす、死者の息吹

最後の竜魔玉、それは、誰の手に?

「こんな巨大な地下空洞が実在したんですか」

 驚くエアーナに対して較が頬を掻きながら言う。

「人工衛星の性能が高い今では、こんなスペースでも使わないと秘密裏に大きなことが出来ないんだよね」

 含みがある較の言葉に風太が言う。

「それで、この空洞では、何が行われているんだ?」

 較が困った顔をして言う。

「恐竜の蘇生」

 何処からとも無く聞こえてくる鳴き声に優子が言う。

「八刃は、関わってないんですよね?」

 較が頷く。

「当然です」

 その後ろで智代が小較に尋ねる。

「実際問題は、八刃では、どうなの?」

 小較は、普通に答える。

「八刃では、実験に使うんだって、死んだ龍の蘇生とかを閉鎖空間とか作ってやってますよ」

 風太が遠い目をして言う。

「今回の旅の事を口にする事は、無いだろうな」

 優子とエアーナ、雷華が頷くのであった。

 そんな中、一人の知的な女性が現れる。

「貴女が、白風の次期長、白風較さんですね?」

 その言葉に較が頷く。

「はい。私が較です。それでは、貴女が、ここを管理している、地球蘇生会の人ですか?」

 女性は、頷き、名乗る。

「ヘレン=ラケーと言います。今回は、こんな地下の奥底まで申し訳ありません」

「いえいえ、態々竜魔玉の場所を報告して頂けただけでもあちき達にしてみればありがたいことです」

 較が友好的に話を進めていく。

「ここで立ち話も何ですから歩きながら話をしませんか?」

 ヘレンの提案に較があっさり頷く。

「はい。それで、肝心の竜魔玉ですが、どこにあるのでしょうか?」

 ヘレンは、歩き始めながら言う。

「それは、これから向かう先になります」

 そして、歩きながらヘレンが告げてくる。

「皆さんは、今、地球がどんな状況だと思いますか?」

「どんなって言われても……」

 智代が口篭る中、優子が答える。

「オゾン層が破壊され、温暖化現象で環境が激変している大変な状態だと思います」

 ヘレンが頷く。

「そうなのです。地球は、一般の人々が考えている以上に危機的状況なのです。我々は、そんな地球を救う為に様々な研究をしています。ここもそんな研究施設の一つです」

 小較が手をあげる。

「地球を救うことと恐竜の蘇生がどう繋がるんですか?」

「恐竜の蘇生は、あくまで一例です。私達が望んでいるのは、滅んでしまった生き物を含む全ての生物の蘇生を可能にする事なのです」

 ヘレンの答えに較は、頬を掻くが何も言わない。

 それに気付いたへレンが言う。

「何か気になる事がおありでした、何でも言ってください」

 較が覚悟を決めて言う。

「滅んだ生物を蘇生させるという意味を考えた事がありますか?」

 それを聞いて、ヘレンが言う。

「較さんは、何が言いたいのですか?」

「滅びた生物には、滅びた理由があるって事です。恐竜が今の時代に生き返っても、恐竜が生き残れる世界は、ありません」

 較の答えにヘレンが反論する。

「全ての生物が平和に生き残れない今の世界が間違っていると思いませんか?」

「思いません。今の世界を否定するって事は、弱肉強食のこの世界に適応するために進化し続けた生物の努力を否定する事になりますから」

 較の回答にヘレンが言う。

「ご理解頂けないとは、残念です」

 較が困った顔をするとヘレンが言う。

「約束は、守りますから安心してください」

 それを聞いて頭を下げる較。

「ありがとうございます」

 そんな較に優子が言う。

「少しは、その場の状況を理解して意見したらどう?」

 それに対して良美が言う。

「今のは、言うべきだったと思うぞ」

 較も頷く。

「お互いにしこりを残したくなかったからね」

 そんな中、智代が言う。

「疲れた一休みしよう」

 それを聞いて、ヘレンが言う。

「そうですね。近くに休憩用の小屋がありますからそこで」

 ヘレンに案内されて較達は、休憩を取る事になった。

「あたし、トイレ!」

 小較の言葉にヘレンが立ち上がり言う。

「流石にトイレは、ないですから、外で」

 小較が頷き、ヘレンと外に出て行く。

 そして風太が言う。

「今回の相手は、信用できるのか?」

 較が難しい顔をして言う。

「この業界、信用するほうが間違いだからね。罠にあることを前提で動いているよ」

 それを聞いて、エアーナが言う。

「随分と嫌な業界ですね?」

 良美が頷く。

「そうだよな。正面から意見をぶつけ合えば良いとおもうぞ」

 優子が眉を顰めて言う。

「大人には、色々としがらみがあるんですよ」

 そんな会話をしていた頃、外では、トイレを済ませた小較にヘレンが言う。

「小較ちゃんは、さっきの話をどう思う? 皆が幸せに暮らせる世界にしたくない?」

 小較が少し辛そうに言う。

「あたしには、少し難しいです」

 それを聞いて苦笑するヘレン。

「それじゃあ、全員が笑っていられたら良いと思わない?」

 それを聞いて、小較が頷く。

「うん。そうだったら嬉しいよ」

 そんな会話をしながらヘレンは、小較のポシェットに細工を施すのであった。



「ここが目的地です」

 そこには、無数の恐竜が居た。

「竜魔玉があるのは、ここの中で、私達では、とってくることも出来ませんでした。それで態々ご足労をお願いしたのです」

 ヘレンの言葉に較が周囲の気配を確認してから言う。

「解りました。ここから先は、あちきがやります。皆は、ここで待っててね」

 そういうと較は、平然と恐竜の中に降りていく。

 すると一斉に恐竜が較に襲い掛かる。

『ラフレシア』

 較の呪文を唱えるが、恐竜の動きは、変わらない。

「失敗したの!」

 驚くエアーナ。

「あの技って何だ?」

 良美の質問に小較が不安げに言う。

「確か、相手を眠らせる技だったと思ったけど……」

 雷華が、心光刀を取り出し叫ぶ。

「救援に行った方が良いか!」

 較は、次々に襲ってくる恐竜の攻撃をかわしながら言う。

「大丈夫だし、失敗もしてないよ」

 その言葉に答える様に次々と恐竜が倒れていく。

「どういうこと?」

 智代の言葉に優子が手を叩く。

「そうか、恐竜は、巨大すぎて、技の効果が発揮するまでに時間が掛かったのね」

 納得する一同。

 較は、平然と最後の竜魔玉を回収し、戻ってくる。

「それで、これを使って何をしたかったの?」

 較の言葉にヘレンが言う。

「何の事ですか?」

 較が溜め息を吐いて言う。

「それじゃあ周囲で武器を持って待機している人達は、関係ないって事であちきが壊しますけど良いですね?」

 ヘレンが言う。

「気付いていたのですか?」

 較が頷く。

「あちきは、敵が多いんで、そういう気配を掴むのは、得意なんですよ」

 風太が言う。

「大半が自業自得な気がするぞ」

 較は、敢えて否定しない。

 そして現れる、重武装の集団。

「貴女一人だったら逃げられるでしょうが、貴女のお友達まで護りきれますか?」

 ヘレンの言葉に較は、平然と頷く。

「当然。その自信が無ければ一緒に行動してないよ」

 意外な回答にヘレンが戸惑う。

「冗談は、止めてください。この数の重火器相手では、いくら白風の次期長と言え、対応が追いつく訳がありません」

「もう準備は、終わってますからね」

 較は、手を大きく振る。

『ガルーダ』

 良美達の周りに突風の壁が出来ると同時に倒れていくヘレンの仲間達。

「さっきの技の効果が遅かったのは、相手が恐竜だったからだけじゃなくて、上の人にもゆっくりと効果が現れるようにする為に調整したからなんですよ」

 較の答えにヘレンが愕然としてその場にしゃがみこむ。

「そんな、完璧な計画だったのに!」

 較は、肩をすくませながら良美達の所に戻り、竜魔玉封印した。

 封印した竜魔玉を受け取りポシェットに入れて小較が言う。

「後は、家に戻って本格的な封印を施すだけだね」

 エアーナがしみじみ頷く。

「大変な旅でした」

 雷華も頷く。

「本当だな」

 智代が少し残念そうに言う。

「でも少し楽しかったかな」

 良美がそれに頷き言う。

「もう少し続けるか?」

 そこで優子が手を叩き言う。

「気を引き締めて、まだ完全に終わったわけじゃないのよ」

 そこで風太が言う。

「家に着くまでが修学旅行だって奴だな」

 誰もが安堵の息を吐いていた。

 用心深い較も、ヘレン達が何を目的としていても封印した以上、竜魔玉を利用する事は、出来ないと考えて居た。

 愕然としていたと思っていたヘレンがリモコンのスイッチを押した。

 その瞬間、小較のポシェットが爆発した。

「小較、大丈夫!」

 較が駆け寄るが、小較が驚いた顔をしていたが、普通の様子で答える。

「音で驚いたけど、怪我も無いよ」

 次の瞬間、小較のポシェットの底が抜けて竜魔玉が地面に落ちた。

 そして、導かれるように石版に封印されたのと同じ形に配列された。

『良くぞ、全ての竜魔玉を集めた。汝の願い、世界平和を叶えてやろう』

 その声に誰もが驚く中、高笑いを上げるヘレン。

「やったわ、これで世界は、平和になるのよ」

 事態についていけない優子が呟く。

「どういうこと?」

 較が悔しそうに言う。

「伏兵を含めて全部フェイクだったんだよ。何処で知ったか知らないけど、竜魔玉を集めた時の願いが世界平和だって知っていて、集め終わった後の油断を突いて、竜魔玉を発動させたんだ」

 較は、ポシェットを補修して、竜魔玉を収めてからヘレンに近づく。

「考えたね、殺傷目的だったら爆薬にあちきが気付いていた。でも、この後、どうなるか解ってる?」

 ヘレンが笑顔で答える。

「世界が平和になる。竜魔玉の過去成果から私達は、それが可能であると確信している」

 較が大きなため息をついて言う。

「平和な世界ってどんな世界だと思う?」

 へレンが即答する。

「全ての生物が争わず暮らせる世界よ!」

 較が怒鳴る。

「大馬鹿! そんな夢物語が通るなんてジャングル大帝って漫画の中のパンジャの森だけだよ。何処の世界に動物を襲わないライオンが居る? 植物を食べない象が居る? 植物だって動物に食べられないように進化して、中には、毒を持つものも居るんだよ。生きるって事と争いは、切り離せないんだよ!」

 ここまで来ると較が何か重要な事を言おうとしている事に気付く。

「貴女は、何を言いたいの?」

 その瞬間、空間が歪み、その中から背中に翼を生やした、性別も、表情も無い美形の人間が大量にあらわれるのであった。

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