第35話 ― みんなで旅行の準備!
朝のフォレスト。
窓から差し込む朝日が、店内を柔らかく照らしていた。花子はカウンターの周りを片付け、仁はトリミング道具の点検をしていた。彩香はソファに座り、スマートフォンを確認している。いつもと変わらないフォレストの朝だった。
「今日はいい天気だね」
彩香が窓の外を眺めながら言った。
「そうだね。こんな日はどこかに遊びに行きたくなるね」
花子は片付けを終え、笑顔で答えた。
「今日は実際に遊びに行くじゃない。旅行の準備だけど」
「そうだったね」
花子はスマートフォンのメモを確認した。そこには、沖縄旅行に必要な持ち物がリストアップされていた。旅行の日が近づくにつれて、準備しなければならないものも少しずつ増えていた。
チリン
そのとき、ドアが開き、聞き慣れた声が響いた。
「花子! 彩香!」
「いらっしゃい!」
花子が振り返ると、満面の笑みを浮かべた美咲が入ってきた。その隣には、茶色のふわふわした毛並みのパピヨンが、尻尾を振りながらついてきている。ルルだった。
「咲ちゃん!」
彩香が勢いよく立ち上がった。
「美咲、久しぶり!」
花子も嬉しそうに近づき、美咲の手を取った。
「久しぶり、花子!」
「本当に、元気にしてた?」
「うん。花子も元気だった?」
「もちろん!」
三人はしばらくお互いの顔を見つめ、笑い合った。
「そういえば、私たち三人がこうして集まるのも、かなり久しぶりだよね?」
彩香が言った。
「そうだね。最後に三人で会ったのっていつだったかな?」
美咲が首を傾げた。
「たぶん、去年一緒に誕生日パーティーをしたときじゃない?」
「そうかも、あのときも楽しかったよね!」
花子が笑顔で答えた。
「うん、話が尽きなくて、時間がどれくらい過ぎたのかも分からなかったよね」
「一番たくさん話してたのは彩香だったけどね」
美咲がからかうように言った。
「えっ? 私だった?」
「ふふ、覚えてないふりしてるの?」
「いや、本当にあんまり覚えてないんだけど」
彩香がとぼけたように答えると、花子と美咲は声を上げて笑った。久しぶりに会ったにもかかわらず、三人の会話はまるで昨日も会っていたかのように自然に続いていた。一方、仁は美咲と一緒に入ってきたルルに視線を向けた。
「ルルも久しぶりですね」
仁が腰をかがめると、ルルは尻尾を振りながら近づいてきた。
「ふふ、ルルも仁さんのことを覚えているみたいですね」
美咲が笑いながら言った。
「そうみたいですね」
仁はルルの頭を優しく撫でた。ルルは嬉しそうに、仁の手に頭を擦り寄せた。仁はルルの耳の後ろをそっと撫でる。ルルは気持ちよさそうに目を細め、仁の手に身を任せていた。
「仁さん、その後お変わりありませんでしたか?」
美咲が尋ねた。
「はい、元気にしていました。美咲さんもお元気でしたか?」
「はい、私も元気でした。あっ、それから彩香が沖縄旅行に当選したって聞いて、本当に驚きました」
美咲は彩香の方を向いた。
「私もまだ信じられないよ!」
彩香が笑顔で答えた。
「まさか特賞に当たるなんて思わなかったもん」
「本当にすごいよね。おかげで私も沖縄に行けることになったし」
「ルルも一緒に行けるからよかったよね?」
彩香がルルを見下ろしながら言った。ルルは何の話をしているのか分からない様子で、首を傾げた。
「もちろん。ルルにとっても初めての旅行だから、楽しみだよ」
美咲はルルを抱き上げて笑った。
「モチも一緒に行けるので、楽しみですね」
花子が言った。
「モチも旅行に行くのは初めてだよね?」
美咲が尋ねた。
「うん、だから少し心配でもあるの、慣れない場所でちゃんと過ごせるか分からないから」
「それは事前に準備しておけば大丈夫じゃないかな?」
美咲が言った。
「普段使っているものも持っていって、移動するときに必要なものも用意しておけばいいと思うよ」
「そうだね、今日はそういうものも確認するつもりなの」
花子はスマートフォンのメモを開いて見せた。
「旅行の準備リストだよ」
「おお、もうまとめてあるんだね」
彩香がメモを覗き込んだ。
「思ったより準備するものが多いね」
「人が使うものだけじゃなくて、モチとルルが使うものも用意しないといけないからね」
「そうだね、ワンちゃんたちの持ち物も忘れないようにしないと」
美咲が頷いた。すると、彩香がパンと手を叩いた。
「じゃあ、そろそろ出発しようか! 今日は旅行に必要なものを買いに行く約束だったでしょ?」
「そうだった! うっかり忘れるところだったよ」
花子が笑いながら答えた。
「仁さんも準備はできていますよね?」
「はい」
こうして四人は店の鍵を閉め、ショッピングモールへと向かった。ショッピングモールに到着すると、四人はまず旅行用品の売り場を見て回ることにした。店内には旅行用のバッグや洗面用具、帽子にサングラスなど、さまざまな商品が並んでいた。旅行を控えている人が多いのか、店内はかなり賑わっていた。
「わあ、種類が本当に多いね」
彩香が陳列棚を見回しながら言った。
「まずは必要なものから確認していこう」
美咲がスマートフォンに書き留めていたリストを取り出した。
「水着、着替え、帽子、日焼け止め……それからワンちゃんたちの持ち物も必要だね」
「モチとルルが使うものも別に用意した方がいいですね」
花子が言った。
「犬用の水筒と携帯用のフードボウルもあると便利じゃない?」
彩香が尋ねた。
「うん、普段使っているものも持っていくけど、旅行中は持ち運びやすいものがいいと思う」
美咲が答えた。仁は二人の話を聞きながら、犬用品の陳列棚を眺めていた。
「こんなものもあるんですね」
仁が手に取ったのは、折りたたみ式の携帯用ウォーターボウルだった。
「あっ、それいいね!」
彩香が近づいてきた。
「折りたためば場所も取らないし、旅行のときに便利そう」
「二つくらいあれば十分だと思います」
「じゃあ、モチとルルが一つずつ使えるね」
花子が笑顔で言った。
「色もいろいろあるね。モチは白い毛だから、明るい色を選んだら可愛いかも」
「ルルは茶色の毛だから、少し違う色にしてみようか?」
美咲も並んでいる商品を見比べた。
「二つとも同じデザインで揃えるのもいいと思うよ」
花子の言葉に彩香が頷いた。
「それもいいね。あとで写真を撮ったら可愛くなりそう」
四人は商品を一つずつ比べながら、じっくりと見て回った。仁は折りたたんだときの大きさや、広げたときの安定性を確認し、美咲はルルが普段使っているものに近い商品を探していた。花子はモチに合いそうなものを見て回り、彩香は二匹が一緒に使えるデザインを選んでいた。
「これはどう?」
彩香が小さな水筒を手に取って見せた。
「水筒とお皿が一体になっているんだね」
「移動中に水を飲ませるときに便利そうですね」
仁が商品を確認しながら言った。
「じゃあ、これも一つずつ買っておこうか」
美咲が言った。そのほかにも、ワンちゃんたちが休むときに使う小さなブランケットや、うんち袋、普段食べているおやつを入れておける保存容器などを見て回った。
「これでワンちゃんたちの持ち物は、ほとんど揃ったかな」
美咲がリストを確認しながら言った。
「忘れているものはなさそうだね」
花子もメモを確認した。
「じゃあ、次は私たちのものを買いに行こう!」
彩香が先頭に立って歩き出した。旅行用の衣料品売り場に到着すると、四人はそれぞれ必要な服を探し始めた。沖縄は暖かい地域なので、夏服や薄手の羽織りもの、帽子などを用意しておく必要があった。店内には明るい色のワンピースから、気軽に着られるシャツやショートパンツまで、さまざまな服が並んでいた。
「旅行で着る服は、前もって選んでおいた方がいいよね?」
花子がハンガーに掛かったワンピースを見ながら言った。
「花ちゃんは何を着ても似合いそうだけどね?」
彩香がいたずらっぽく笑った。
「もう、そんなこと言わないでよ」
花子は少し照れたように笑いながら、手に取った服を戻した。
「本当だよ? 花ちゃんって普段から服選びが上手じゃない」
「ただ着やすい服を選んでいるだけだよ」
「そういうのにもセンスが必要なんだよ」
美咲も隣から同意した。
「二人とも褒めすぎだよ」
花子は笑いながら、別の服を見始めた。
「咲ちゃんは何を買うつもり?」
彩香が美咲に尋ねた。
「私は動きやすい服を選ぼうと思ってるよ。旅行中はたくさん歩くだろうしね」
美咲は薄手のシャツやショートパンツを見ていた。
「じゃあ、動きやすい服がいいね」
「うん、ルルと一緒に行動するときも楽な方がいいから」
美咲はいくつか服を選び、腕に掛けた。彩香は明るい色のTシャツと薄手の上着を交互に見比べていた。
「私は普段あまり着ない色にしてみようかな? せっかく旅行なんだから、いつもと少し違う服を着てもいいよね」
「彩香は明るい色が似合うから、いいと思うよ」
花子が答えた。
「じゃあ、これを試着してみようかな」
彩香は気に入った服を手に取り、試着室の方へ向かった。一方、仁はメンズ服の売り場で、無難なシャツとズボンを選んでいた。
「仁さんはもう選び終わったんですか?」
花子が尋ねた。
「はい、旅行中に着る服は、動きやすいものがいいと思いまして」
「仁さんらしいですね」
彩香が服を持って戻ってきながら笑った。
「旅行でもいつも通り、着やすい服を選ぶんですね」
「動きにくい服よりは、動きやすい服の方がいいですから」
「それもそうだね」
美咲が頷いた。
「でも、せっかくの旅行ですし、いつもと少し違うスタイルに挑戦してみるのもいいんじゃないでしょうか?」
花子が控えめに提案した。
「そうなんですか?」
「はい、仁さんは背も高くて体格もいいですし、こういうシャツも似合うと思いますよ」
花子は明るい色のシャツを指差した。仁はしばらくそのシャツを眺めた。
「それなら、一度試着してみます」
「ふふ。楽しみですね」
花子は微笑んだ。しばらくして、仁がシャツを着替えて出てくると、彩香が真っ先に反応した。
「おお、いいじゃない!」
「本当によく似合っていますね」
美咲も感心したように言った。花子も頷いた。
「そうですね。いつもとは少し違った雰囲気です」
「そうですか?」
仁は少し気まずそうに、シャツの袖を軽く触った。
「はい、こっちの方が旅行の雰囲気に合っていると思います」
「それなら、これにします」
仁はもう一度シャツを確認してから頷いた。その様子を見ていた彩香が、花子にそっと近づいた。
「花ちゃんが選んであげた服だね」
「ただ似合いそうだったから勧めただけだよ」
「ふふ。そうなの?」
「彩香……」
花子が小さな声でたしなめると、彩香は笑いながら一歩下がった。
そのとき、美咲がスマートフォンを確認した。
「必要な服は、だいたい選べたみたいだね」
「じゃあ、次の場所に行ってみようか?」
彩香が笑顔で売り場の奥を指差した。
「次の場所ですか?」
仁が尋ねた。彩香はにっこり笑って答えた。
「水着売り場!」
「あ……」
花子の表情が一瞬固まった。
「沖縄に行くなら、やっぱり海は外せないよね」
美咲が自然に話を続けた。
「そうそう! 海に行くなら水着も用意しないとね」
彩香は花子の腕を軽く取った。
「ほら、花ちゃん。一緒に行こう」
「う、うん」
花子はちらりと仁の方を見た。仁は特に気にした様子もなく、頷いていた。
「水着も必要ですね」
その言葉を聞いた花子の顔が、少し赤くなった。水着売り場には、さまざまなデザインの水着が並んでいた。明るい色から落ち着いた色まで種類も豊富で、ワンピースタイプやビキニタイプなど、デザインもさまざまだった。売り場の一角には、水着と一緒に着られる薄手の羽織りものや帽子も並んでいた。
「わあ、可愛いのがいっぱいあるね!」
彩香が陳列棚を眺めながら言った。
「本当だね」
美咲も興味深そうに水着を一つずつ見ていた。
「こういうデザインって、普段はあまり見かけないよね」
「旅行先で着たら可愛いと思うよ」
二人は気に入った水着を一つずつ手に取りながら、楽しそうに話していた。一方、花子は少し離れた場所から、控えめに陳列棚を眺めていた。
(……水着か)
普段着ている服とは違い、体のラインが出る服だった。それに、今は仁も一緒にいる。花子は何気なく仁のいる方を見た。仁は男性用の水着売り場の前で、デザインを確認していた。
(仁さんの前で水着を選ぶのは、ちょっと恥ずかしいな……)
花子は手を伸ばせば届きそうなところにある水着を眺めていたが、なかなか手を伸ばせずに視線をそらした。
(でも、旅行に行くなら一着くらい用意しておかないとね)
気に入ったデザインを探そうとしても、なかなか手が動かなかった。
そのとき、彩香がそっと近づいてきた。
「花ちゃん、どうしたの? 気に入ったものがないの?」
「あ、ううん、そういうわけじゃないよ」
「じゃあ、どんなデザインがいいか悩んでるの?」
「うん。ちょっとね」
彩香は花子の視線を追い、仁のいる方を見た。そして、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「もしかして、仁くんのことが気になってるの?」
「あ、彩香!」
花子が慌てた声を上げた。
「しーっ、仁くんに聞こえちゃうよ」
彩香は口元に指を当てて笑った。そこへ、美咲も二人のところへやってきた。
「何の話?」
「花ちゃんが水着選びに悩んでるんだよ」
「ああ、もしかして、仁さんのことが気になるの?」
美咲が笑いながら尋ねた。
「美咲まで……」
花子は顔を赤くして二人を見た。
「ただ、普段着ない服だから少し悩んでいるだけだよ」
「ふふ、そうなんだ」
美咲はそれ以上追及せず、水着を一着手に取った。
「これはどう? 花子に似合いそうだけど」
「どれどれ……」
花子は美咲が選んだ水着を見た。落ち着いた淡いピンク色の水着だった。
「可愛いね」
「でしょ? 花子にはこういう色が似合うと思うよ」
「私もそう思う!」
彩香も頷いた。
「花ちゃんは派手なものより、こういう落ち着いた色の方が似合うと思うな」
「本当にそう思う?」
「うん、普段着ている服もそうでしょ?」
美咲が笑顔で答えた。花子は水着を受け取り、鏡の前に立った。
「似合うかな?」
「うん、きっとよく似合うよ」
「じゃあ、一度試着してみようか?」
彩香が笑顔で言った。
「うん……」
花子は水着を持って試着室へ向かった。しばらくして。
「ねえ……どうかな?」
試着室から出てきた花子は、少し恥ずかしそうに二人を見た。淡いピンク色の水着は、花子の雰囲気によく似合っていた。
「わあ! すごく似合ってるよ!」
彩香が感嘆の声を上げた。
「本当だね。色も可愛いし、花子にぴったりだよ」
美咲も満足そうに頷いた。
「本当に?」
「うん、もっと自信を持っていいよ」
彩香は花子の肩を軽く叩いた。
「色も落ち着いているし、デザインもすっきりしていていいね、花子らしいと思うよ」
美咲も付け加えた。花子は鏡に映る自分の姿を眺めた。普段はほとんど着る機会のない服なので少し違和感はあったが、二人に褒められると、少し気持ちが落ち着いた。
(本当に大丈夫かな……)
そのとき、彩香がちらりと仁のいる方を見た。
「じゃあ、仁くんにも見せてみようか?」
「だ、だめ!」
花子が慌てて答えた。その反応に、彩香と美咲は顔を見合わせた。そして、同時に笑い出した。
「ふふ、やっぱり気になるんだね」
「本当に可愛いね、花子」
「もう、二人とも……!」
花子は顔を赤くして、再び試着室へ戻っていった。
彩香は花子が戻っていった方を眺めながら、小さく笑った。
「仁くんは、まだ何も気づいていないみたいだね?」
「そうみたいだね」
美咲が答えた。
「花子も、もう少し素直になればいいのに」
「でも、急ぐ必要はないでしょ。二人はこれから少しずつ距離を縮めていくんだから」
美咲の言葉に彩香は頷いた。
「それもそうだね」
「花子も仁さんと一緒にいる時間が心地いいみたいだし」
「うん、前よりずっと表情も明るくなったよ」
彩香は試着室の方を眺めた。
「今回の旅行で、もう少し仲良くなれるといいね」
「そうだね、でも、私たち二人があまりお節介を焼かないようにしようね」
「分かった、ほどほどに見守るよ」
彩香はいたずらっぽく笑った。一方、仁は相変わらず男性用の水着を見ていた。
「こちらはどうでしょう?」
仁が手にした水着を見せると、彩香が近づいてきた。
「うーん、無難でいいんじゃない?」
「仁さんには、こういう暗めの色が似合うと思いますよ」
美咲も言った。
「それなら、これにします」
仁は特に迷うことなく水着を選んだ。しばらくして、花子がいつもの服装に着替えて戻ってくると、仁が近づいてきた。
「気に入った水着は見つかりましたか?」
「はい、いいものが見つかりました」
「それはよかったです」
仁はいつも通り、落ち着いた口調で答えた。花子はそんな仁を見つめてから、小さく笑った。
(本当に何も気づいていないんですね……)
「仁さんも選びましたか?」
「はい、これにすることにしました」
仁は手に持っていた買い物かごを見せた。
「よく似合うと思いますよ」
「そうですか?」
「はい」
花子は微笑んだ。そこへ、彩香が二人の間にやってきた。
「さあ、私たちも会計を済ませて次に行こう!」
「まだほかにも買うものがあるの?」
美咲が尋ねた。
「うん! まだ少し必要なものが残ってるんだよね」
四人はそれぞれ選んだ商品を会計し、売り場を後にした。買い物を終えた四人の手には、大きさもさまざまな紙袋がいくつも提げられていた。ワンちゃんたちのための用品から旅行用の服や水着まで、思っていたよりもたくさん買ったため、紙袋の数もかなり増えていた。
「思ったよりたくさん買ったね」
美咲が紙袋を見下ろしながら言った。
「でも、必要なものはほとんど揃ったと思うよ」
花子が答えた。
「ワンちゃんたちの持ち物も用意できたし、私たちの服と水着も選べたからね」
彩香は満足そうに笑った。
「家に帰ってから、忘れ物がないかもう一度確認すればよさそうですね」
仁が言った。
「そうだね。旅行当日になって足りないものに気づいたら困るからね」
美咲はスマートフォンのリストをもう一度確認した。
「それにしても、今日は思ったよりたくさん準備できたね。最初は何を買えばいいのか分からなかったのに」
「みんなで選んだから、あっという間だったね」
花子が言った。
「一人で準備していたら、もっと時間がかかっていたかもしれないね」
「じゃあ、また今度も一緒に買い物に来ようよ」
彩香が笑顔で言った。
「次は旅行の準備じゃなくて、普通に遊びに来るんでしょ?」
美咲が尋ねた。
「もちろんだよ、咲ちゃん!」
彩香は迷わず答えた。
「そのときは今日よりもっとゆっくり見て回ろうね」
「いいね」
花子も微笑んだ。
「これで、あとは旅行の日を待つだけですね」
仁が言った。
「そうだね。今からもう楽しみだよ」
花子は紙袋を眺めながら微笑んだ。
「私も! みんなで旅行に行くなんて久しぶりだからね」
彩香が元気よく答えた。
「ルルも楽しみにしているかな?」
美咲は抱いていたルルの頭を撫でた。ルルは尻尾を振りながら、美咲を見上げた。
「モチもきっと喜ぶよ」
花子が言った。
「二匹が一緒に海辺を散歩する姿も楽しみだね」
彩香が想像するように言った。
「ただ、暑い時間帯には気をつけた方がいいですね」
仁が付け加えた。
「そうだね、モチとルルに無理をさせないように気をつけないと」
花子が頷いた。
「仁さんは、もうワンちゃんたちの心配をしているんですね」
美咲が笑いながら言った。
「一緒に旅行に行くのですから、当然のことです」
仁は落ち着いた口調で答えた。
「ふふ、やっぱり仁さんらしいですね」
花子が笑った。仁は三人の様子を眺めながら、静かに微笑んだ。普段はフォレストで働いているだけでも、一日があっという間に過ぎていく。こうして一緒に買い物をして旅行の準備をする時間は、仁にとって少し慣れないものだったが、それでも楽しかった。
以前は、誰かと一緒に旅行へ出かけるなど、考えたこともなかった。
どこかへ行く必要があれば一人で行動するのが当たり前で、ほかの人と予定を合わせることもほとんどなかった。けれど、今は違う、誰と一緒に行くのか、何を準備するのか、旅行先でどんな時間を過ごすのか。そんな話をしているだけでも、少しずつ気持ちが弾んでいた。
(旅行というのも、悪くないものですね)
仁は手に持っていた紙袋を持ち直した。
「仁さん、重くないですか?」
花子が尋ねた。
「大丈夫です、このくらいなら問題ありません」
「でも、紙袋がかなりありますね。私もいくつか持ちますよ」
「大丈夫です。自分が持っていきます」
「それなら、少しだけお願いしますね」
「はい」
花子は微笑んだ。その様子を見ていた彩香は、美咲と目を合わせた。二人は何も言わず、小さく笑った。
「どうしたの、咲ちゃん?」
彩香が小声で尋ねた。
「ううん、ただ、二人ってお似合いだなって思って」
「でしょ?」
彩香は花子と仁を交互に眺めた。
「今回の旅行、すごく楽しくなりそうだね?」
「ふふ、期待しすぎじゃない?」
「そうかもしれないけど、楽しみなのは仕方ないでしょ」
彩香と美咲は、これから始まる沖縄旅行を思い浮かべながら、楽しそうに微笑んだ。花子、仁、彩香、美咲、そしてモチとルル。四人と二匹が一緒に出かける旅行の始まりは、もうすぐそこまで近づいていた。
こうして、四人の旅行の準備は楽しい雰囲気の中で、少しずつ整っていった。




