フーリュのお礼
「これは、どこに向かっているのですか?」
今日はフーリュと街に出かけている。
「そうだね。エスタレアはフルーツや甘い食べ物が好きだと聞いていたから、フルーツがたくさん乗っているタルトが食べられるお店に行こと思って」
「だ、誰がそんなことを言っていたんですか。まったく、私の周りにはおしゃべりな人が多いですね」……とはいえ、フルーツがたくさん乗っているタルトは楽しみです……」
私の個人情報を漏らしたのは誰なの?
一瞬そう思ったが、その情報をフーリュに伝えてくれたお陰で、おいしい食べ物のお店に連れて行ってもらえると考えると。
フルーツがたくさん乗ってるタルトとか、楽しみ過ぎる!!
文句は言えないよね……
「ねえ、あの方って、フーリュ卿では?」
「いつ見ても、惚れ惚れするお姿ね」
「隣の女性は妹さんかしら?」
フーリュと一緒に歩いていると、周りがざわつき始めた。
「フーリュは人気者のようですね」
「いえ、伯爵の息子として、物珍しく見ているだけですよ」
「そうですか?」
根拠なく私を王都から追放させた王女よりは、当然、人望があるように見える。
むしろ、領民の視線が私達に集中し過ぎているのを見ると、私の予想通り人気者なのだろう。
「このフルーツタルト、おいしいです!」
人目もあるため、控えめにおいしいと声に出したが、本当はおいしすぎると叫びたかった。
この絶妙に調和のとれたフルーツとタルトの組み合わせは一体なんなのか。
思わず、色々な角度からフルーツタルトを眺めてしまった。
「それは良かったです」
フーリュが私の顔をじっと見ながら微笑んでいる。
「今日、このお店にエスタレアをお連れしたのは、お礼が言いたかったからなんです」
「お礼ですか?」
何のお礼だろう?
こんなにおいしいタルトを食べさせてもらえるようなことをした覚えがないのだが。
「イヴェエル兄さんの傷を治してくれて、本当にありがとうございました」
「え? どうして、フーリュがお礼を言うの?」
兄弟だからと言ってしまえば、それまでだが、何か違う理由がありそうな。
それにしても、兄弟そろってお礼がしたいと言い出すなんて、この領地の伯爵家はきっと律儀な家族なのだろう。
「はい、本来、伯爵の息子として、領地を護る戦いにはイヴェエル兄さんと私の二人がおもむくべきなのです」
「そうなのですね」
部下に戦わせる伯爵家もあると思うが、そこはフーリュの価値観でもあるのだろう。
「ですが、イヴェエル兄さんは、大切な次期伯爵だからと、私を戦地には行かせないように父に進言しているらしいのです。そのため、兄さんの身体に傷が増える度に、私は胸を痛めていました」
「あの身体中の傷にはそのような理由が……」
「ですから、エスタレアがイヴェエル兄さんの傷を治癒魔法で消してくれた時、同時に私の心の中のモヤモヤもスッと消えたんです」
「そ、そんな大したことはしていませんよ」
「フフ、エスタレアはそう思うかもしれませんが、私は本当に感謝しているんですよ」
ま、まあ、感謝されて悪い気はしないけど。
「そこまで感謝していただけるのでしたら、また、怪我をした時には私の家に来てください。何度でも治癒魔法で治療させていただきます」
「それを聞いたら、イヴェエル兄さんも喜ぶと思います。近々、魔獣討伐が行われますので、万が一、怪我をしてしまった時には、また訪問させていただきたいと思います」
「はい、その時は遠慮なく来てください」
魔獣討伐か……
関係が近くなり過ぎていて分からなくなっていたが、伯爵家も領民の生活を護らないといけないから、実は大変なんだよね。
フーリュの話を聞きながら、日々の穏やかな暮らしは、無条件で手に入れられているわけではなく。
領家である伯爵家やその騎士団の苦労もあって、暮らしが護られていたということに、私は改めて気づかされた。
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