イヴェエルの悩み(後編)
「それで、話なんだが……」
俺は意を決して、エスタレアに伝えておかないといけないと思っていた話を始めた。
「はい」
「エスタレアは俺のことを立ててくれているようだが、俺は伯爵の実の子ではないんだ」
「……それは、どういうことですか?」
やはり、知らなかったのだな。
「両親が子どもになかなか恵まれなかったらしくてな。俺はフーリュが生まれる前に孤児院から引き取られた養子なんだ。それは、実の子が産まれなかった時に、俺を次期伯爵にと考えてのことだったらしいが、その後、フーリュが無事に産まれた。だから、次に伯爵となるのはフーリュであって、俺ではないんだ」
「そうだったのですね」
「だから、他の領民と同じように、エスタレアもフーリュを次期伯爵だと思って、俺に接してくれればいい。今日はそれを伝えたかったんだ」
「分かりました」
よかった。
どうやら、分かってくれたようだ。
「そうか、これで安心したよ。フーリュと一緒にエスタレアの家を訪問をすると、エスタレアだけが、いつも俺の名前を先に呼んでいたから気になっていたんだ」
他の領民は次期伯爵であるフーリュの名前を俺よりも先に呼んでいる。
にもかかわらず、エスタレアは、毎回、俺の名前を先に呼んでいたことが気にかかっていた。
「え? それは変わりませんよ」
「ん、さっき分かったと言っていたと思うのだが……」
どういうことだ?
分かったんじゃなかったのか?
「はい、フーリュが次期伯爵だということは分かりましたが、イヴェエルがお兄さんなんですよね」
「ああ、義理ではあるが」
「私にとっては、どちらが次期伯爵なのかということは関係ありません。イヴェエルとフーリュの関係は兄弟関係としてしか見ていませんから」
つまり、エスタレアが俺の名前を先に呼んでくれていたのは、次期伯爵がフーリュだということを知らなかったからとか、そんなことは関係なく。
俺がフーリュの兄だから先に呼んでくれていたということなのか。
「フフ、そうか。エスタレアは俺のことを、そう見てくれているんだな」
そう言いながら、俺は思わず微笑していた。
そして。
俺は心の衝動を抑えられずに、気がつくとエスタレアを抱きしめていた。
「イ、イヴェエル?!」
俺に抱きしめられて、エスタレアが驚いている。
それはそうだ。
伯爵の実子ではない、本当はどこの誰なのかも分からない。
そんな男に抱きしめられて、嬉しいはずがない。
フーリュの方がエスタレアにふさわしいことは分かっている。
分かっているはずなのにな。
「すまない、少しだけこうさせてほしい」
「はい……」
ありがとう、エスタレア。
俺は心の中で、エスタレアの優しさに感謝した。
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