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20着目 踏み込め! ヒミツの武器倉庫!!

 オレ達が盗賊団を捕まえた後、ギルドによって様々な調査が成された。その調査にはヘルミーネさんも参加していたらしい。

 その結果、銃や弾丸は帝国中に拠点を持つほどの大商会『グルンシュルドビルン商会』の者であった事が判明。輸送中に襲撃を受け何者かに盗まれてしまったらしい。

 グルンシュルドビルン商会としても問題視しているらしく、警備主任を派遣してギルドに協力しながら調査を行っているらしい。


 そしてあらゆる盗賊団の討伐、及び捜査(オレ達も何度か狩り出された)の結果、何ヶ所か銃器や弾薬を貯蔵している倉庫らしき場所を推定。ギルドは同時に踏み込みをかけ、武器の盗賊団への供給を一気に断とうとしていた。


 オレ達が割り当てられたのは、とある森の中にある洞窟だ。

 この洞窟は過去に動物や生息域から飛び出した魔物の住処になっており、つい最近もここをアジトにしていた盗賊団が壊滅したばかりだった。

 そのため『しばらくは何も起きないだろう』と思われてノーマークだったが、この事情を知ってか知らずか銃器を強奪した連中はその心理的な油断を利用してアジトにしていたらしい。


 もちろん、ここが本当に銃器強奪犯のアジトだったら、という話だが。


「そういえば、レオナさんは新しい衣装でこの依頼に挑むんですね」


「まあな。ガンマンの衣装だと連中の銃相手じゃ相性が悪かったし」


 実は、ガンマンの衣装で使えるリボルバーやショットガンは威力に関してなら強力だが、射程に関しては連中が奪ったライフルの方が長かった。せいぜい投げナイフよりかはマシ程度。

 そのため、取れる戦法としては近接戦闘装備の場合とほぼ同じで、あまりガンマンの衣装特有のアドバンテージを生かせなかったのだ。


なので、思い切って衣装を新調してみた。

 新しい衣装は『魔法使いの衣装』。お値段はドレスメダル180枚。

 紫のローブとミニスカ、そしてとんがり帽子にオレの身長ほどある杖を装備した、文字通り魔法に特化した能力を得られる衣装だ。


 ここで、この世界の魔法についてちょっと説明。

 魔法を使えるのは特定のジョブを得られた場合のみというのは以前話したが、実は魔法には属性が存在している。

 『火』、『水』、『風』、『土』、『光』、『闇』の6種と、それらに属さず分類不可能な『特殊魔法』の計7種がある。

 そしてどの属性を使えるかは、個人とジョブの両方の要素が混在する。単純な個人の得意不得意に左右されたり、ジョブによってはあらかじめ使える属性が決まっている場合もある。

 特に特殊魔法はそれ専門のジョブを得なければ絶対に使えないとされている。有名なものだと召喚魔法を使える『召喚術士』とか。


 それでは魔法使いの衣装を着たオレはどうかというと、火、水、風、土の四属性の魔法を扱える。

 多くの場合、二属性使えただけで天才とされ、三属性は激レアと目されるほど珍しい存在であるため、四属性使える魔法使いの衣装の破格さが理解出来るだろう。


 ではなぜオレが魔法使いの衣装を着たのか?

 これまで強奪された銃を使った盗賊団を何度か倒してきてわかったことだが、おそらく魔法と強奪された銃の射程距離はおおむね同じで、撃ち合いが可能であるからだ。

 万が一魔法で対処できずとも、味方を強化する魔法を使えるので戦略の転換がスムーズになる。そう考えて魔法使いの衣装を購入した。

 もちろん、魔法使いの衣装に合わせてインナーも揃えている。


「もうそろそろだな」


 遠目に目的地となる洞窟が小さく見える。後はギリギリまで近づいて様子を見る。

 そうこれからの流れを考えていたときだった。


 洞窟からものすごい速さで何かが飛んできて、オレの足下に着地した。


「な、何だ!?」


 よく見ると、それは銃弾だった。しかも飛距離と精密性を意識した型だった。

 そして明らかに今までのライフルとは比較にならない射程距離。つまり、今あの洞窟にいる何者かが持っている銃とは――。


「スナイパーライフルか……?」


 遠距離にいる敵を、寸分違わず狙い撃ちする銃。連射性はないが、相手の攻撃が届かない位置から一方的に攻撃されるのは非常に厄介だ。


「大丈夫です、レオナさん。いつも通り壁を作れば……」


 ローザが近くの木を遺伝子編集し、木の根の壁を作った。

 だが、敵の弾丸は簡単に壁を貫いてしまった。

 結局、貫通しない壁を作るために5本以上の木の根を使うハメになってしまった。


「なんとか敵の攻撃を防げていますけど、木を多く使ってしまった分、次の壁を作るのにもっと遠くの木を使わないといけません」


 次の壁を作れる位置をローザに聞いてみたが、かなり遠かった。

 相手はスナイパーライフルを使っており、射撃間隔は長いはずだ。

 だが、今まで敵の攻撃パターンを観察していたが、おそらく間に合わない。次の壁を作る前に撃たれてしまうだろう。


 もちろん、魔法で狙撃することは出来ない。魔法は普通のライフル相手でようやく射程が同じなのだ。長射程を誇るスナイパーライフル相手では届かない。

 エルマを補助魔法で強化しても、おそらくブーメランでは届かないだろう。

 今のオレは『パープル・ドット・ブラ』(ドレスメダル十枚)という、紫のドット模様のブラを着用しているが、それには『補助強化』という補助系の魔法や技の効果を上げる効果を付与している。

 その状態でも、今の状況では攻撃を届かせる手段が無い。


「ねぇ、何か方法は無いかな?」


「そう言われても、そう簡単にアイディアが出るわけでは……」


 いや、本当に手段が無いのか?

 もう一度オレ達ができる事を考えてみよう。やり方次第で何か突破口が開けるはずだ。


 ――そうか、この手があった!




「よし、これくらいでいいだろう」


「すごいねレオナ。もう見えなくなっちゃった」


 現在、オレ達の周りは何も見えない。手を伸ばした先は一面白い世界だ。

 というのも、オレが水魔法を利用して霧を作り出し、エルマがブーメランに風魔法を乗せて上手く拡散してくれたのだ。

 そのおかげで、あの洞窟の周囲はすっかり濃霧に覆われている。この状態であれば、どんな狙撃の名手でもお手上げだろう。


もちろん、普通に霧を出すだけではここまでの量の霧を発生できなかった。

 実は『パープル・ドット・パンツ』(ドレスメダル十枚)を穿いているのだが、それに付与してあるのが『魔力強化』。その名の通り魔力を上昇させる。

 その効果でアップした魔力をフル活用し、ここまでの濃霧を発生させたのだ。


「ローザ、次頼む」


「わかりました。やってみます」


 ピット器官というものを知っているだろうか? 知っていれば、その人は動物好き、特にヘビ好きだと思う。

 一部のヘビが有している器官で、人間で言う上唇に何ヶ所か空いているくぼみだ。

 この器官、なんと赤外線を感知することが出来るという。


 で、オレ達が何をやろうとしているかというと。


「おおー、上唇に穴が空いたね」


「これが、ヘビが見ている光景か。ちょっと慣れが必要かな」


「上手くいって良かったです」


 ローザの遺伝子編集で、オレ達にピット器官を付けたのだ。

 このおかげで、熱を感知できるので視界不良でも問題なく行動できる。


「遺伝子編集は三十分しか持ちません。早く行きましょう」


「そうだな。でもバレないように、静かに行くぞ」


 そして足音を殺しつつ洞窟に接近。なんと、敵の目と鼻の先まで接近できてしまった。


「さあ、観念しろ!」


 オレは水魔法を放った。何の技巧も凝らさない、威力の高い放水だ。

 もちろん、水魔法を使ったのには理由がある。ここは弾薬が保管されている可能性が高いので、引火して大爆発を起こすリスクを考慮して火魔法を避け、銃を使用不能にできそうな水魔法を選んだのだ。

 もっとも、金属薬莢の弾である可能性が高いので、その期待は限りなく引くそうだが。


「こんな濃霧でいつの間に……って、なっ!?」


 ただの放水で敵を倒せるとは思っていない。ただ、敵の目線をオレに向けさせるのが大きな目的だ。

 敵がオレに集中している間、どこからかやってくる攻撃が敵を襲っている。もちろん、エルマのブーメランが横無尽に飛んでいるのだ。


「……もうここまでのようですね。なら……」


 敵を順調に追い詰めたが、そいつはなぜか銃口を地面に向け、発砲した。

 何かヤバい予感が……。


「伏せろ!」


 思わず叫んでしまった。

 その刹那、放った銃弾が炸裂し、強烈な光を放った。

 そして光が収束すると、敵はいなくなっていた。


「逃げたか……。エルマ、無事か?」


「う、うん。ちょっと光を見ちゃったけど、大丈夫そう」


「すみません、レオナさん。敵を見失ってしまいました」


 敵が逃げた場合に備え、距離を置いて待ち伏せてもらっていたローザがやって来て、謝った。


「しょうが無い。まさか閃光弾なんてモンがあるなんて思ってなかったからな。それよりも全員無事でいる方が重要さ。それと、洞窟の方も確認しよう」


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