21着目 銃器強奪事件の結末! そしてある所で……
~???side~
深夜・リリエンシュタット。
もうほとんどの人は夢の世界に旅立っている時間。だが、例外も存在する。
グルンシュルドビルン商会の警備主任で、銃器強奪事件をギルドと共に追っているゲルトラウトも、その例外に当てはまる一人だった。
警備の仕事は色々あるが、夜の哨戒も業務の内。しかも銃器強奪事件を追っているため、忙しく徹夜の頻度が増えているのも一因だった。
そんな彼女の元へ、一人の少女がやって来た。
「ゲルトラウト様。手はず通りに済ませてきました」
「ご苦労様、ヒルデガルト」
このヒルデガルトという少女は、ゲルトラウトの右腕として働いている。
所持しているジョブは『スナイパー』。長距離を非常に高い精度で狙撃できるジョブだ。
だが、彼女は筋力が弱いために射程が長い弓の弦を引くことが出来ず、かといって魔法も使えない。完全に『宝の持ち腐れ』状態であった。
だが、ゲルトラウトと出会い、その縁でグルンシュルドビルン商会の魔道具師によって長距離射撃用の銃を開発して貰った。
以来、今までのくすぶっていた時代が嘘かと思うほど大活躍し、ゲルトラウトの右腕まで上り詰めたのだ。
「ところで、例の彼女達――ほら、マルガレーテさんの部下を追いかけ回したっていう子。実際に戦ってみてどうだった?」
「一人新規加入してきたので、その人についてはなんとも。あの妙な投擲武器を使う人は聞いていたのよりも手強く感じましたが、成長していると考えれば合点がいきます。もっとも、風魔法を使えるようになったとは予想外でしたけど」
ただ、とヒルデガルトは困惑したように続けた。
「あのリーダーシップを取っているように見える少女に関しては、全くわかりません。聞いていた情報では格闘技使いだったそうですが、今回は魔法を使った――いや、むしろ魔法を主体に戦っていました。事実、魔法で霧を発生させられて自分の狙撃が全く役に立ちませんでしたから」
「なるほど、確かにそれは妙だね……」
ゲルトラウトはヒルデガルトの証言を丁寧に考察した。
そして、当面の方針を導き出した。
「よし、そのパーティーについて情報を集めよう。そのための人員を派遣して貰うようボスに頼んでみる。幸い、今の状況を利用すれば簡単に人を招聘できるし、ギルドへの出入りも不自然に思われないしね」
~レオナside~
オレ達が踏み込んだ洞窟は、結論を言うと当たりだった。
中に入ると金属薬莢やそれに対応した銃が詰め込まれた箱がそこら中にあった。
明らかに、ここが盗賊団への武器の供給拠点だったのだろう。
オレ達はすぐさまギルドに通報。そして迅速に捜査隊が組織され、詳しい捜査に移った。
オレ達も第一発見者として捜査に加わったのだが、そこで驚くべき物を発見してしまった。
「ヘルミーネさん、これ……」
「これって……」
捜査隊に参加していたヘルミーネさんも絶句してしまった。
そこには、こう書かれてあったのだ。
『○○○殿
グルンシュルドビルン商会の最新式の武器を強奪し、リリエンタール大公領内で活動する盗賊団へそれらを供与し、リリエンタール大公領の流通網を遮断せよ。
ヴェラセネ・キンダー
マイスターより』
それは、ヴェラセネ・キンダーのボス、マイスターからの指令書だった。
つまり、今回の件はヴェラセネ・キンダーによるテロ行為だったのだ。
「これは、大事になりましたね」
「あれ、あなたは……」
「初めましてだね。私はグルンシュルドビルン商会で警備主任を務めている、ゲルトラウトと言う。よろしく」
突然オレ達に話しかけてきたのは、なんと話に聞いていたゲルトラウトさんだった。
「ヘルミーネさん、武器の方を確認させて貰いましたけど、盗まれた武器や弾薬の約半数が見つかりました。これに加えて盗賊団から回収した分やまだ回収し切れていないと見積もられる分、それとすでに使われた弾薬を考慮に入れると、おおむね我が商会から盗まれた量と一致します」
「あら、それはよかったですね。ということは、やはりここを拠点にして武器を供給していたんですね」
「そうだと思います。しかし、こんな重要な場所を奪い取ったのが、こんなかわいらしい女の子だったなんて。よかったら、どんな能力を使ったか教えてくれないか?」
「え、えーっと……オレの能力は色々ルールがあって、上手く説明が出来なくて……」
実は、オレは自分の事、とりわけ複雑な物ほど説明するのが苦手だ。
削るべき所、必ず言わなくてはいけないことがわからず、結果情報過多になるか極端な情報不足になるかの二つしか存在せず、いずれにしろ他人が理解出来る内容ではない。
だからギルドへの報告は結構苦痛だったのだが、ローザが来てからは楽になった。ローザはそういった情報のまとめ方が上手く、オレの言いたいことも理解した上でわかりやすく他人に伝えてくれるのだ。
「そうかい。だったら無理に話さなくていいよ。いずれにしろ、君達のおかげで我々の商会の過去最大と言っていい位の危機を救ってくれたんだ。礼を言うよ」
その後少しゲルトラウトさんと話したが、彼女は事件がひとまず落ち着く頃に帝都の本拠地へ戻り、今回の事を報告するらしい。
そしてこの事件を契機に、ヴェラセネ・キンダーの決意は本物であり、危機感を持っていかなければならないという事が世間的に認識された。




