魔物達の蹂躙祭 〜王都防衛戦 前編〜
走る。本来は馬車で向かうところを自分の足で突き進む。
パングから王国まで前回は一週間を要した。が、今回はそうもいかない。転移術というチートもないこの世界で何よりも信じられるのは自分のみ。
だからこそ魔力操作を駆使して疾走していく。
エルサたちは三日で精霊界まで来れたらしい。なんでも複数あるルートのうち最短ルートで来たというのだ。
どうやら精霊の中に精霊界へと案内してくれる奴がいるらしく。それを見つけるのに三日かかったのだという。
まぁその話は置いといて、驚くべきことはもう一つ。クナイたちの成長である。
「この距離で息一つ切らさないのか·····」
思わずこぼした一言にクナイが反応する。
「ん。もう前の私とは違う」
「·····そうか。レーデたちも流石だな」
「当たり前よっ!」
「このぐらいでへばっているようじゃ修行の意味がありませんよ」
「そうでござる。なんならまだ速さを上げることが出来るでござるよ」
頼もしい限りだ。
本当にうかうかしてられないな。でも俺も何もしてなかった訳では無い。
「まだまだ余裕そうね」
「そうっすね。カグヤの言う通り、まだ速さを上げるのも余裕っす」
「じゃあ少し飛ばすぞ。もうそんなに猶予も無いみたいだしな」
ここからでも遥か遠くの方で赤くなっているのが見える。
既に魔物の侵攻が始まっている何よりの証拠だ。確かにこんなに悠長に喋っている訳にはいかない。
「よし。なら──<二段階・解放>」
「おいおいそんなに飛ばして大丈夫かよ」
「まぁあっちに魔力を回復する為に必要なのがいるからね」
スタンピードとなると魔物の数は計り知れないだろう。
俺からしてみれば餌が転がっているようなものだ。
「それもそうね。なら急ぐわよ」
「「「了解」」」
到着すると、やはり魔物の侵攻は始まっているようだ。
「あれおっさんじゃねぇか?」
セリカの声に視線を飛ばすと、確かに黄色の大盾を構えて必死に魔物達の攻撃を受け止めるクリクソンの姿が見えた。
どうやらアタッカーがいないようで、苦戦を強いられているようだ。
「<魔力・絶>」
丁度良かったので魔力を吸収すると、突然無くなった感触に驚いた様子のクリクソンが、しかし魔物の死体の様子を見て察したようでこちらに気づいた。
「すまん。助かった」
「いや大丈夫だ。んで、そっちの状況は?」
「スタンピードが始まって数時間が経とうとしているが、一向に魔物の数が減らん。·····というより、フェーズが決まっててある程度の魔物が減ると追加するように魔物が襲ってくる」
「·····舐められてるな」
「あぁ。今回の統率者は余っ程の遊び好きなんだろう。もしくは誰かが来るまでの時間つぶしか·····」
とりあえず、被害が少なそうで何よりだ。
周りを見ると国民の避難は完了していて、建物の被害も少ない。しかし、火災がちらほら見える。水属性の冒険者が必死に消火活動を行っているのが見える。
「驚いただろ? ここまで被害が少ないのもフェーズごとに分かれているっていうのも一つだが、一番の功労者はあそこにいるんだ」
クリクソンの指さす方向にはどこか見覚えのある少年の姿が。
違うところは服装が変わっているというところか。でも右腕の包帯だけは見覚えがある。
「あれ·····シドウか?」
「おっ、知ってるか」
「まぁ少しな·····」
遠い目をする俺をクリクソンが訝しげに見つめてくる。
「でも知っているということなら話は早い。シドウが抑えてくれたんだよ」
「なら後で感謝しなくちゃな。遠くからでも闇属性の使い手っていうのは凄く分かる」
空に蔓延るガーゴイルたちを一瞬にして絡みとったかと思えば、一斉に消してしまった。
「あれでもとっておきは残してるんだ。統率者が侵攻して来た用にな」
「流石はS級だな」
「いやA級だぞ?」
「は? あんなに強いのにか?」
「強すぎるのが問題なんだ。·····とりあえずこの話はこれが終わってからだな」
そこで目線を王都に向けるとオーガやポイズンスパイダー、ファングウルフなど勢揃いで唸り声を上げていた。
「よしっ、ひとまずこのフェーズを乗り切るぞッ!!!」




