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魔王の意思とスタンピード


 慌てた様子でエルサたちが尋ねてきたのは今から二時間前の出来事だ。

 余程急いできたのか、既に魔力が尽きかけていた所をサラマンダーが発見。俺がそこに魔力を供給し今に至るというところだ。


「で。どうしたんだ? そんな慌てて。王国からここまでめっちゃ遠いだろ?」

「いやそうも言ってられないのよ。スタンピードが起ころうとしているの」

「スタンピード·····って何だ?」


 既に集まっていたクナイたちがよろける。

 あれ結構常識的だったりする? でも、スタンピードなんて聞いたことないしな。


「スタンピード·····魔物達の蹂躙祭とも呼ばれる一種の天災だよ」


 スタンピードを知らない俺にセリカが呆れたような口調で説明してくれた。


「魔物達が統率者によってまとめられ一つの軍団として国や街を蹂躙する。だから蹂躙祭って言うんだ」

「へぇ·····話は分かった。早速王国に向かうとしようぜ」

「いえ、その前にある程度の前知識を話そうと思うわ。多分だけれど王国に戻ったら説明している暇なんてないと思うの」


 エルサの指摘にそれもそうかと頷く。


「今回のスタンピードだけど、いつもと違う点が一つ。魔物達の不審な動向に〝怯えた〟という要素が入っていること」

「怯えたとはどういう事ですか?」

「サクヤ様も知っての通り『魔王の意思』が関連している可能性が高いという事です」

「──ッ」


 サクヤの目が見開かれる。

 それもそうだ。前にサクヤは『魔王の意思』により生贄にされたのだから。王国の罪で得た恐怖は今なお脳裏に焼き付いているだろう。


「それはどのようにして判断に至ったのですか?」

「近頃の『魔王の意思』という組織の噂、そして報告。それはルーロも知っての通りでしょ?」

「あぁ」


 この間、クナイの件で関わったばかりだ。だからこそ精霊界にへと修行をする為に来た。

 その成果を見せる時が来たというだけなら良いのだが、問題はスタンピードを起こした理由だ。


「ルーロはなんか目星がないかしら? スタンピードを起こす理由」

「理由、理由か·····前にクリクソン交えたサクヤを覗くこのメンバーには話したんですけど、あの時の化け物を生み出した際に使用したのは魔王因子術式と呼ばれるもので、これの源は魔力ではなく人間の恐怖などの負の感情です。それを集めるのにスタンピードが一番効率がいいんじゃないという事だと思いますね」

「そういう事ね·····分かったわ。とりあえず王国に向かいましょ。今の予測を踏まえてクリクソンとハーラン様に相談しなくちゃ」

「分かりました」


 なら、急いで準備しないと。

 

「·····行くんだね」


 そんな時、ドラが目の前に立っていた。

 ここは精霊の里の宿屋。こんな所に精霊王が用もなしにいるはずもなく、会話を聞かれていたのだろう。


「あぁ、悪い。ちゃんと挨拶が出来なくて」

「いや良いよ。君たちの修行は完了している。クナイは魔力制御を。サクヤは魔法を、レーデは精霊を昇華させることに成功した。もちろんルーロもね。だからこそ一言だけ言っておきたいんだ」


 一拍空けると、言い聞かせるようにドラは言った。


「慢心ダメ絶対だよ」

「分かってる」

「慢心や傲慢で人は簡単に死んでいく。修行をしたから強いと思わずに、更に上がいることを自覚して今の自分に出来ることを精一杯頑張るんだよ」

「あぁ分かった」


 ドラはクナイたちもしっかりと頷いたのを確認すると途端に破顔し、笑みを浮かべた。


「さぁ行ってらっしゃい」

「「「行ってきます」」」


 そのまま準備を終えた俺たちは王国目指して精霊界を後にしたのだった。

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