魔物達の蹂躙祭《スタンピード》
今回もルーロ目線ではなく、三人称です。
その日、王国中に激震が走った。
それは王都であるカシオスで、とある事が発見されてからの出来事であった。
「最近の魔物共の動向が怪しい?」
「はい。クエストを受けた冒険者が複数人確認しています。どうも、怯えた様子でそれだけならまだしも普段団体行動を取らない魔物が団体で行動しているようで·····」
冒険者ギルド、ギルド長室。そこでギルド嬢が冒険者から得た情報を共有している。
ギルド長であるクリクソンはその情報を聞くと眉をひそめてため息を吐き出した。
「今、このギルドに残っているA又はSランクの冒険者は何人だ?」
「はい。Sランクの冒険者はギルド長含めて三人。エルサさん、セリカさんです。そしてAランクなんですがミリオンくん、ナリタさんの二人だけです」
「少ないな·····」
「SランクはまだしもAランクすらこの人数だと少し厳しいですね」
「その魔物の不審な動向はいつ頃からだ?」
「はい。報告が入ったのは丁度一週間前からでどのランクも関わらず確認報告が入ってます。現在で百件ほど」
「·····そうか」
クリクソンはこの報告に苦虫を噛み潰したような顔をする。
実は王国にいる冒険者の高ランクにあたるSランク、Aランクの冒険者は少ない。
何せ、冒険者は自由であることが売りだ。それはSランク冒険者パーティ──『龍殺し』で有名な二人がその最たる例である。
しかしながら、今回はそうはいかない。魔物達の不審な動向。これには前例があり、かつての王国もこれにより大きな痛手を負った。
「『魔物達の蹂躙祭』」
クリクソンの一言にギルド嬢も息を呑む。
魔物達が指揮者によって一つの団体にへとまとめあげられそして襲撃する。
これによる被害は甚大である。
だからこそ迅速な行動、そして処置が必要になってくるのだ。
「まずはSランク冒険者であるアイツらを呼び出したいんだが、後エリドは引退している。アイツの傷口を開かせると問題だ。が、今回に限っては人手が多い方が助かる。一応呼びかけといてくれ」
「分かりました。Aランクの方はどうします?」
「Aランク·····ルーロと後アイツか。いや同じく招集だ。Aランクでもかなりの部類に入る二人だからな。後、騎士団にも連絡を入れろ」
「あの騎士団長は、ちょっと·····」
「硬っ苦しい奴だが·····そうだな。エリドの名前とルーロの事でも話しとけ。飛んで駆けつけてくる」
「分かりました」
今回の『魔物達の蹂躙祭』は最近の『魔王の意思』とやらが関わっている可能性がある。
しかし、それを抜きにしてもやはり王国中の全ての実力者達を向かわせないと被害は酷くなるばかりだ。
だが、今回はラッキーだったと言える。前例があったおかげか魔物達の不審な動向を前もって知ることが出来た。これなら、緊急会議の末しっかりとした対応が出来るだろう。
だが、クリクソンの顔は険しいままだ。
確かに『魔物達の蹂躙祭』に対して険しくしているのだが、それよりも一癖も二癖もある冒険者達をまとめあげられるかが問題である。
ある意味、魔物達よりも厄介だ。
「一応、帝国にも連絡を入れとけ。あそこのSランク冒険者の実力はエリドと並ぶからな」
「分かりました。では失礼します」
そう言って退席したギルド嬢がしっかりと部屋から離れたのを確認すると、クリクソンはおもむろに立ち上がる。
「今までのスタンピードは魔物が統率者だったが、今回はそうもいかないだろうな」
前述した『魔王の意思』。ただでさえスタンピードでも問題なのに、そこに新たな要素が組み込む事によって更に危険性は増してくるだろう。
「今回の総力戦。人間の底力ってやつを見せつけてやるか」
そう意気込んで、クリクソンは一本の連絡を国王であるハーランに入れる。
「すみません、クリクソンです。はい、今回の件。·····そうです。緊急会議の発令をお願いしたく·····はい。お願いします」
冒険者の中でもSランクとAランクの冒険者。それに騎士団長と副団長の二人。後は国王交えた有力者たちによる緊急会議。
全てはスタンピードに対するためにその準備を着々と進めていた。




