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閑話 火の契約 〜前編〜


 今、俺とレーデはドラに連れられてある場所に向かっていた。


「わざわざ契約の場所が違うのか?」

「うんそうだよ。契約はどこでも出来るけど、だからこそ特別な場所でやることでそれが特別で大切なものになるでしょ?」


 確かにその通りだな。


 何気ない場所でやるよりかは、特別な場所で行う方がずっといいものだ。


「さぁもう見えてきたよ」


 ユグドラシルを出て『精霊の里』を抜けると遺跡がある。


 ドラはその遺跡を指さした。


「名前は『星の遺跡』。この世界は僕が作った世界だから、基本的に昼夜という概念は存在しない。僕が眠くなったら夜だし、起きたら朝だ。だけど、星の遺跡は常に夜空が広がっている」

「本当だ。すげぇ星の数だな」


 中に入ると、さっきとは打って違って漆黒が広がっており、そこに星が散らばっていた。


 その数は無数にあり、数えるだけで頭が回りそうだ。


「うふふっ。この星たちは人間だよ」

「何それめっちゃ怖いやん」

「ルーロの考えているようなものじゃないよ。この星たちは人間とリンクしてるの」

「ということは私たちの星もあるのかしら?」

「もちろん。『星詠』の説明で聞いたでしょ。星とはその人の運命を司る。ゆえにこの星たちは全て人間界に生きる人間たちとリンクしている。人が死ぬ度に星は消滅し、そして新たな生が産まれれば新たに星が増える」


 それは興味深いものだ。


 魔法が使えない身からしたら、こんな事が実現できる魔法が羨ましく感じる。


 そんな俺を見てレーデは小さく笑う。


「あんたの考えていることが手に取るように分かるわ。どうせ、羨ましいとか思ってるんでしょ?」

「そんなに顔に出やすいのか、俺って」

「確かに顔に出やすいけど、私は昔からあんたのことを知ってるのよ? あんたの考えていることは大体分かるわ」

「マジかよ」

「当たり前よ。どれだけあんたのことを見てきたと思ってるのよ」

「それって·····」


 ──昔からずっと俺の事を見ているってことか?


 一瞬過ぎった俺の淡い期待に、今更ながら気づいたレーデは頬を赤く染める。


「ち、ちがっ──」

「そうだよな!? ごめん」


 しかし、俺の態度にレーデは不機嫌そうに頬を膨らました。


「す、少しは見てたし·····」

「え!?」

「む、昔っ!! 昔はたまに見てた。どうやって魔力操作してるのかって·····そういう事だから勘違いしないでよねっ!」

「あー、そういう事ね」


 あぶない。危うく勘違いするところだった。


 最近、ただでさえ女子軍が勘違いさせるような行動をとってきているので、もしかしたらと願ってしまうのだ。


 まぁ、レーデの場合はしっかりと否定してくれるから期待もすぐに壊れちゃうけどな。


「またやっちゃった·····」


 聞き取れないほどの声でレーデが呟くが、どうせ俺への不満だろうから聞こえないふりをする。


「はいはい。契約を前に緊張してないのはいい事だけどほどほどにね。ほら、そろそろ着くよ」

「あぁ分かった」


 ドラの言葉でようやく目の前に視線を転じさせれば、言葉を失うほどの光景が眼前に広がっていた。


 幻想的と言えばいいのだろうか。


 前述した夜空もさることながら、煌めく星々は人間の生命を感じさせるほどに強い光を放っている。


「·····すごく綺麗ね」

「そうでしょ。僕も気に入っているんだ」


 ドラはパンっと手を叩き、本題を切り出す。


「さてと。契約を始めよう」


 レーデを広場の中心に存在する祭壇に連れていく。


「軽く説明をしよう。これからこの祭壇で契約を行う。祭壇の中心に手を置いて魔力を込めると、その魔力に呼応して精霊が顕現するだろう。これから先は僕たちに一切の干渉は不可能になる。レーデが頑張ってサラマンダーを契約させるんだ」

「分かったわ。任せて」


 レーデの了承にこくりと頷くと、ドラは祭壇から離れて広場の端に俺と共に見守る体勢をとる。


「よし。始めようか。手を置いて魔力を込めればサラマンダーはきっと思いに応えてくれる」


 ドラの促しに、レーデはこくりと頷くと深呼吸を繰り返し、そして覚悟を決める。


「私の目の前にその姿を現しなさい──『サラマンダー』」


 レーデの呼び声に魔力が呼応するかの如く膨れ上がる。


 いつになく強大な魔力は、あるいは冒険者試験の時の魔力量を上回る。


 その様子を見ていたドラは笑みを浮かべる。


「ここからが本番だ。レーデはサラマンダーをものにすることが出来るかな?」

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