精霊王からの試練 〜獄炎の間 後編〜
第二ラウンド。
そうサラマンダーが告げて五分経った。
たったそれだけの時間なのに、とてつもない疲労感が俺を襲うが、集中は切らせない。
「ほら。上手に避けてみろ──『火球』」
片手間に『火球』を連発するサラマンダー。
底なしの魔力になんども奪おうと奮闘するが、『魔力制御』が完璧であるがゆえにそれは叶わない。
「ウィルとシェイドよりも強いッ!!」
「当たり前だ。精霊の強さとは生まれた年月に比例する。俺はユグドラシルの旦那の次に生まれた精霊だぜ? 新米には負けんよ」
そう言ってみせるサラマンダーはウィルとシェイドには持ち合わせていない余裕があった。
「さて火球も飽きたし、次は拳で──『獄炎の拳』」
サラマンダーの拳に集約された魔力は炎にへと変換される。
それを見た瞬間、本能的に察した。
──ヤバい。
「──ッ! <銀滅の拳>っ!!」
重なり合う拳と拳。
それは均衡を保つことなく、俺が敗れた。
「グアッ!」
「残念ながら俺の方が上だったな」
負傷した拳をぶら下げながら、考える。
勝つために必要なのは決定打である。
<連撃>を放っても決定打にはならなかった。
だから完璧なタイミングで<銀滅の拳>をぶち込まなければならない。
しかも右腕の様子をみて一発が限度。
左腕も痺れは取れているとはいえ、第一の試練により負傷している。
既に満身創痍といっても過言ではない。
だけど勝たなきゃならない。
「良いっ! その目。その目だっ! 前の奴も同じ目をしていた。だからこそ〝特異点〟は面白いッ!!」
──やるっきゃねぇ。
「さぁ来いよ。サラマンダー。てめぇの全力をぶつけてこいっ!」
「ハッ。満身創痍が何言っている──と言いたいところだが、いいぜ。乗ってやる。お前の最高を見せてくれ、ルーロッ!」
瞬間、サラマンダーの魔力がとてつもなく跳ね上がった。
その膨大な魔力は全てがコントロールされており、そして集約する。
「さぁ行くぞ──『獄炎龍の咆哮』」
濃密な魔力は巨大なドラゴンを形成する。
俺が超えなければならない壁。それに等しい一撃が向かってきている。
「<全開出力解放>」
全身の力を抜いて、魔力に集中する。
迫り来る巨大な炎の塊を目の前に、俺は両手に集めたありったけの魔力を放つ。
「喰らいやがれ──<銀滅の魔砲>」
燃費は悪いが、その分俺の持つ技で一番の魔力放出による広範囲攻撃。
集約された銀色の魔力は一直線に『獄炎龍の咆哮』とぶつかり合う。
「ハッ。確かに凄い技だが、俺の魔法には及ばないぜッ!」
サラマンダーの言う通り<銀滅の魔砲>が押されている。
だが、少しの間による均衡を俺は望んでいた。
「馬鹿がッ!! そんな事をしたら──っ!」
サラマンダーの驚愕の声が耳に入ってくるがそんなもんは知らん。
勝つために必要なことなのだから、実行する他ないだろう?
「<魔力・絶>ッ!!」
『魔力制御』とは術者に近ければ近いほど完璧である。
が、術者より距離が離れていればその管轄を少しばかり外れるのだ。
だから『獄炎龍の咆哮』に向かって手を突き出し、思いっきり魔力を吸ってやった。
こんなことをしても手を火傷するだけで微量な魔力しか得られない。
「だけどこれだけあれば──ッ!」
激しく衝突しあう銀と紅。
その間を<縮地>で駆け抜ける。
「最初からこれが目的で──ッ!?」
全魔力を込めた攻撃を囮にして絶対的な隙を作り出した。
「強大な魔法であればあるほどスパンが長くなる。それを狙ったのか」
「まぁね」
以前から魔力奪取で極端に魔力が減ったことにより気を失った人がいただろう。
あれは体が急に減った魔力にビックリしているのだ。そしてそれは魔法の使用の際にも同じことが起こっている。
簡単な魔法であればそんなにスパンはない。それこそ先程の『火球』のように連続で使用しても問題は無い。
だが『獄炎龍の咆哮』のような強力な魔法は話が変わってくる。
そこを突いたってわけだ。
「見事だ。渾身の一撃を頼むぜ」
「そりゃあどうも。なら遠慮なく──<銀滅の拳>」
先程奪った魔力を込めてサラマンダーに向かって放つ。
銀色の光を放つ一撃はサラマンダーの顔面にクリーンヒットしたのだった。
「··········あれ?」
記憶が顔面を殴ったところで止まっている。
「ようやく起きたか?」
「サラマンダー·····か?」
「全く、勝った奴が負けた奴よりも重症でどうするよ」
上体を起こすと全身が悲鳴を上げる。
「ほれ、肩を貸すぜ」
「ありがとう」
サラマンダーに肩を貸してもらい、ようやく立ち上がる。
部屋を見渡すと激戦の後がしっかりと残っており、半壊していた。
「俺ってどのくらい眠ってた?」
「うーん。そんなに長くはない。十分ぐらいだ」
歩きながら、気になることを質問していく。
「前に来た奴ってさ。どんな奴だった?」
「あー。ルーロみたいな奴だな。魔力操作が恐ろしい程に上手くてよ。次々と試練を突破されちまったよ」
「·····正直に俺とそいつどのくらいの差があるかな」
俺の質問にサラマンダーは即答した。
「天と地の差」
「·····そうか」
まだ師匠には遠く及ばないのか。
「まぁそんなに落ち込むなよ。アレは本当におかしいんだ。纏っている魔力量は少ないくせに放つ拳も繰り出す蹴りも恐ろしく重いし速い。その瞬間だけとんでもない魔力を纏っている感じがした」
「その、瞬間·····」
俺の魔力操作はまだまだだったな。
「いいさ。いずれ抜かしてみせる」
「その意気だ。おっ、そろそろ外だ」
扉を抜け、長い廊下を歩いた先に外が見える。
澄んだ青空に燦々と煌めく太陽。
のどかで広大な草原の先に巨大な大木がそびえ立っている。
「あれがユグドラシル。この精霊界を創り出した世界樹にして精霊王の本体」
隣で笑みを浮かべたサラマンダーは言った。
「見事、精霊王からの試練を攻略した〝特異点〟のルーロ。ようこそ精霊界へ」
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