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精霊王からの試練 〜獄炎の間 前編〜


「待ちかねたぜ。ルーロ」


 扉を開いた先に立っていたのは、燃えるような赤い髪をなびかせた犬歯をむき出しにした青年だった。


「お前がサラマンダーなのか?」

「まぁそうだな」

「ならレーデも知ってるのか」


 俺がレーデと言っても伝わらない様子で疑問符を浮かべていた。


「ほら、前に現れてくれたんじゃねぇか。小さなドラゴンの姿でさ」


 と、ここまで説明するとあぁと頷く。


「それは俺じゃねぇな。他の奴らは言ってないのか? 俺たちは魔力の集合体なんだよ」

「そういえば、ウィルとシェイドが同じことを言ってたな。代わりがいるとかなんとか」

「そう。魔力が集合すれば精霊が生まれる。多分、そのレーデっていう奴の魔力が高密度になったことによりサラマンダーが新たに生まれたんだよ」


 サラマンダーの説明に頷く。


 じゃあサラマンダーの一撃からレーデの魔力しか感じられなかったのはサラマンダーが手を貸してないというわけでなく、レーデの魔力から生まれたからというわけなのか。


「──ということは、あの時のサラマンダーは·····?」

「レーデの魔力が急激に減ったことにより姿を保てなかったんだろうよ。今頃は復活してるはずさ」


 知れば知るほど精霊っていうのが面白いと素直に思う。


「·····ん? サラマンダーって名前じゃなくて種族名的なものなのか?」

「そうだ。お前らの言うところの五大精霊──木の精霊エント。水の精霊ウンディーネ。闇の精霊シェイド。光の精霊ウィル。そして火の精霊サラマンダーは精霊っていうカテゴリの中の項目で、真名は別にある」

「へぇ。お前の真名はなんて言うんだ?」

「真名は基本的に契約者にしか伝えられないんだ。理由は様々だが、一番大きい理由は契約者以外に真名を聞き取ることが出来ないってことだ。だから好きに呼んでもらって構わない」


 とりあえずはサラマンダーでいいか。


「さて、そろそろ試練の説明に入ろうか」

「おうっ!」


 俺の気合いの入った声を聞いて、サラマンダーはニヤッと笑う。


「俺の試練は単純に殴り合い。つまり喧嘩だ」

「·····喧嘩?」

「そう。武器の一切を使わない拳だけの勝負。魔法の使用──つってもルーロは使えないか。まぁ武器の使用以外の全てがありの喧嘩だ」


 なるほどシンプルで簡単だ。


「言っておくが、お前の言うレーデとやらが顕現させたサラマンダーより俺は遥かに強いぞ?」

「分かってるよ」


 元より俺はそのつもりだ。


 精霊のことを知らなかっただけで、シェイドから釘も刺されている。

 最初からコイツを侮ってはいない。


「さて始めようか。時間無制限の殴り合い。片方が負けを認めるまで続く『獄炎の間』。最後の試練の開始だっ!」


 瞬間、サラマンダーが物凄い速さで迫ってきた。


「足の裏から火を吹き出して──っ!?」

「ハッ。最初の一撃貰ったぜっ!」


 勢いそのままにサラマンダーの重い拳が顔面にクリーンヒットした。


「いっつぅ〜っ!!」

「ほらっ、ルーロも本気を出せよ。前の奴と同じならあのバカ強いやつをもってんだろ」


 そういうことなら──ファースト解放っ!


「いいねぇ。あの時は負けたが、今回は負けねぇぞっ!! ──『獄炎の闘技場』」


 サラマンダーは地面に手を着くと火を着火させて、燃え盛るリングを形成した。


「さて、こっから本気だぜっ! ちょっとやそっとじゃあ消えねぇぞっ!」

「なら試してみるか──<銀滅の拳>」


 地面に向かって<銀滅の拳>を放つ。


 前も目くらましとして使った手だが、今回は別の目的だ。


「ルーロの一撃でも火は消えなかったみたいだぜ。それに目くらましつっても俺には効かない──『燃え盛る鎧』」


 サラマンダーは火の鎧を纏った。


 そんなところにわざわざ手を突っ込む馬鹿はいない。

 これからサラマンダーの一方的な攻撃が始まることだろう。


「だけど──『銀滅の弾丸』」


 魔力を凝縮させて床を壊した際に転がった小石にコーティングする。


 それを思いっきり投げた。


「あっぶねぇっ!?」


 サラマンダーは寸前に避けたようだ。


「当たってくれたら嬉しかったんだがな」

「やることがドSだなルーロは。殴り合いって言ったろ?」

「それだったらサラマンダーも『燃え盛る鎧』を解けよ。そもそも武器は使用してないし、それに最初っからルール無視の喧嘩がしたかっただけだろ?」


 俺の言葉に不敵な笑みを浮べて、返す。


「あぁ。そうだ。俺が求めるのは熱いバトル。あの手この手で泥臭くただ〝勝利〟を求めて挑んでくる又は挑むそんなバトルを望んでいるんだ」


 なるほど確かに手強い。


「──だけど負けるつもりはない」

「当たり前だ。最初からそのつもりで来いよ」


 互いにジリジリと詰め寄る。


 最初に動いたのはサラマンダーだ。


「ルーロが床を殴った理由はフィールドの不安定化と小石の確保。それにビビってたら勝ちなんて取れねぇ──『荒れ狂う獄炎』」


 右手に魔法陣が浮かんだかと思えば勢いよく炎が噴射された。


「<魔力・絶>」

「──そう来るだろうよっ!!」


 魔力を奪った先にサラマンダーはいなく、後ろを振り返った瞬間、顔面にモロにくらった。


「このやろっ!」

「いいねぇ。殴り会おうかっ!!」


 そのまま殴り合いの嵐。


「<連撃>」


 魔力のこもった拳を顔面に右手に足にと叩き込むが、サラマンダーも負けじと俺に打ち込んでくる。


「『放出』」


 ファーストのおかげか有利に事が運ぶと思ったが、流れを変えるようにサラマンダーは足から炎を放出し、蹴りを繰り出してきた。


 顎に目掛けて繰り出された蹴りは、防げるはずもなく喰らった。

 ぐらつく視界にサラマンダーは追い討ちをかけるかのように拳の嵐を繰り出してくる。


「せ、セカンド解放っ!!」


 俺は苦し紛れに解放時の解き放たれた魔力でサラマンダーを吹き飛ばす。


「おっ? それって次の段階があるのか」

「まぁそうだ。俺も使う予定ではなかったんだがな」

「いや、更に奥の手を出させてやる。ほれ、第二ラウンドといこうか?」

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