精霊王からの試練 〜光闇の間〜
「お次は·····お出迎えか?」
第三の試練。その部屋に入ると容姿がそっくりの二人の少女がいた。
「ようこそ。ここは光と闇が支配する間。『光闇の間』です」
「ですっ!」
金髪と黒髪の少女たちは互いに手を取り合いニコッと笑顔を浮かべる。
「私は光の精霊──ウィルです。どうぞよろしくお願いします」
「僕は闇の精霊──シェイドです。どうぞよろしくねっ!」
「俺はルーロだ。よろしくな」
互いに自己紹介が済んだところでウィルが試験の説明に入る。
「既にお察しの通り四つの試練は五大精霊である我々が担当しています」
「そして僕たちの試練は簡単。それは──」
「「避ける」」
「避ける·····?」
魔法を避ければいいのだろうか。
「この試験は貴方が考えるほど単純ではありません。簡単であるからと舐めてかからないことを推奨します」
「じゃあ説明に入りますっ! これから五分間僕たちが魔法を放つのでそれを避けてください。以上ですっ!」
そしてウィルが尋ねる。
「さて試練を開始しますか?」
「もちろんっ!」
そう答えた瞬間、部屋に設置されたタイマーが始まった。
「じゃあ僕から行くよっ! ──『追尾する闇』」
片手から放たれた魔法から黒いもやが現れると俺に迫ってきた。
「なるほど初手にこれを打つことで俺の自由を制限するってわけか」
「ご明察っ!」
「そして私も魔法を──『降り注ぐ太陽』」
部屋全体が明るく照らし出される。
視界が遮られ、更に制限がかかった。
「あっ、言い忘れたけど魔法を消しちゃあダメだよ。前はそれで消されてすぐに突破されちゃったからね」
「そうかよっ!」
クソっ、俺の手を封じられたか。
それに前って絶対師匠の事じゃねぇかっ!
「ではどんどん行きましょうか──『光速の矢』」
光属性の魔法『光速の矢』。第一試練でもあった『雷撃の矢』並の速さを誇る光速魔法。
音速を超える速さに俺は為す術なくやられる──とアイツらは思っているんだろうな。
「──えっ!? 嘘·····避けてる!?」
不敵な笑みを浮かべながら、俺は目を瞑り努めて冷静に『光速の矢』を避ける。
相手が悪かったな。魔力に関して人一倍敏感な俺からしたら避けるのなんて朝飯前だ。
「シェイド落ち着きなさい。貴方も魔法を放つのっ!」
「ウィルちゃん任せて──『闇穴』」
闇属性魔法『闇穴』。闇属性の一般的な本質は〝吸引〟。
ゆえに『闇穴』とは恐ろしいほどの吸引力を誇る魔法である。
シェイドが考えていることは『闇穴』を手当り次第に出現させて俺を捕まえることだろう。
「──だがあまい」
「『光速の矢』が『闇穴』に吸い込まれてっ!」
そりゃあそうだ。
ウィルは俺を狙って『光速の矢』を放っている。そこに『闇穴』が出現すれば自然とそっちに吸い込まれるのは自然だろう。
「──でもなんでルーロくんは·····っ!?」
「気づいたようだな」
シェイドが目を見開く。
俺は今セカンドを解放している。ファーストだと吸い込まれるかもしれないが、セカンドなら話は別だ。
といっても解放状態ってのはどの段階でも消費魔力は激しいものだ。
だからこそ──
「シェイドっ! 魔力がっ!?」
「えっ!?」
彼女たちはようやく気づいたのだろう。
自分の魔力が恐ろしく速く減っていることに。
「魔法は消してないぜ?」
「やられたっ!!」
魔力を奪って魔法を消したわけじゃない。だからこれはルール違反じゃない。
「ウィルちゃん·····」
「分かってます」
『降り注ぐ太陽』と『追尾する闇』が消滅する。
「属性適性を持たない〝特異点〟のルーロ。貴方に最後の試練を受けることを認めましょう」
「やったぜっ!」
いつの間にか左腕の痺れもある程度解けてきたし、最後の試練もなんとかなりそうだな。
「じゃあ僕たちはしばらくお休みかな」
「おいっ、体が透けてるぞ!?」
ウィルとシェイドの体が半透明になってきた。
「私たちは魔力の集合体。魔力を使ってしかも奪われたのなら消えるのは当たり前でしょう」
「大丈夫なのか!?」
「──っ。·····不思議ですね。私たちをこんな風にした貴方が心配するなんて」
「そりゃあ俺がしたからこそ責任は感じるし、それに目の前で消えそうな誰かがいたら心配するのも当然だろ?」
俺の言い分を聞いてウィルとシェイドは疑問符を浮かべる。
「僕たちは魔力の集合体だから代わりはいるんだよ? それなのに心配するなんてルーロくんは馬鹿なんだね」
「よく言われるよ。でも、たとえ代わりがいても今のウィルとシェイドは消えるんだから、やっぱ心配するさ」
そんな俺に笑ってウィルは言う。
「本当に面白い·····そんな人間に、そんな貴方にますます興味が湧きます。安心してください。私たちは魔力を回復するために消えるだけです。本当に消える訳ではございませんよ」
「·····そうか。良かった」
そして彼女たちは徐々に消えていく。
透明になっていく中気まぐれかシェイドが独りごちるように呟いた。
「最後の試練。サラマンダーくんは手強いよ」
そう言って消えていった二人。
「やっぱ最後の試練はサラマンダー。火の精霊か·····」
あの時、冒険者試験で一度だけ姿を見せた五大精霊の中で火を司る最高位の存在。
「ファーストのフルバーストの拳圧であの一撃を吹き飛ばしたけど。実際のところはもっと凄いんだろうな」
レーデの元に顕現した時、サラマンダーが使用した魔力はレーデの魔力のみ。
あの時、サラマンダー自身の魔力も使われていたら決して拳圧だけじゃあ吹き飛ばせなかっただろう。
それに魔力も膨大過ぎて一気に吸えるか分からない。
「最後は気を引き締めて行こうかっ!」
そして緊張が走る中、最後の扉を開いた。
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