魔力制御
「·····さて、どうするか」
出発したはいいが、今はもう夜に近しい時間帯だった。
目も効かなくなってきた頃だし、今夜は野宿で明日、センミチソウを採取しに行くのがいいだろう。
「──ということで、クナイ」
「ん」
「今日は野宿だ!」
そのためには──
「水がある場所を探す」
「?」
「飲水と水浴び、他にも水ってのは重要になってくる。まぁ、水場の近くで野宿するっていうよりかは水場を把握する事の方がいいかな」
俺の解説にクナイが賞賛を送ってくれた。
「凄い。サバイバルの経験がある?」
「··········まぁな、あの時は地獄だった」
眠れる夜などない。
常に神経は魔物に尖らし、些細な変化さえも見逃さない毎日。
··········あの時は本当に地獄だった。
「·····私もあった」
「へぇ、女の子もサバイバルなんてするんだな。知らなかったよ」
「──ッ!」
クナイの動揺。
今、包帯のせいで顔色は伺えないが、多分、恥ずかしがっているのだろう。
「私、女の子だなんて言われたことないから」
「ん、なんで?」
「性別なんて昔に捨てた。必要なのは技術、不要なのは感情。そう言われて育ってきた」
その価値観と強大な魔力、そして極めつけの魔属性が孤立した原因か·····。
「技術が必要なのは当たり前だ。まぁ、そこに感情が要らないってのも分かる」
あの一年間に及ぶ修行の数々で感情ってのは殆ど要らない存在だった。
いちいち驚いている場合なんてないし、怒りも悲しみも魔物を倒すのに不要である。
せれでも、俺があんな地獄を生き抜けていけたのは感情があったからだ。
「感情がなきゃ、楽しく生きられないだろうよ」
師匠がいて、俺は毎日が楽しかった。
聞いたこともないような冒険譚を聞けたし、『龍殺し』と過ごした日常を聞けた。
「何かに笑って、それを共有して、そして仲を深めて行けたら、もっと楽しい人生が送れると思うんだ」
育てられた環境、纏っている包帯、そして極めつけの魔属性。
それで『化け物』だなんて、おかしな話だ。
「──つか、その包帯をつけてる意味は本当にないと思うぞ?」
「え?」
「だって、魔力を押さえつける為につけてるんだろ?」
「·····うん」
「俺、魔力の操作に関しては世界二位だから」
一位は師匠だしな。
でも、いつかは抜かす。
っと、それよりも。
「魔力が多いなら使いこなせばいい」
「でも、出来ない」
「やって試したのか?」
「(こくこく)」
魔力が扱えないってことは無い。
魔力操作は子供でも出来る。それが出来ないのは教えが悪いだけだ。
「ちょっと手を出してみろ」
「?」
クナイがおずおずと手を差し出す。
「いいか、魔力ってのは未知なる力じゃない。自分自身なんだ」
「(こくこく)」
「手を握ってみろ」
クナイは手を握る。
まるでこれが何? と言わんばかりにこちらを見てくる。
「今、手を握れただろ?」
「(こくこく)」
「じゃあイメージとして魔力を握ってるっていう風にしてやってみろ」
「──ッ!」
どうやら気づいたようだな。
「魔力を別々で考えるからこんがらがる。今、握ってみてどんな感じだった?」
「·····なんか、魔力がキュって内側に入ってく感じ」
「じゃあ、その握ってる手を開いてイメージは魔力を解き放つ感じでやってみ」
「──グハッ」
やべっ!
急いで魔力を刈り取った。
「悪い、急にこれをやると破裂しそうになるんだよな」
「·····」
無言で睨んでくる。
目には涙も浮かんでいた。本当にヤバかったのだろう。
「すまん」
「··········許す」
これからは気をつけて教えていかないと。
「と、ということで、これが魔力を掴む修行って訳だ」
俺が一年の間にやったことである。
まずは自身の魔力を完璧に使いこなすために、今のようなことを一ヶ月ぐらいやった。
「今のように暴発したらまだ自身の魔力を掴みきってない証拠だ。完璧になれば」
俺は手を開いた。
瞬間、内に秘める俺の魔力が爆発的に解き放たれる。
「──ッ!」
「ほら、俺は苦しそうな素振りを見せないだろ?」
「(こくこく)」
「自分の耐えられる魔力の限界ギリギリで魔力を抑えているからだ」
魔力ってのは魔法を放つのに必要な力であり、人の身で耐えられるものじゃない。
少し説明するが。
魔力の低い人が自身の魔力を解き放てば、当たり前だが耐えられずに破裂する。
これは魔力の器が小さいからだ。
魔力の器が大きい人は生まれながらにして魔力量が多い。それこそクナイのように。
器が大きければ魔力はドンドン溜まっていく、そして零れるのだ。
多分、それがクナイを悩ます原因だろう。
だからその際限なく溢れ出る水をせき止めるかのように水道のネジを締めなければならない。
その動作を『魔力制御』と呼ぶ。
「──分かったか?」
「(こくこく)」
「だから、これが出来れば包帯なんて必要ない。試験が終わるまでに完璧に仕上げてやるよ」
「·····あ、あり──」
躊躇うクナイ。
ん? ありでも見つけたのだろうか?
「··········ありがとう」
「──ッ!」
ドキっとしてしまった。
包帯で顔は隠されているはずなのに、何故か幻覚のようにクナイの笑顔が見えた。
だから、俺もこう返した。
「どういたしまして」
クナイとの絆が少し、深まったように感じた。
下の✩✩✩✩✩から評価を。
ブクマ登録をしてくれるとモチベーションが上がります。




