いざ、精霊界へ
休暇もほどほどに俺たちは精霊に会うためにパングの外に出ていた。
のだが──
「な、なぁ·····」
「なんでしょうか?」
基本的に女子軍は仲がいい。
クナイとレーデは最初こそ反発していたものの、レーデの成長を境に仲が良くなっていった。
サクヤも王女だったからかコミュニケーション能力が非常に高く、仲良くなるのに時間はかからなかった。
カグヤも然りだ。俺たちのパーティにおいて一番年上ではあるが、時折みせるポンコツぶりがギャップを見せてもうパーティに馴染んでいる。
だが──
「最近みんな機嫌悪くない?」
「そんなこと、ない」
「いや、クナイたちが温泉から帰ってきてから睨み合ってるような気がするんだけど」
「誰のせいでこうなったと思ってんのよっ!」
「──えっ? 俺!?」
レーデの一言に驚く。
俺が悪いのか? えっだって·····え?
「·····なんか馬鹿らしくなってきたでござる」
「そうね。いつまでもこんな感じじゃあ迷惑をかけそうだし」
「ん。一時休戦」
「そうですね。でも、負けませんから」
俺を省いてみんな楽しそうだな。
とりあえず機嫌が治って (?)良かった。
「いいねぇ。青春だねぇ」
「──なんでそんなに馴染んでんだよ」
未だについてくるドラに思わずつっこむ。
「あはは。僕も精霊界に行きたいのさ」
「別に構わないけど·····もういいや」
どうせなんか言っても正論で返されるのだから。
相手にするだけ無駄ということだ。
「じゃあ早速見せてくれよ。星喰で次元を斬ってさ」
「·····分かった」
腰にさした星喰を引き抜く。
あの時はまじまじと見てなかったので、改めて見ると──美しい。
黒。いやこれは紅だろうか。深紅の刃が煌めき、そして美しさと同時に禍々しさを放つ。
ずっと見てると吸い込まれそうになる感じ。それが妖刀『星喰』である。
「よし星喰。仕事の時間だ──スキル『斬刻』発動」
斬るのはこの世界と精霊界を隔てる次元の壁。
そう願った瞬間、とてつもない怠さが襲ってくる。
「クッ。魔力消費が激しいな·····コレ」
今は斬るために必要な魔力を星喰に送っている最中だ。
今回は次元の壁を斬るというスケールのデカいことをするためだけあって莫大な量の魔力を星喰に吸われている。
「魔力消費で言ったらサードに届くか届かないかってところか」
サードの魔力消費は激しい。常時、最高峰の魔法を連発するが如く減っていく。
つまり、星喰の魔力消費は最高峰の魔法一発分ということだ。
「まぁ威力はそれぐらいのもんだよな」
最高峰で地形破壊や空間をねじ曲げるほどの威力。
次元を斬るってんならそれぐらいの魔力はいるだろうよ。
おっと。やっと溜まったか。
「行く、ぜ──『斬刻』ッ!」
思いっきり妖刀を振る。
刹那。何も無かった綺麗な空間にピキっと亀裂が走り、そして砕かれた。
「これが次元の扉ですか!?」
「·····多分な」
サクヤの問いにそう答えると、カグヤが補足してくれた。
「拙者も訪れたことはないでござるが、精霊界は通常世界と大きな次元の壁で隔てられているでござる。それを星喰で斬った。つまりはこの中に飛び込めば精霊界に辿り着くことが出来るということでござる」
「──だとよ。よしっ、行ってみるとするか」
だが、万が一ということがある。
「ほれ、クナイ」
「·····ん?」
「手を繋ぐんだよ。ほれっ、みんなもっ!」
次元という未知のものだ。
幸い入口は馬鹿みたいに広いんだから、みんなで手を繋いで飛び込めばはぐれることは無いだろう。
「絶対手を離すなよ?」
左手でドラを。右手でクナイの手を掴み、あとはクナイの右手から順に女子軍が手を繋いでいく。
レーデやサクヤ、カグヤがジト目でクナイを睨んでいる。
そんな彼女たちにクナイはドヤ顔をした。
「ふふんっ」
「クッ。やっぱりクナイがっ!」
「何やってんだ。ほら、閉じていくから速く行くぞ」
全く、なんでそんなになるんだか。
まぁ今はそれどころじゃない。本当に閉じていきそうなので速めに行くとしよう。
そして俺たちは次元の扉に思いっきり飛び込んだのだった。
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