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タイミング最悪過ぎな男の子


 さて、パングで目標だった米も食えたし、レーデにプレゼントはしたし、クナイやサクヤも楽しんでもらえた。


 これで、大体の用事は終わったのでカグヤとの手合わせをやる為今はパングの外に出ていた。


「こうして手合わせしたいとずっと思っていたでござるよ」

「まぁ、俺もカグヤの実力はサイケとの一件以外では見てないから、気になってたよ」


 星喰の記憶で見てきたのは彼女の努力だ。

 オボロさんとの稽古の数々。その歳月が生んだ研鑽の全てを見させて貰おう。


「わざと負けるってのもありだけど」

「それでは意味が無いでござる。ルーロ殿に勝って、ルーロ殿を守れる程の強さを見せつけた時に言いたいのでござる」

「そうか。まぁそんなことだろうと思ってるから、手加減は無しで行くぞ」


 俺は最初からセカンドを解放する。


 これがクナイやレーデのような相手だったら、ファーストで充分やり合えると思うが何せ先読みをしてくる相手だ。

 そのさらに先を行くというのは用意ではない。


「これが今の俺が出せる全力。カグヤ、楽しませてくれよ」

「それはこっちのセリフでござるっ!」


 踏み込みが速いっ!

 分かってはいたが、やはり記憶の中のカグヤとは段違いに強いっ!


「──<海天割>っ!」


 上段から振り下ろされた力強い一撃。


 それは避けると、流れるように続けてくる。


「<十字切り>」


 オボロさんのあれかっ!

 体勢が不十分な中で横と縦の同時攻撃。


「だけど、俺も成長してるんだよねっ!」


 移動術──<縮地>。


「ルーロ。私たち──忍者の技を使ってる」

「実は影でコソコソと練習してたりする」


 今まで見よう見まねで頑張っていたのだが、なかなか上手く出来ず悩んでいた。

 そんな時に星喰の中でオボロさんと戦った時、縮地ではないがオボロさんの素早い踏み込みを見て閃いたんだ。


「俺は今まで力を込めていたけど、実際は力なんて要らないって分かったんだよ」

「父上は華奢であるがゆえに力を得意とした技は苦手でござる。それを一戦のうちに見極めたのでござるかっ!?」

「そうだね。オボロさんは凄く力の抜き加減としなやかさが上手かったんだ」


 これが俺の成長だ。


「それは拙者の星詠を使ってたとしても気づかないでござるな」

「まだ星詠を使ってなかったか」

「別に侮っている訳では無いでござる。ただ、手の内を探ってただけ」


 するとカグヤは目を閉じた。


「拙者の記憶にあるルーロ殿は凄く強かったでござる。だからこそ、更なる手があると踏んだ。先読みも成長までは読むことが難しいでござるからな」


 つまりはここからが本番。しかも──


「「短期決戦」」

「ハッ。先読みやがって」

「拙者も目を痛める可能性があるので、本気でいかせてもらうでござる。ルーロ殿の言葉を借りるなら──」


「一瞬で終わらせてやる、でござる」


 瞬間、カグヤの姿が消える。


「チッ──<縮地>」

「分かってるでござるよ」


 背後から現れた俺を、見向きもせずに刀を後ろに突き出してきた。


「クソっ」

「驚くべき反射速度。右に避けるのでござるな」


 やっべぇ。俺の動きを完璧に読んでやがる。


「焦りが視えるでござる」

「ハッ、んなわけないだろっ!」


 本当にヤバい。


「<全開出力解放(フルバースト)>」


 慌てて二段階の全力を振り絞り、拳に魔力を集約させる。


「<銀滅の拳>」

「その技の弱点は当てなければなるないこと。確かに通常なら当たる可能性があるかもしれないでござるが、先読みしていたら話は別でござる」


 また見向きもせずに避ける。


 そして俺と目が合った。


「フッ。今回は勝ちを頂くでござる──<百鬼刀閃>」


 カグヤの刀に魔力が集約し始め、その凄まじい密度に俺は悟ってしまった。


 ──負けた、と。


「まいった」


 喉元に刀を突きつけられ、俺は両手で降参のポーズを取った。


「ふふんっ。拙者も強くなったでござろう?」

「そうだな」


 いくら先読みしたからと言っても、勝てるやつは少ない。


 なぜなら、俺は身体強化に全ての魔力を注いでいるためにある一定までの攻撃は意味をなさないからだ。


 しかし、最後の勝ちを確信したカグヤから放たれようとしていた技は、俺の身体強化を楽々壊し致命傷まで追い込むほどの魔力を帯びていた。


 仮に魔力を奪おうとも魔力制御までもが完璧なんだから、勝ち目などない。


「はぁ。本当に強くなったな」

「えへへっ、ずっとこの日を待っていたからでござるからな」


 本当にすごい奴だな。カグヤは。


「それで、その。聞いて欲しい言葉があって·····」


 カグヤの言葉で、戦う前からずっと言っていることを思い出す。


「そういえばそうだったな。なんだ?」

「あ、あの·····」


 レーデやクナイ、サクヤがまじまじと見つめる中カグヤはその口を開いた。


「拙者はあの時からずっと──」

「やっほぉっ! ドラちゃん、参上っ!!」


 最悪のタイミングで、しかもカグヤとセリフを被せながら登場した男の子に場が硬直した。

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