パングを楽しもう3
お食事処セイレンを出て、俺たちは再度パングをブラブラと歩いていた。
「さて、飯も食ったしどうする?」
「·····あ、あの」
俺の問いにおずおずとサクヤが手を上げる。
いつもと様子が違うサクヤに疑問符を浮かべつつ、尋ねると。
「私にもプレゼントが欲しいなぁ。なんて」
「プレゼント?」
「はい。クナイは服を。カグヤさんはペンダントを頂いているのにも関わらず、私には最近何も無くて·····」
「サクヤはパーカー貰ってるでしょっ!」
レーデのツッコミに一瞬、サクヤの目は泳いだ。
それを見逃さず、レーデが怒涛の言葉責め。
「何も貰ってないのは私だけ。私だけよっ!」
「でも·····幼馴染ですしおすし」
「一年間会えなかったけどね。久しぶりに会ったら勝手に成長してて、置いてけぼりにされてるけどねっ!」
「·····す、すみません」
肩を激しく上下し、息を切らすレーデ。
凄まじい剣幕にさすがのサクヤも退いたほどだ。
「──というか、プレゼント欲しいなら言えば良かったのに」
「うぐっ。た、確かに欲しいんだけど··········誰でも良いって訳じゃ·····」
モジモジしてて聞こえないや。
まぁ、ルーロには貰いたくないとかそんなんだろう。だが、残念だったな。しっかりとあげてやるぜ。
最近、レーデには頑張って貰ってるからな。俺からの報酬ってことだ。
ということで、早速パングの中を見渡す。
パングは王都よりも出店が多く、食べ物や飲み物、装備品などが充実しているのだが、この中でレーデに合いそうなプレゼントか。
「·····というか、レーデって花が好きだったけど他には何が好きなんだ?」
「わ、私は·····アンタ以外なら基本なんでも好きよ」
師匠。ツンデレって分かりませんっ!
デレが来ることを未だに信じております。今のところツンしかないからっ!
「クナイやカグヤとかは武器好きだと思うんだけど」
話をすり替えるように、クナイたちに話を振る。
「そうでござるね。拙者は刀に目がないでござる。この刀も父上が生誕の日に譲ってくださった刀ゆえ」
「そうなのか。銘とかは?」
「聞いて驚かないでござるよ? この刀は名刀に数えられる、かつてかの剣聖が使っていた刀──『吸血の王刀』でござるっ!」
勇者伝説に出てくる剣聖──シセン。
まさか、その人が使っていた刀がそれなのか。
「·····偽物じゃないのか?」
「そんな訳ないでござる。何故ならば、シセン様は『星詠』の開祖でござるからな」
「は!? 聞いてないんだけどっ!」
「言ってないでござるからな」
カグヤといると退屈しそうにない。素直にそう思った瞬間だった。
そんな時、俺の袖をクイクイっとクナイが摘む。
「私も、武器好き」
「お、おう。そうか·····?」
「今度、私に作って」
「分かったけど。·····なんで今?」
俺の質問には答えずに、クナイはジト目をカグヤに向けていた。
師匠。訂正します。女の子の気持ちが分かりませんっ!
はぁ。こんなんじゃあ一生分からねぇな。過去の記憶も思い出して、レーデに似合うプレゼントを──
「あっ、そういえば。ネル (妹)が言ってたアレにしようかっ!」
「ネルちゃんがどうしたの?」
「フッ、閃いたんだよっ! まぁついてきなって」
身近な女の子からネルを思い出し、そういえば言っていたあの存在。
まだギルから追放される前、レーデの誕生日に何を贈ろうか迷っていた俺にネルが教えてくれた物。
「これ──っ!」
「髪飾り?」
「そうっ!」
レーデは昔からツインテールでまとめていてそれを見たネルがよく言っていた。
「レーデは可愛い顔をしているから、他の髪型も試した方がいいってな」
「へ·····っ!?」
瞬間、ボッと顔全体が紅くなる。
「ネルが言ってたんだけどさ」
「あっ、うん。ネルちゃんね。ネルちゃん·····」
「俺もその通りだなって思ったわけよ」
「──っ!」
再度紅くなって全く忙しい奴だな。
これがもしかしてデレと言うやつなのか? よく分からないが、罵倒してくる訳でもないし嬉しいまではいかないだろうが、気分はいいだろう。
「ということでパングにあったこれ」
髪飾り。これはかんざしだろうか?
「アサガオのかんざし。きっと似合うよ」
澄み渡るような綺麗な青色のアサガオ。
「おっちゃん。これ一つ」
「あいよ。モテる男は違うねぇっ!」
「やっぱ、そう見えますか」
「ハッ、冗談だよっ!」
軽く店主に心に刺さる言葉を言われつつ、早速プレゼントした。
「大切に使ってくれよな」
「·····うん。大切にするわ」
久しぶりに見た彼女の笑顔は、間違いなく〝デレ〟であると確信するほどに、可愛かったのだった。




