試験開始
「貴方ねぇ·····」
クナイと一緒にエルサの元へ向かった際に、第一声がそれだった。
「何か問題でも?」
「一応聞くけど、なんでその子にしたの?」
エルサの一言にクナイがビクッと震えた。
そんなクナイの頭をポンっと叩きながら、俺は言った。
「魔力が綺麗だったから、だけど?」
「「へ?」」
俺は本当のことを言っただけなのに、なんでこんな反応をされなきゃいけないんだ?
俺の疑問を他所に、エルサは突然笑いだした。
「そうだったわね。貴方たちは魔力が視えるんだった」
「?」
未だに話についていけないクナイが、俺に助けを求める。
クナイはパーティメンバーだ。
俺のことは説明しないとな。
「俺は属性適性がないんだ」
「!?」
「その代わり『魔力操作』をこれでもかってぐらい鍛えた。その結果、魔力のことは誰よりも一番分かるようになったわけだ。分かったか?」
「(こくこく)」
一生懸命に首を縦に降っている。
可愛いなぁ。
「それよりも、なんで包帯なんて巻いてんだ?」
「!?」
クナイの反応に見かねたのか、エルサが代わりに答えてくれた。
「恐らくその包帯は魔力を抑えつけるものよ」
「··········へぇ」
全身に巻かないといけないレベルでヤバい魔力ってのは気になるが·····
「(ふるふる)」
本人が嫌がっているならいいか。
「ほら、貴方たち、試験が始まるわよ」
「·····エルサは反対しないんだな」
「何かしら?」
俺がクナイを連れ出してから、周りの目線がキツくなってきた。これを見て、心地いい者はいない。
俺は承知で連れてきた。
だが、エルサは違う。このままだと、エルサの評価まで──
「それ以上は考えないで欲しいわ」
「──ッ!」
「人の考えはある程度読めるの。貴方の場合は顔に出るから余計にね。私は『化け物』なんて思ってないし、貴方の決断を責めている訳じゃない。ただ気になっただけよ」
気になったか。
「ということはわざと『化け物』とか言ったんすね」
「そういうことになるわね。ごめんなさい、クナイさんを蔑むようなことを言ってしまって」
クナイがあわあわしている。
戸惑っているのだろうか。
「だ、大丈夫」
「そう、なら良かったわ。ルーロは貴方のことを悪いようにはしない。むしろ、貴方の悩みを解決してくれるかもしれないわよ?」
「ッ!」
ん? 悩み·····?
「まぁ、私は関係ないから。あとは本人から聞きなさい。ほら、試験に遅刻するなんて失格になるわよ?」
「やべっ! クナイ! 行こーぜ」
「(こくこく)」
悩みのことは気になるが、試験開始の合図が鳴り響いたことにより、頭の隅に追いやられた。
「これから、冒険者試験を開始します」
恐らく冒険者であろう男が俺らに向かって言った。
「僕の名前はセイノと言います。今回の試験の担当になりました。B級冒険者なのでそこそこ強いですよ」
冒険者には階級がある。
D級、C級、B級、A級、S級。の五段階であり、B級は中級冒険者だろうか。
まぁB級の仲でも上位とか下位とか存在するらしいので本当の所は分からない。
それに、言葉だけならなんとでも言える。実際、彼は冒険者プレートを見せてないので確証はない。ここで彼を見下すのはナンセンスだろう。
「試験は全部で三つ、これらの合計点数で合否を決めます。点数が上位の方々は数多くの援助を得られるので頑張ってください」
援助とはギルドからの恩恵のことだろう。
例えば、最初からC級で始まるとか、ギルド内、又は連なっている施設のサービスとかだろう。
一位を目指すんだ。全試験、最高評価でやってやるぜっ!
「はい。ということで、第一試験は薬草の採取です。採ってくる薬草は『センミチソウ』です」
「ふざけるなっ!」
「私たちのことをなめてるの!?」
セイノの言葉に全員がブーイングを上げている。
まぁ、当たり前か。センミチソウの採取なんて簡単だ。森で一日適当に捜索していたら、難なく見つけられる薬草である。
だが──
「黙ってください」
セイノの一言がブーイングを一斉に黙らせた。
歴戦を潜り抜けた戦士からの言葉だ。
必然とその言葉に圧が乗っている。
「薬草如きの簡単な仕事なんて思わないでくださいね? 一度でも外に出れば、何者にも襲われる覚悟がある状態で望んでください。冒険者は何時だって、危険が付き物ですから」
そして圧が解かれた。
「期間は一週間。では、薬草採取スタートです!」
その言葉に全員がスタートした。
「じゃあ、俺らも行くか」
「ん」
そして俺らもやや遅れてスタートした。
クナイちゃんはクールってよりは無言系のコミュ障ヒロインです。
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