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妖刀『星喰』の記憶〜輝夜〜


 ヤマトさんを担いで、安全なところに連れていく。


「ルーロくん、逃げて·····アレは化け物よ」

「分かってますよ。力に呑まれた化け物を退治するんで待っててください」


 魔力障壁で保険をかけて、『鬼神の牙刀』を引き抜く。


「そいつの言う通り逃げればいいじゃねぇか。どうせ出来ないことをカッコつけるなんて、一番だせぇ」

「古今東西、そういう強い言葉を使ってるやつほど弱いもんだぞ?」


 サイケの額に青筋が浮かぶ。


「ガキが──ッ!」


 素早い踏み込みで星喰を振るうが、生憎とそれを超えるほどの力を朝方目に焼き付けたばっかなんでな。


 しっかりと牙刀で受け止め、重心をずらし勢いを逸らす。

 バランスの崩れたサイケの背中を切りつけた。


「グッ、やりやがったな·····?」

「本当にお前、オボロさんを倒したのか? 全然弱いぜ?」

「黙れ──<崩撃>」


 凄まじいほどの剣気が集束して、濃密な力の塊が俺を襲うが、右手で空を切って対処する。

 或いは、初見であれば驚いていた攻撃ではあるが、カラクリさえ分かればこっちのもんだ。


「<崩撃>が消えた·····だと?」

「てめぇの攻撃のほとんどは凄まじい剣気──魔力をそのままぶつけているだけ。なら、俺の十八番で消せる」


 奪った魔力である程度回復したので、俺の全力の一段階目を解放する。


「<一段階・解放(ファーストリリース)>」


 言葉にするのと同時に内包された魔力が解き放たられる。


「なんだ、なんなんだ!? 俺よりも年下なのに·····なんで俺よりも──ッ」

「てめぇの事なんて知らねぇよ。どうして星喰を手に入れてまで力が欲しかったなんて、俺には分かりっこない。だけどな、その程度で満足してる程度じゃあ弱いまんまだ」


 どんだけ強くなっても更に上がいる。


 どれほど頑張っても、どんだけ努力しても上がいるんだ。


「苦しいのは自分だけなんて思うなよ。不幸自慢なんてしてる暇があったら、死ぬほど努力をしやがれ」


 みんな努力して力を手に入れている。

 

 俺の持論だが、努力した先に成功があるやつが天才なのだと思う。

 そんな天才になるために俺たちはスタートラインへ立つために努力をする。


「だから俺は止まっている暇なんてない。てめぇをぶっ飛ばして更に上に行くんだ」


 だから俺は敗北も今の攻防ですら成長の糧にする。


「喰らいやがれ──<死突>」


 この身で味わって、叩きつけられた実力の差も吸収して強さに変えていく。


 ファーストで底上げしたゴリ押しの<死突>はサイケの心臓を貫くため、更にスピードを上げる。


「ガキが·····説教なんて百年はえぇよっ!」


 既でのところでサイケの放出された魔力により吹き飛ばされる。


「·····いけない。アレは星喰の──っ!?」


 ヤマトさんの驚きの声が俺に届く。


「あれは·····?」

「ルーロくんは知らないだろうけど。星喰には空間を切り裂くほどの力がある。だけど、それは能力の一端に過ぎない·····」

「どういうことですか?」

「星喰のスキルの名前は『斬刻』。全てを切り刻む最凶の能力」


 そういうことなら目の前のアレを解釈出来る。


『コレならァァアア、貴様を圧倒的なまでにィィイイ、絶望へ貶める事が出来るゥゥウウ』


 馬鹿が·····そうなったら強くなることなんて無理に決まってるだろ。


『力の制御をぶった切ってやったぜェェエエ、アヒャヒャヒャ、これが強さ。圧倒的なまでの強さァァアアッ!!!』


 俺の目の前に立つサイケ──いや、サイケだったものは異形の姿で歪な笑いを見せる。


 力に溺れ、魔王の手足と同じ化け物にまで堕ちてしまったんだ。


「·····これは、なんでござるか·····?」


 最悪の場面でカグヤが戻ってきた。


「逃げろっ! 今のコイツは本当に見境がないぞッ!」

「──え?」


 瞬間、カグヤの姿が消える。


『アヒャヒャ、潰した。潰してやったぜェェエエッ!!』

「てめぇッ!」


 サイケの長く変化した腕には血が伝っていた。


 怒りでどうかなっちまいそうな俺に、意外な声が聞こえてきた。


「ルーロ殿っ! カグヤは拙者が逃がした」

「オボロさん!?」


 見たところ応急処置はされているが、それでも動けるのが奇跡なレベルだ。


 これもカグヤが頑張ったおかげだろう。


「あぁ··········そういう事か」


 やっと理解した。


 あの時、現実世界でサイケが恐れていたカグヤの力。

 あれは別にカグヤの刀を恐れたわけでも、星詠としての能力を恐れたんじゃない。


 ──諦めない力。


 単純ゆえに強大なもの。或いは星喰も星詠の力をも上回る人間が持てる力。


「なら、俺も負けている場合じゃないな」


 最初、オボロさんたちが生きていることを信じて被害を大きくさせないために村人たちを避難させた。


 致命傷のオボロさんが死なないことを信じて、諦めずに必死に応急処置を施した。


 それが結果的に繋がっていく。


 村人たちを避難させたから、今、サイケによって村人たちが沢山殺害されることは無かった。


 オボロさんに応急処置を施しそれが奇跡に繋がり、カグヤは助けられて生き延びている。


「アイツの直ぐ信じやすいポンコツみたいな性格も見直した方がいいな」

『何を言ってるゥゥウウ。貴様は今ここで死ぬ運命だァァアアッ!』


 ハッ、よりによって星詠の前で馬鹿なことを言うもんだ。


「カグヤ俺は死ぬのか?」

「いや、見事に倒して拙者たちに笑顔でピースするでござる」

「──だとよ」


 サイケの咆哮が響き渡るが、俺に不安なんてなく、自信を持って言えるだろう。


「俺の力は護るもんだ。()()()もよく見とけよ。俺の覚悟をっ!」


「──<流星>」


 フルバーストで魔力出力を最大まで解放して脚に力を込める。


 そして思いっきり跳躍した。


「ォォオオオオッ!!!」

『ァァアアッ!!』


 足から魔力を放出して、加速する。サイケ首を目掛けて飛来する姿は正しく流星。


 そして背中を見せた状態で着地した。


『てめぇの刀じゃあ俺の皮膚を切り裂くことは不可能だったみたいだなァ──ッ!?』


 鬼神の牙刀が折れるのと同時にサイケの体が上下半分にズレる。


「てめぇの境遇には同情しねぇが、今度はちゃんと力を手に入れろよ」


 最早、人間の体とは言い難いサイケの体は儚く塵となって消えていく。


 夜風が塵を運ぶ中、天を仰ぐ。


「·····雲ひとつない綺麗な夜だな。星々が輝いてみえる」


 カグヤ·····輝夜か。


 そんなしょうもない事を思いつつ、有言実行するため笑みを浮かべて──


「大勝利っ!」


 そんな俺のピースサインに、カグヤも笑って返してくれたのだった。

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