妖刀『星喰』の記憶〜決断〜
これが記憶だと·····?
「嘘だろ·····」
俺の耳に響く叫びも、泣き声も全てが星喰によって作られた記憶だなんて思えない。
俺はどうすればいい?
これは記憶なんだ。別に村の人たちを無視して、元凶であるサイケを倒せば乗り越えることが出来るということになる。
だけど、その間にも村人たちが死んでしまう。
でも、どうせ記憶なら·····
「ルーロ殿も手伝ってくれないでござるか?」
カグヤの声が俺の思考を止めた。
「この子の母親が家に閉じ込められているでござる」
「·····あぁ、分かった」
俺が迷っている間にも、カグヤは真っ先に村人たちの救助に行ったのか。
「ルーロ殿?」
「分かってる。俺に任せてくれ」
ファーストを解放して、魔力で自分の体を強化する。
これである程度の熱は耐えられる。そしてそのまま母親を助けた。
「ママっ!」
「どうもありがとうございますっ!」
「いえ、当然の事でござるよ」
俺にも礼をしてから、二人は避難し始めた。
「カグヤはオボロさんたちが心配じゃないのか?」
気づいたらそんな質問をしていた。
だってそうだろう? こんな事になってたら誰よりも家族を心配するはずだ。
「心配でござるよ」
「ならなんで·····」
「でも、目の前で消えそうな命があったら助けずにはいられないでござる」
だってコイツらは記憶の中の人たちだ。
それにカグヤだって·····本当に生きているわけじゃない。
本物のカグヤは俺の帰りを待っている。所詮、星喰の記憶の中にある有象無象の一つに過ぎない。
「お前は例え、助ける必要のない命でもそうやって助けるのか?」
「それは村人たちの事を言っているのでござるか?」
「いや、そういう訳じゃない。例えだ。例え」
すると、カグヤは迷わずに言った。
「それが例え何者であろうと、命でござるよ」
「──ッ!」
「目の前に居て、まだ呼吸をしている。生きている。なら、それは護るべき大切な命にござる」
村人たちを逃がしながら、カグヤは言った。
「それが私でござる」
「そう、か·····」
星喰は俺に言った。
この絶望を乗り越えろと。
俺が俺のまま。あの時、人を護るために俺の力があると宣言した俺のまま乗り越えろと。
なら、迷っている場合じゃないよな。
「悪かった。さぁ村人の救出をさっさとして、オボロさんたちと合流しようぜっ!」
「承知」
例え記憶の中の有象無象に過ぎない存在にしても、目の前で苦しんでいる。泣いているんだ。
それを助けるのが俺なんだ。そう分かっていれば、行動するだけだ。
「これで最後だな」
「そうでござるな。父上は大丈夫だろうか?」
誰よりもオボロさんやヤマトさんが心配なのだろう。
「掴まれ、高速で行くぞっ!」
再度抱きかかえて大地を駆けた。
屋敷の中に着いた時、あれほど平和だった影は微塵もない。
「急いで探そう」
「承知したでござるっ!」
屋敷は火が回ってない。どうやら、火を放ったのは村だけのようだ。
だが、屋敷がボロボロになっていた。切り傷があることから、オボロさんとサイケの戦いによるものだろう。
だから、二人を見つけるのは簡単だった。
「これは·····?」
カグヤの声が虚しく響く。
「グハッ」
血反吐を吐き出し、倒れ込むオボロさん。
「父上ぇぇええええっ!!!」
急いで駆けつけると、微かに心臓の音が聞こえる。
まだ間に合うっ!
「カグヤっ! 急いで応急処置を施してくれ。血と魔力が足りないだけだ」
「わ、分かったでござる」
·····そう言えばヤマトさんは?
「あの女を探してるのか? ならそこに転がってるだろ?」
「──ッ! てめぇっ!!」
見るも無残な姿で倒れるヤマトさんの姿。
こちらも辛うじて呼吸はしているが、体中にある無数の傷は消えないだろう。
ここにサクヤが居れば、あるいは変わったかもしれないが、ないものねだりは無駄なだけだ。
俺だけでどうにかしなければならない。だけど、俺には魔法は使えない。
そんな俺でも出来ること。それはたった一つしかない。
「それは、てめぇをここでぶっ飛ばすことだ」
「はっ、威勢のいいガキだ。出来るものならやってみな」
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