妖刀『星喰』との対面
事件解決から数日が経った。
解決の糸口がまさかあんなテンプレみたいな馬鹿な感じだったことは置いときつつ、それでも四日ぐらいかけて情報収集したので大変だった。
しかし、そのかいあってか騎士団にサイケを引渡し、俺らが求めていた妖刀が手に入った。
んで、目の前に鞘に収まった状態で置いてあるのがその妖刀『星喰』である。
「めっちゃ禍々しいな」
「そりゃあ妖刀だからそうでしょう」
一応、鞘に収まっていると呑まれることは無いと言うが、それでも放っている禍々しさは不気味である。
「で、これをどうするの?」
「カグヤ曰く、星喰を引き抜くと本体と対面するらしいんだよね」
「そうでござる。その対面の時に、星喰に喰われれば力に呑まれ、辻斬りと同じようになる」
つまり、ここからは俺次第ということだ。
使いこなせなければ、精霊界への道は閉ざされるし、ついでに言えば俺はカグヤに殺される。
「『星詠』は代々『星喰』を守る番人ゆえ、最後まで見届けさせてもらうでござる」
「あぁ、構いやしない」
そういう事だ。
星喰との対面にあたり、俺たちが今いるのはパングから離れた場所。
俺たちの勝手で街を崩壊させる訳にはいかないからな。
「ルーロ殿、準備は宜しいでござるか?」
「あぁ、いつでもいいぞ」
覚悟ならいつだってしてるしな。
「じゃあそういうことで」
「ん、ちゃんと帰ってきてね」
「待ってるわよ」
「ブ○ーチみたいですね。帰ってきたら是非、話を聞かせてください」
三人は俺が帰ってくることを信じているようだ。
その期待に応えられるように俺も頑張るとしよう。
だが、カグヤだけは瞳に迷いが見えた。
だから、気負わせないために笑顔を向けながら言った。
「ちゃんと帰ってくるから」
「分かってるでござる」
カグヤは星喰の被害者みたいなものだ。故郷を滅ぼされた原因である。
加えて、俺がもし呑まれてしまったら『星詠』としてカグヤが止めなくてはならない。
そんな重荷を背負わせないためにも、しっかりと帰ってこなければ。
「じゃあな。行ってくる」
そして俺は星喰を引き抜いた。
ただひたすらに真っ黒で、何も無い世界。
そこに俺は一人立っていた。
「ここは·····?」
『ここは星喰の中だ。少年』
いつの間にか俺の目の前に、もう一人の俺が立っていた。
「気味が悪いな」
『そう言うなよ。俺の姿はない。だからこそ、俺の世界に訪れた者の姿を借りるしかないのさ』
「そうか。まぁ、そっちの事は知らないが、俺に力を貸してくれないか?」
『何故?』
「精霊界に行きたいんだ」
すると、初めて星喰が反応を示した。もっとも、眉をピクリと動かしただけだが。
『あそこに行って何を得る?』
「端的に言えば力かな」
『ふむ。それは実に素直な回答だ』
そう言うと、星喰は指を鳴らす。
『見たまえ。君のように力を求め、そしてその成れの果ての姿を』
突如として出現した異形の怪物。
「魔王の手足·····?」
『ほぉ、君はこの存在を知っているのか。そうだ。これは魔の地にて蔓延る化け物さ』
再度指を鳴らせば、魔王の手足は居なくなる。
『力におぼれれば、人の身ではなくなる。君にその覚悟はあるのかい?』
「·····やけに親切だな。俺のイメージとは違う」
サイケのあの感じを見る限り、星喰のイメージはもう少し悪って感じがしていたんだが。
『俺はいつだってこの説明をしているさ。それでも尚力を求め、そして溺れたからこそ醜い生き物に変わったんだろう。俺はきっかけを与える存在であり、決して悪ではないよ』
きっかけを与える存在、ね。
『まだ疑問があるかね?』
「いや、もういいよ。それで覚悟だっけ?」
『あぁ、そうさ。君に人の道を外れても尚、力を手に入れる覚悟があるのか?』
そう尋ねる星喰に迷わず俺は言った。
「そんな覚悟はねぇよ」
『·····ほぉ? 力を求めているのに、その覚悟はないと?』
「いや、力を求める覚悟はある。が、人の道を外れるつもりはない」
俺の言葉を聞いて、星喰は少し迷う素振りを見せると、おもむろに口を開いた。
『ならば、どんな力を求める? 力とは強大だ。得れば、どんな者でも変わってしまう。それこそ人の道を外れるだろう。でも少年が考える力は違うようだ』
「当たり前だ。俺が望む力は護る力だ」
俺が継承した『魔力操作の極致』。それを説明された時に師匠が言っていた。
「この力はある人を護りたいと思って得た力だ。その本質を間違えるなよ?」
俺がクナイを大切に思うように、師匠にも大切な人がいたらしい。その人を護るために『魔力操作の極致』を得た。
だから、俺もその意思を引き継ぐ。
「人の道を外れた者が誰かを護れる訳ない。だから、俺にそんな覚悟はない」
『クッ、アハハハハッ面白い。少年、実に面白いぞ。今までの誰よりも真っ直ぐにものを言う』
目尻に涙まで浮かべて、そこまで面白かっただろうか?
「で? 力を貸してくれるのか?」
『·····少年の意思は伝わったよ。だけど、それに伴う覚悟も必要だ。人の道を外れず、少年が少年のまま乗り越えて見せよ』
星喰が指を鳴らす。すると、場面が切り替わる。
ここは·····?
『俺の記憶にある数々の絶望の中で一つだけを経験させる。それを、人の道を外れずに乗り越えよ。それが出来れば、少年は俺を使いこなせるだろうよ』
俺が立っていたのはある村。その中で大きな屋敷の中だった。
遠くから誰かが歩いてくる。
「あれは·····カグヤ?」
『そうだ。この俺を代々見守り続けた「星詠」の一族、その末路を見届けてもらう』
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