うん、なんか·····ごめん
あれからなんとか弁解し、それでもジト目を食らったり、レーデの罵声も浴びたが、ようやく許して貰えた。
「さ、さぁ辻斬りを探しに行こうか」
「·····」
え、俺って許して貰えたよな!?
「·····ん。分かった。これ以上後悔しても意味無い。これから」
「·····そうね。今度は私たちがっ」
「はい。負けてはいられないですしね」
謎に三人が意気投合したのが気になるが、とりあえずいつも通りに戻ってくれて何よりだ。
さて、辻斬りを探すにしても色々と手がかりが欲しいな。
「カグヤは辻斬りの見た目とか分かるか?」
「ふむ。辻斬りの容姿は袴を来ていることと、右手が変色しているでござる」
「変色?」
「そう。妖刀に呑まれて、右腕を妖刀により侵食されているのでござる」
「なるほどな」
となると、こんな街中で歩く時は包帯とかで隠す必要があるのか。
まぁまず、こんな人が集まるところに辻斬りがいる訳──
「··········なぁ·····あれ」
「·····怪しい」
「怪しいわね」
「自分が辻斬りって言っているようなもんですね」
深く被った笠。白い袴。そして何より腰にささった刀。
極めつけには右腕の包帯。
「·····かなり怪しいでござる」
「だよな!?」
あんな隠す気ゼロで歩くか? 普通。
だが、決めつけは良くない。念の為警戒しながら話を聞くか。
「な、なぁ、少しいいか?」
「なんでしょうか?」
「その腰に差した刀とか聞きたいんだけど」
「あぁ、これは妖刀ですよ。握ったら、もうそれは力に呑まれてしまいます。なので僕以外は握れないんですよ」
·····ん? どこか雲行きが怪しくなってきたが·····これっ、いやまだ確定した訳じゃない。
「じ、じゃあ次は包帯を解いてくれないか? 俺、冒険者でさ。今、辻斬りについて調べ回ってんだよね」
「·····なるほど。仕方ないですね。見せましょうか」
素直過ぎて正直ビビるが、包帯を解いていくと──
肘まである痣があった。が、ところどころ滲んでいたり擦ったような痕がある。
「いやぁ、遂に僕──いや我に目をつける輩が来るとはな。幻獣が封印されている右腕を見られたからには、生かしてはおけない」
「ちょっとそういうのいいんで」
「はい!?」
「少し待っててください」
呆然と立ち止まっている少年を置いて、俺たちは集まる。
「ちょ、アレ·····違くね?」
「·····ん。見るに堪えない」
「やばいわね」
「で、でも、もしかしたら辻斬りかもしれませんよ?」
サクヤ·····お前、とっくに彼がどんな状態なのか知ってるくせに。
だが、まぁその通りかもしれない。
「すまなかった。ちょっと聞きたいんだが、名前とか教えて貰える?」
「聞いて驚くなよ? 我は原始の魔王──」
「はい、分かりましたぁ〜」
そしてまた全員で集まる。
「確定だよ。サクヤ、アレは絶対やばいよ」
「そうですね。まさか生で見られるとは思ってませんでした」
いや、俺も師匠から聞いてまさかとは思っていたけど、本当に居たんだな。
「なんの話かは知らんが、魔王で妖刀を持っているのでござろう? 成敗しなくてはならないのではないか?」
「いや、最早そういう次元じゃないんだ」
そんなことしても治らないよ。
だって重症だもん。まだ包帯までだったら救いようがあるけど、二つ名考えてそれが『原始の魔王』だったら、もう無理だよ。
逆に一周まわって尊敬しちゃうよ!?
「貴様らっ! 我を置いてコソコソと馬鹿にしているのか!?」
「いや、尊敬しているんですよ」
「ならば敬語をやめろっ! 少し引いたような感じで話すなっ!」
だって、どう接していいか分からないもん。
別に他人の趣味にどうこう言わないけど、それでも個性が強すぎるよ。
俺はもうポンコツ武士だけでおなかいっぱいなんだよっ!
「──ということで人違いです」
「どういう事だあっ!」
街の人達が集まってきた。
囁き声で騒ぎ出す。
「あの格好、辻斬りっぽいけど·····」
「なんか違うわよね。うん、小物っぽい」
「そうねぇ。もっと必死感を抑えなきゃ」
陰口かと思ったらアドバイスだった。
だけど〝小物っぽい〟は心に来たようだ。胸を抑えて苦しんでいる。
「いつぞやのA級冒険者じゃないか」
「あー、あの時の」
「サイケってんだ。よろしくな」
カグヤを疑っている街の人だ。
この騒ぎで近くに来たのだろう。
「で、これなに? 辻斬りを捕まえたのかい?」
「·····いや、なんていうか」
どう説明しようか迷っていると、サイケが思い出したように言った。
「近所のガキじゃないか。確か名前はシドウだったっけか?」
「(グサッ)」
クリーンヒットらしい。
もう立てないまでに足を震わせていた。本人的に名前バレが一番ダメージが入るようだ。
「ふ、ふんっ、今日の所は引き下がろう」
「うん、なんか·····ごめん」
「ふっ、我は余裕のある男。必死感なんぞ漂わせない。そしてシドウじゃない。原始の魔王──ミレアである」
最後までキャラを貫き通しやがった。
尊敬するわ。
「なんだったんだ?」
「男が一本筋を通したんだ。カッコイイじゃねぇか」
「はぁ·····?」
サイケは分からないようだな。名前バレしてもなお、囁かれながらダメだしを受けてなお、それでもキャラを貫き通す辛さが。
「ま、まぁいいや。それよりも冒険者さんよ。しっかりと辻斬りを捕まえてくれよな」
「分かってるさ。まぁ、アイツが今のところ有力候補だけどね」
「まぁな。腰に妖刀差してたしな」
「·····そうだな」
すると、サイケは何かを思い出したかのように慌て始める。
「これから弟の墓参りなんだ。じゃあな」
「あぁ、よろしく言っといてくれ」
去っていったサイケを眺めながら、思考を巡らせる。
まさか、あの厨二病からの流れで思わぬ収穫が出たことに驚いているが、あの馬鹿はとんでもないヒントをくれたな。
「とりあえず色んな人に聞きまくるか」
そしてこの疑惑を確信に深める。
「今回限りの名探偵ルーロの誕生だな」
俺は不敵な笑みを浮かべた。
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