化け物《モンスター》
「·····そういえば、パーティは出来ているのかしら?」
「··········え?」
何気ないエルサの一言は俺にズビシッと刺さった。
··········パーティだ、と?
「·····必要なんすか?」
「当たり前じゃない。最低でも一人は必要よ?」
「終わったわ·····」
試験会場である訓練場に着いたはいいが、まさか、まさかパーティが必要だなんてっ!
師匠はそんな事、一言もッ!
「貴方ねぇ、これから冒険者試験が始まるのに一人で受けれる訳ないじゃない」
「この会場でまだパーティを組んでない人は·····」
辺りを見渡してみる。
俺と同じぐらいの少年少女たちがワイワイとしている中、一人でいるような奴はパッと見で見つからない。
「··········居ないみたいよ?」
「エルサが組む訳には──」
「出来ないわ」
詰んだくねっ!?
だって、一言も言われてないしぃ!
いや、聞かなかった俺が悪いのか·····
「·····はぁ」
「貴方ねぇ、そんなんじゃあ一位どころか、次世代エースに負けるわよ?」
「ん? エース·····?」
「ほら、あそこに」
その指の先には見慣れた面子が揃っていた──
「··········ギル」
「あら、知っていたのね」
「·····はい、よく知ってます」
ギル、リット、レーデの三人は周りの連中に囲まれていた。
「聖属性のギル、木属性のリット、火属性のレーデは非常に完成されたパーティだわ」
「··········そうみたいっすね」
周りの連中は有名人を人目見ようと集まった野次馬か。
クソッ!
アイツらを、ギルを倒すために今まで頑張ってきたのにッ!!
「はぁ·····」
無意味だった、の──か?
「エルサッ!」
「な、何?」
俺のあまりの勢いにエルサはビクッと震えた。
もしかしたら、まだ冒険者になれるかもしれない。
「あの子は?」
俺が指さしたのは壁に一人、もたれてる女の子。
··········あれ、女の子か?
包帯が全身に巻かれていてよく分からないが、多分女の子だと思う。
「·····あぁ、あの子は『化け物』よ」
「は?」
「生まれつき魔力が高いらしくて、加えて『魔』の属性の適性者」
非常に珍しい属性に『聖』と『魔』がある。
聖属性が神聖視されている理由は、かつて勇者の属性適性が『聖』であったからだ。
対して、魔属性は差別の対象だった。それはかつての魔王の属性適性が『魔』であったからである。
だが──
「ちょっと何処へ行くつもり?」
「俺、このままじゃ失格っすから。それに──」
──あの子の魔力は綺麗だ。
俺は誰よりも『魔力操作』の修行をしたから分かる。
あの子はここにいる誰よりも綺麗な魔力をしている。
綺麗な魔力というのは、より属性の色に近い魔力の事を言う。
例えば、ギルの『聖』の魔力は白が黒ずんだような色。
エルサの『水』の魔力は綺麗な青ではあるが、あの子と比べると数段劣る。
綺麗な漆黒。
他の色が一切ない、純粋な黒は非常に美しい。
それは必死にあの子が、自分の目標のために努力してきた証だ。
「君って一人?」
「·····」
無言だが、微かに、だが確かに頷いた。
「俺も一人なんだ。良かったら、一緒にパーティを組まないか?」
そこで初めて少女はこちらを向いた。
顔までも包帯で覆われており、肌の一切が伺えない。
「私、化け物·····」
「知ってる。化け物レベルで強い人と組めるなら、願ったり叶ったりだ」
「魔属性·····」
「うん、知ってる。それも、分かってて誘ってるんだ」
「──ッ!」
包帯の隙間から見える蒼眼が見開かれている。
驚いているのだろう。
「·····私で良かったら」
「俺、ルーロってんだ。よろしくな」
「··········クナイ」
恐らく名前なのだろう。
おずおずと差し出されたクナイの手を握り、俺らは握手を交わした。
あれ以来、初めて人とパーティを組んだ。
今度は失敗しないよう、クナイを大切にしようと心に決めた。




