VSイッセイ 前編
さて、始めるか。
パッと見忍者軍団の総数が五十人。その中で強い気配がするのがイッセイともう一人──
「あのおっさんが、クナイの·····」
着物の上からでも分かる筋肉。放つ覇気は流石に望月家当主の威厳が伺える。
望月家現当主、シュウラ。
とりあえず、邪魔者共を先に片付けるか。
「<魔力・絶>」
瞬間、俺に迫る忍者の大半が倒れる。
シュウラもイッセイもこの光景には目を見開いた。
「さて、残るはテメェらなんだが──」
シュウラをぶっ飛ばしたいのは山々なんだが、俺はイッセイを倒さなければならない。
『セリカ』
『了解』
フォンスマで短い伝達を。
すると、セリカが現れる。
「悪い、アイツの相手を」
「あぁ、分かってる。ルーロはイッセイをぶっ飛ばしてこい」
前もってスタンバイしていたセリカはシュウラに当てて、俺はイッセイを──
「さて、クナイを返してもらおうか」
「フッ、面白いねぇルーロくんは」
瞬間巻き起こる殺気。だが、その殺気とは裏腹に彼はクナイを抱えて、背を向けた。
「ここではお義父さまの邪魔になる。僕達は外で楽しもう」
すると縮地を使ったのか一瞬で消えたイッセイ。
「じゃあ後は任せたぞ、セリカっ!」
「あぁ!」
そして俺はイッセイの後を追った。
結婚式が行われていたのは、帝都の外れの草木が生い茂る屋敷。
どうやら、望月家が帝都に来た時に使用していた旧望月家のようだ。
なんか思い出でもあるのかは知らないが、そんな旧望月家の近くの野原で俺とイッセイは向かい合っていた。
「拘束術──<牢獄>」
魔力で形成された檻がクナイを閉じ込めた。
「てめぇ、何してんだ!?」
「クナイちゃんに傷ついて欲しくないのさ。勝った方にクナイちゃんが渡る。それでいいね?」
「あぁ」
やはり、クナイを守るという意識はあるようだ。話せば話すほど、関われば関わるほどイッセイという人間が見えなくなるが、今はそんな雑念は邪魔だ。
「──真っ向から勝負して勝つ」
「どうせ、セリカちゃんから僕の術を教えられているんだろ?」
「大体の説明は受けたが、それも知った上でてめぇの選んだこの場所で戦う」
「いいねぇ、僕、君のことが好きになりそうだよ」
イッセイの強み。それは設置型の術である。
前もって術式を張り巡らせておき、戦闘になった際に発動する。
これの利点は、戦闘時の魔力消費が無いこと。故に魔力を温存した上で戦うことが出来る。
だが、その分デメリットもある。それは設置している場所に敵を誘導しなければならないという点。だからこそ、ペテンも駆使して敵を誘導するのが基本。
俺はセリカに説明を受けていたが、あえてイッセイの後についてきた。
「俺はそんなお前も凌駕して、クナイを返してもらう」
「フフっ、やってみなよ」
クナイが心配そうにこちらを見てくる。
「クナイちゃんの声は遮断してるよ。戦いにおいて邪魔だからね」
「どうやらそのようだな」
クナイは必死に何かを訴えているが、何も聞こえてこない。
でも、こちらの声は聞こえているようだ。
とりあえず、ずっと言いたかったことを言うか。
「なぁクナイ。お前からは助けないで、助けて。ルーロじゃあ勝てない。色々なことを言われたが、俺が言うのはただ一つ──」
「絶対、助ける」
「──ッ!」
そんな泣きそうな顔をするな。
俺がみたいのはその顔じゃない。
「だから、待ってろ」
よし、言いたいことは言えた。
後は眼前の敵を全身全霊で叩きのめすだけ。
「お別れの挨拶はもう済んだ?」
「俺とクナイが別れるのは死んだ時ぐらいだ」
そんな冗談を言いつつ、俺はジリジリと間合いを詰める。
「そんな焦るなよ。今終わらせるから──設置術<領域>」
地面に術式が張り巡らされる。
「僕の身体能力を向上させる術だ」
「なら俺も──<一段階・解放>」
お互い、身体能力の勝負。
初手はほぼ同時。
「いいねぇ、鋭いパンチだ」
「てめぇもな」
俺の顔面を狙った拳を避け、イッセイは蹴りを繰り出す。
そんな攻撃を上体を反らし避け、後方転回で間を開ける。
「ハハッ、良いねぇッ!」
「てめぇこそな」
こいつ、ちょこちょこフェイントを入れてくる。人差し指と中指を揃えたあのポーズ。あれが術式を発動させる為のトリガーであることは間違いない。
それを戦闘中に行うことで、必要以上に集中力を使う。
「<地爆>」
「──ッ!」
早速使ってきたな。
地面に仕掛ける爆発型のトラップ。
「<拘束>」
避けた先の地面から鎖がッ!
足に絡みついて動けない。
「このっ!」
「<拘束>」
壊すために手を振りあげればここにもトラップが。右手と両足が使えない。
「ほら、防いでみなっ!」
「グゥっ!」
無慈悲な腹部に向けた拳。それがクリーンヒットし、思わず声を出してしまった。
「ほら、身体能力上げたでしょ? それって俊敏性もそうだけど攻撃性も上げるためなんだよ、ねッ!」
「グフッ」
このままじゃ負ける。
「<二段階・解放>」
膨れ上がる魔力で鎖を引きちぎる。
「次は俺だっ!」
「防御術──<鋼鉄>」
腹筋が鉄のように硬い。一部、体の硬直化。
なら──
「<連撃>」
顔を腹を、足を腕を、至る所に怒涛の連続攻撃を放つ。
所々、しっかりと当たっていたので確かなダメージは与えている。
「強いね、君」
「これからもっと強くなる」
ここで止まらない。俺はさらにその先に行く。
「·····君だったら」
「は?」
「何でもないよ。さぁ、行こうか」
そして戦いは苛烈を極めていく。
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