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化け物と呼ばれた少女


 俺はギルドの医務室で目を覚ました。

 夢中で逃げた俺たちは森でサクヤたちと合流、そこで気を失ってから三日経過している。


「·····クナイ」

「アイツが心配か?」


 隣で同じく目覚めたセリカが俺に尋ねてくる。


「あぁ、最後に見たクナイの顔は泣いてた」



 最後にクナイは泣きながら、俺を助けてくれたんだ。


「イッセイって誰なんだ? 婚約者って言ってたが」

「·····イッセイは忍者の中でトップクラスの実力を持った男だよ」


 だから、クナイは逃げるように言ったのか。


「少し、昔話を話そうか」


 セリカは医務室の天井を仰ぎながら、語り出した。


「クナイは望月家の娘でな。その肩書きからか、昔から同世代の友達が少なかった。だが、幼馴染のイッセイは望月家だろうと関係なく、気さくにクナイと関わっててな。そんなんだから、二人が仲良くなるのに時間はあんま要らなかった」


 俺の知らないクナイをアイツは知ってる。胸が痛むのは何故だろうか。


「だが、クナイの運命が最悪の方向に行ったんだ。その最たる原因は魔属性の適性があったこと」

「確か、それで化け物って·····」

「そうだ。だが、他にも理由がある」

 

 他にもだと?


「望月家はクナイを追放しようとしていたんだ」

「──ッ!」


 クナイは俺と同じで拒絶されたのか。しかも、血の繋がった家族に。


「それで?」

「それを止めようとしたのがイッセイだよ」

「·····」


 アイツがクナイの追放を止めようとしたのか。だが、今のアイツはそんな欠片もない。ただのクズにしか見えない。


「昔は好青年だったんだ。イッセイは·····」

「そうなのか」

「あぁ、続きを話すぞ。追放をさせない為に望月家に反発したイッセイは忍者から追われるようになった。そんなイッセイを捕まえるため、望月家はクナイを使ったんだ」


 胸糞悪い話だ。それが忍者ってのなら、俺は一生分かり合えないと思う。


「ルーロの気持ちも分かるが、落ち着け」

「あぁ、分かってる」

「──それで、クナイは望月家の命令によりイッセイを探し出し、そして近づいた」


 セリカの顔が歪む。


「クナイには魔属性の魔法を使って拘束すれば、イッセイの命だけは助けてやると言っていた。だから、クナイは拘束魔法を放ったんだ。だが──」


 セリカの拳が震える。


「望月家はクナイの魔力を暴走するようにあるものを使った。それが『魔王因子』」

「魔王、因子。確か術式であったアレか?」

「そうだ。恐怖から形成されるもんでな、クナイの恐怖心を煽って、魔王因子を生み出し、そして見事に拘束魔法を暴発させイッセイに致命傷を与えた」


 それがクナイをあそこまでにさせる理由。


 自分がイッセイを死の直前にまで追いやったから、その責任感で。


「だが、一つだけ不可思議な点がある」

「?」

「イッセイは()()()()()()()

「──っ!?」


 死んでいる。

 だって──


「ルーロ、おかしいと思わないのか? イッセイは望月家に反発して追われる身になったんだ。それが、追放されても望月家の娘であるクナイの結婚を許している」

「アイツは一体、何者なんだ?」

「分からない。だが、確かに言えるのは、アレはもう昔のイッセイじゃないということ」


 これは非常に有難い情報だ。


「でもなんで、こんなことを知ってんだ?」

「··········」


 難しい表情をし、セリカは黙る。


「オレはな。龍を討伐したあと、ここに帰ってきている。その時、イッセイの討伐部隊に急遽編成されたんだ」

「それで·····」

「あぁ、許されねぇって事は分かってる。だけどオレは力になりてぇ。クナイはもう自由になってもいいんだって言ってやりてぇんだ」


 アイツがイッセイにしろイッセイでないにしろ。クナイが負うべき責任ではない。


「なら、行かねぇとな」

「あぁ」


 運がいいのか、丁度、医務室の扉が開いた。


「良かった。目覚めたのですね」

「サクヤか」

「これを見てください。結婚式の招待状が」


 急いで中を確認すると、確かに結婚式の招待状が同封されていた。


「レーデは?」

「ここにいるわよ」

「あぁ、少し頼みたいことが──」

「クナイを助けに行くんでしょ」

「聞いてたのか?」

「いや、アンタのことは大体分かるのよ」


 嬉しいことを言ってくれるな。


「じゃあ、炎で煙を作り出し、煙幕玉を急いで作ってくれないか?」

「分かったわ。十個程度ならすぐ作れる」

「頼んだ」


 相手方を撹乱させる道具はこれで完成する。


「サクヤ」

「なんでしょう」

「俺の傷を戦えるまでに治してくれないか?」

「任せてください」


 着々と進んでいく準備にセリカは目を点にして固まっていた。


「お前らよくそんなに動けるな」

「当たり前でしょ」

「そうですね。当たり前です」

「「クナイを助けたいから」」


 二人の理由を聞いて、セリカは笑う。


「なんだよ。友達できてんじゃねぇか」

「あぁ、だから安心していい。クナイの帰る場所はここなのだと教えてきてやる」


 クナイ、お前から見たいのは泣き顔じゃなくて、笑顔なんだ。

 だから──


「連れて帰る。待ってろよ、クナイっ!」

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