王城、国王との対面3
「そう言えば、パーティーも終わりそうな雰囲気なのに主役が現れてないな」
「そうですね。お姉様、どうかなされたのでしょうか?」
クナイとの食事が終わり、二人と合流したのだが、未だに登場しない主役に疑問符を浮かべる。
「·····やっぱ、お前も祝われたいか?」
「えっ!? いや、確かに、私も一度ぐらいは、と思っていましたが、今はもう思ってませんよ」
どことなく寂しさを思わせるサクヤに、率直にぶつけてみたが、強がっているのか、本当にそうなのか、平気な素振りが返ってきた。
「それに──」
「ルーロ様方がいますから」
「··········そうか」
そう言う彼女の顔は、ほんの少しだけ強がっているように見えた。その言葉は本当のことだろうが、裏で抱えている〝家族愛〟に餓えているのだろう。
そんな俺たちを他所に、他の人達もなかなか現れない主役に痺れを切らしていた。
「サラテ様はまだなのだろうか?」
「ハーラン様も姿をお見せしてないわ」
そんな中、急に部屋が暗転する。
「驚かせてしまって、すまない」
ハーランの声がアナウンスで聞こえてきた。
「今日は皆に〝ある事〟をお伝えしたくて、この場に呼ばせてもらった。我が娘、サラテの生誕パーティー。だが、そのパーティーに参加すべき娘が居てね」
更に辺りが騒然となる。
「我が娘──サクヤの事だ」
スポットライトがサクヤを照らす。
本人は突然のことで、慌てていた。
「え? えっ!?」
「確かにサラテ様に似ているが」
「あの子は··········」
周りも慌てる中、ハーランが登場する。
「我々、王族はある秘密を抱えていてね。そのせいで我が娘を紹介することが叶わなかった。だが、あえてこの場で紹介したい。サクヤのことを──」
ハーランは一歩、また一歩とサクヤに近づいてくる。
「サクヤは昔から、聞き分けのいい良い子でね。姉のサラテと違って、大人しい子だったよ」
ハーランの言葉に〝愛〟が籠る。
「妻が亡くなってからも、私が王国を守るんだってね。そんな我が子が自慢であり、愛おしい。だが、ついこの間まで、彼女は命を狙われていた。それを助けてくれたのが、彼らだよ」
そして、俺らにもスポットライトが当てられた。
え? 超眩しいんだけど!?
「今回集まって貰ったのは、サラテの生誕と同時にサクヤの誕生日パーティーを。それと、この日を無事に迎えさせてくれた彼らを紹介したかった」
そして、ハーランは俺らの前に立つ。
「さぁ、皆。盛大に祝ってくれ、サラテとサクヤの生誕を。そして、彼ら『歩む者』をっ!」
瞬間、拍手が巻き起こる。
辺りを見渡すと、口々に聞こえてくる祝いの言葉。
「おめでとう」
「おめでとうさん」
「おめでとうー」
「おめでと」
「おめでとうございます」
「おめでとうっ!」
「おめでとうよ」
「おめー」
「おめでとう」
国王にありがとう。
《破滅》にさようなら。
そして、双子の姉妹達に──
「おめでとう」
「じゃ、ねぇよっ!」
あっぶねぇ。つい乗せられる所だった。いや、もう言い切っちまった。
「アハハッ、ノリがいいじゃないか。ルーロくん」
「ハーラン、様。これはさすがにお巫山戯があると思いますよ!?」
呼び捨てにするところだったし、思わず反論しちまった。
大丈夫かな?
「とりあえず、パーティーのラストスパート。盛大に楽しんでくれたまえ」
ハーランの締めくくりで、謎の演説は幕を閉じ、その流れでパーティーも終わりを告げた。
お客さんが全員帰ったところで、俺は声を荒らげた。
「つか、何させんだ!?」
「いいじゃないか。なかなか面白いものになったよ」
「お父様っ!」
「サクヤも遂に感情を──っ!」
ダメだ、このオッサン早く何とかしないと。
「ていうか、エルサもどうしてなんだよ!」
「ハーラン様から、サプライズでサクヤ様を祝いたいって言われて、ついでにルーロも紹介してもらおうかと」
ついでって、ついでってなんだよ。
「でも、これで貴方には人脈が出来た」
「え?」
「貴方はこれから冒険者として色々な所に赴くだろうけど、その行く先々のお偉い様に顔を覚えられたって事よ」
「つまり?」
「冒険がしやすくなったってこと」
それは嬉しいけど。そんなんで、いちいち最終回みたいなノリをさせるのはやめて欲しい。
「でも──」
「まぁ、いいじゃねぇか。それに、ハーラン様はまだお前に用があるらしいんだと」
クリクソンがそう言うと、ハーランは一歩まえに来て、そして──
頭を下げた。
「「ハーラン様っ!?」」
「どうか、娘を頼む」
驚く二人を置いといて、ハーランは頭を下げ続ける。
「サクヤは聞き分けのいい子でね。〝生贄〟であると知らされた瞬間から、望んで地下に行った。だが、私が言うのもなんだが、反対して欲しかったのだよ」
そこで初めて顔を上げたハーランは、寂しそうな、でも嬉しそうな顔を浮かべていた。
「そんなサクヤが、私にルーロ様と冒険者になるって言って、出ていった。私が王城にいたらマズイからって·····」
ハーランは俺の両肩に手を着く。
「頼む。君にしか言えない。サクヤを、妻の忘れ形見をどうか、頼むっ!」
この人は俺を困らせたいんだか、頼っているのだか。
「だが、その約束は出来ない」
「──っ!」
ハーランの顔が破顔する。エルサも、クリクソンも思わず身を乗り出しているが、まぁ、話を最後まで聞け。
「もうめんどくさいから、タメ口で話すけど。アンタは国王であり、サクヤの父親だ。俺は残念ながら出会いがなく、未だに彼女もいないし、出来る予定もありゃしない」
突然言われた言葉にハーラン様が疑問符を浮かべる。
「だが、父親なら、信じなきゃいけねぇことは知っている」
「──っ!」
「人を頼るのも分かる。もちろん、俺も出来る限りのフォローはするつもりだ。でも、最終的に今後の人生を、己だけの物語を歩むのは何時だってサクヤだ」
俺が何故、自分を主人公と見立てているか。
何故、クナイをメインヒロインと呼んでいるか。
それは師匠が言っていたんだ。
『お前の人生は、お前が作者である、唯一無二の物語だ』
だから、サクヤも自分の道を自分で歩んで欲しい。それが『歩む者』だ。
「なら、信じるしかないよな。サクヤを。それにサクヤは俺に頼られるほど弱い女じゃねぇよ」
あの時、恐怖に打ち勝ち、生を願った。
自ら進んで〝生贄〟を選んだ。
国の為に自己犠牲が出来る強い女性だ。
「だから、アンタも頼るんじゃない。アンタ自身の目で、アンタ自身の言葉でサクヤを見送ってやれ。それが、親ってもんじゃねぇのか? ··········知らんけど」
最後の言葉に誰しもが項垂れたが、ハーランは俺の元から、サクヤの方へ向かった。
「済まない。彼に言われるまで気づけなかった馬鹿な親だ」
「いいえ、私にとっては立派なお父様です」
サクヤの元にサラテが向かう。
「ごめんね、貴方をずっと一人にしてしまって··········」
「大丈夫ですよ。お姉様がずっと辛そうにしていたのを私は知っています」
俺は遠目から、それを伺っていた。
無意識に田舎に置いてきた家族を思い出す。今度にでも帰ろうか。
「俺らは離れるか」
「ん」
「そうね」
今夜は月が綺麗だ。·····いや、変な意味はなく。普通に綺麗だ。
こんな月光に照らされて、あの家族は幸せそうに輝いていた。
最終回のくだりは怒られたら直します。
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