Side Story 動き出す影
一方で、暗闇に包まれた一室で、やけに陽気な声が聞こえてくる。
「はーい、では、不定期開催っ! 円卓会議を始めまーす。いぇーい、ドンドンパフパフっ」
うざったいノリでスタートした長身で細身の男──ライナは、この場で一人、ういていた。
「うざい」
「·····ど、同感です」
キリッとした勝気な女性であるオラクル、オドオドとしたビビり症な女の子がミランの鋭い言葉に、ライナは心のダメージを受けた。
「酷いよ、僕はこんなにも真剣なのに·····」
「真剣だったら、早く、要件を済ませてくれよ」
「んもうっ、せっかちなんだからぁっ!」
「うぜぇ」
コホンっと気を取り直し、ライナは言った。
「同胞になれたかもしれない〝器〟が倒された」
「なに!?」
オラクルだけではなく、ミランも驚いた様子だ。それほどまでに、今回、ライナが言った事実は予想だにしない事態なのである。
「ナラミくんとアクツくんは覚えているかい?」
「あの、イケメンな男の子ですか?」
「そうっ! そんなイケメンくんたちが必死に生み出した〝器〟が倒されちゃったってわけ」
ライナの〝生み出した〟という言葉にオラクルが過剰に反応する。
「もしかして、魔王因子術式で生み出したのかっ!?」
「そうだよ?」
「ばっかじゃねぇの!?」
オラクルは激しく怒った。
「力は無限じゃねぇって分かんねぇのかな。有限だし、貯めるのも精一杯なのによぉ!」
「気持ちは分かるけど、落ち着きなよ」
ライナのなだめも、オラクルには通用せず、続けざまに怒りを吐露する。
「魔王因子術式って言うのは、恐怖から生まれた〝魔王因子〟を使うって、知ってんだろ!? しかも、それで産まれた〝器〟が倒されてんじゃ、無駄になってるだろーがっ!」
「はいはい、説明ご苦労さま。いちいち、説明しなくても皆知ってるから」
「知ってたら、魔王因子術式を酷使しねぇだろっ!」
キリがないようなので、ライナはミランを頼った。
「よろしくしていい?」
「分かりました。《混乱》」
「·····あれ? なんで怒ってんだ?」
ようやく息をつけた二人は、本題に戻した。
「んで、〝《破滅》の器〟が倒された原因を探りたいんだけど──」
「それは、アイツじゃないのですか?」
アイツというワードにまたもやオラクルが反応しそうなので、ライナが口を抑え込む。
「もうこれ以上話を脱線させないの」
「んー、んーっ!」
「はぁ──《眠れ》」
瞬間、オラクルは眠りについた。
「オラクルさんを落ち着けるのに魔王因子術式を使ってんじゃ、意味ないのよ。とりあえず、ミランちゃん、話を続けるけど、確かにアイツって考えるのが妥当なんだよね」
二人が考えているのは、ある男である。
「魔王様が倒されてはや千年。僕たちが目覚めたのが百年前、力を奪われたのが五年前かな? 全く、忌々しい男だよね。アイツって」
ライナは一見、へらへらしているが、その裏では激しい怒りをあらわにしていた。
それはミランも感じ取ったようで、ビクビクしてる。
「あっ、ごめんね。怒りが抑えられなくて」
「はい、私も分かりますから」
ミランも怒りが魔力に現れて、荒々しく一室を埋めつくしている。
「一番怒ると怖いのは、ミランちゃんだよねぇ」
「そんな事ないこともないですよ?」
そして笑みを浮かべるが、やはり怖い。
やっぱり、見た目で判断することはいけないらしい。
「そんなアイツは何処にいるのですか?」
「それが、分からないのなんの。何処に隠れているのか、しっぽも出さないんだから、大変なんだよねぇ」
「·····そうですか。(チッ」
「今、聞きたくない音が最後出てたよっ!」
オラクルのツッコミをスルーしつつ、ミランは今後の予定を聞く。
「じゃあ、どうするつもりですか?」
「んー、アイツの件は僕に任せてよ。ミランちゃんは好きにしてていいよ」
「仮想魔界しか顕現出来ないですけど、出来るんですか?」
「うん、任しといてよ。僕も五年間、何もやってこなかったわけじゃないんだ」
そして円卓会議が終わった。
オラクルはそのまま置き去りにして、ミランは自慢の翼を生やして飛んでいく。
それを眺めながら、ライナは一人呟いた。
「久しぶりの僕の本気。《逃避》の名にかけて、アイツは──エリドは絶対殺すよ。僕たちの力を返してもらおうかな?」
不敵に笑ったライナの顔は、轟く雷鳴の光によって遮られたのだった。
これで物語は一段落ですね。
これからも不定期なのは変わりありませんが、よろしくお願いいたします。
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